マンション管理に関する法律トラブル相談室その他


不要になった積立金を各区分所有者に返還できるか

理事長をしています。テレビ電波のデジタル化(地デジ化)が完了し、当マンションが周辺住宅へテレビアナログ電波を供給するために保有していた電波障害対策施設が不要となりました。そこで、当該施設の維持管理費用としてこれまで各区分所有者より徴収していた積立金を、組合員へ返還することを検討しています。返還することに何か問題はありますか。

 管理組合に積み立てられている維持管理費用を各区分所有者に返還することは、区分所有者全員が共有する管理組合の財産の処分に当たります。区分所有法では財産の処分について特段の定めがないため、民法の規定に基づいて区分所有者全員の合意が必要です(民法第二五一条)。
民法第二五一条(共有物の変更)
 各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。
 なお、国土交通省が作成したマンション標準管理規約では、「組合員は、納付した管理費等及び使用料について、その返還請求又は分割請求をすることができない」と定めています(標準管理規約第六〇条五項)。マンションでは、快適な住環境を確保し、資産価値の維持・向上を目的として管理費や修繕積立金等を徴収しており、この目的はマンションが存続する限りにおいて永続的なものだからです。この趣旨に従うと、本問のケースでは、積み立てられた維持管理費用は、管理費や修繕積立金等の他の費目に移して、将来の維持管理や修繕に備えることが望ましいといえるでしょう。 

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2012年8月掲載

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