マンション管理に関する法律トラブル相談室その他


債権者が亡くなった場合債務の返済相手は誰になるのか

理事長です。五年前に大規模修繕工事を行いましたが、修繕積立金が不足したため、当時の理事長個人から融資を受けて工事を行い、その後、毎月返済を行ってきましたが、このたび、当時の理事長がお亡くなりになりました。亡くなられた理事長の奥様より、ご主人の財産は奥様が相続したため、今後の返済については奥様の個人口座へ振り込んでいただきたいとの申し入れがありましたが、返済方法としては問題ないでしょうか。

 管理組合の理事長への債務の返済については、亡くなられた理事長の相続人に対して返済する必要があり、一般的には、全相続人が相続分に応じた分割債権として相続し、これを各相続人へ返済することになります。
 本問では、これを被相続人の妻が相続したとの口頭の申出を受けたということですが、どのような方法で確認するのかが問題です。
 マンションの専有部分の相続であれば、登記簿謄本で確認できますが、その他の債権債務については別の確認方法が必要です。
 相続の確認方法としては、相続人全員の署名と印鑑(通常は実印)のある遺産分割協議書を提出してもらえばよいのですが、そうすると、被相続人の遺産全てを開示しなければならず、通常は、相続人に拒否されると思います。
 そこで、相続人を証する書面(戸籍謄本など)を提示してもらい(提出までは要しない)、その相続人の全員による、相続人の妻がこの貸金債権を相続したことを承諾する書面を提出してもらうことで確認するのがよく、一人の相続人だけの書面や口頭での申出だけでは不十分であると考えられ、本問では、亡くなられた主人の妻の口頭の申出だけでは、不十分と考えます。
 妻の話を鵜呑みにして、妻の個人口座に振り込んで返済した後に、他の相続人がこれを了解していなかったことが判明すれば、他の相続人から請求を受けるとこれを拒否できない場合もありますので、注意しましょう。
 相続人全員の承諾書が提出されず、貸金債権の相続人が確認できない場合には、債権者不確知を原因として供託する方法もあります。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2009年1月掲載

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