マンション管理に関する法律トラブル相談室その他


行方が知れない元理事長から横領金を回収するには

理事長をしています。五年前に当時の理事長が管理組合の預金を横領するという事件がありました。その理事長は刑事告訴により懲役刑にて服役したのち、最近になって仮出所をしたもようですが、既にマンションには居住してなく、住所は把握できていません。行方が知れない元理事長から、いまだ返金がなされていない横領金を回収していくにはどのような手続きが取れますか。

 そもそも他人のお金を横領した場合には、これを返還しなければならないという債務が発生します。この横領金を回収するためには、民事訴訟を提起し、確定判決を得ておけば、管理組合は、元理事長の財産に強制執行することができます。仮に元理事長が自己破産を申し立て、免責決定を得ても、破産法第二五三条一項二号に規定する「悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権」に該当し、責任を免れることができません。
 ところで、民事訴訟により元理事長を訴えるには、現住所を確認する必要があります。裁判所から発送する訴状の送達を行うためです。お問い合わせのケースにおいて元理事長の現住所を確認するためには、元理事長の住民票を取得すればよいでしょう。住民票の取得は本人による申請のほか、本人から委任された者あるいは本人との利害関係(自己の権利の行使等)にある者が取得することができますが、管理組合は本人の利害関係人にあたるということになります。このとき、元理事長が住民票に記載の住所に居住していない場合には、裁判所からの訴状送達はなし得ませんが、その場合には公示送達(※)の手続きにより訴訟を行うことができます。
※公示送達とは=相手方の住所・居所が分からない場合や、相手方が海外に住んでいてその文書の交付の証明が取れないときなどに、法的に送達したものとする手続きのこと(民訴法第一一〇条)。この場合、相手方が不明の場合は申立者の住所地の、相手方の所在が不明の場合は相手方の最後の住所地の簡易裁判所が申立先になる(民法第九八条四項)。公示送達の文書は、裁判所に一定期間掲示され、かつ、その掲示があったことを官報に少なくとも一回掲載することで送達されたものとみなされる。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2009年2月掲載

お気軽にお問い合わせください。

マンション管理、ビル・施設管理、
修繕改修工事や設備工事、ビルメンテナンスのお悩みごとなど。

ご相談・お問い合わせ

TOP