マンション管理に関する法律トラブル相談室その他


事業主との広告塔の無償貸与契約は永続的か

理事長をしています。マンションの屋上にある広告塔を分譲会社が無償で使用しています。同社が広告塔を無償使用することは、分譲時の売買契約書や重要事項説明書に記載され、管理規約にも記されています。 このまま永続的に広告塔を分譲会社に無償貸与しなければいけないのでしょうか。

 マンションを新築する際、分譲会社の社名やロゴなどの広告塔を設置する事例があることはよく見受けられます。このような場合、多くの分譲会社は、分譲時の売買契約書や重要事項説明書、管理規約に記載の容認事項などに、分譲会社による広告塔を設置するために、共用部分の無償使用を承認する旨を記載し、マンション購入者の承諾を得ていることが一般的です。
 本問では、広告塔を設置した共用部分の無償による専用使用(民法第五九三条 使用貸借に該当する)が永久に継続できる権利か否かが争点となります。
 過去の判例では、次のような判断がされています。
(1)たとえ分譲時に、売買契約書や重要事項説明書、または管理規約などで事業主に対する広告塔の無償貸与(使用貸借契約の締結)を約束していたとしても、これは永続的に続くものではない。
(2)一定期間経過後は、広告塔の使用を終了するか、使用料を支払う賃貸借契約に変更するかの対応が必要である。
 その理由は、共用部分に対する区分所有者の経済的負担と分譲会社の経済的利益とに不公平があるとすれば、社会通念上において相当ではないと思われるからです。
 なぜなら、分譲会社が共用部分を無償使用することによる経済利益を上げ続ける一方で、区分所有者が生活上の利便性の向上などもないのに、分譲会社に対して無償使用させ続ける法的利益を認めることは、健全な社会通念を逸脱しているといえるからです。
 このように、分譲会社が共用部分である屋上を無償使用して広告塔を建てているマンションがある場合には、いつまでもマンション購入者の経済的負担に甘んじるのではなく、相応の経済的負担を負う必要がありますし、分譲時においては、無償使用の期限など(例えば、無償期間を三年間とする、全戸の分譲が終了した場合)を明確に規定し、将来の無用なトラブルを避ける必要があります。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2011年12月掲載

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