管理組合の理事長(管理者)をしており、管理組合の運営上、区分所有者や賃借人のさまざまな情報を保管しています。このたび、一組合員(区分所有者)より組合員・居住者名簿を開示するように求められましたが、個人情報保護法の観点からも、どのような情報なら開示できるのかを教えてください。
区分所有法では管理規約や総会議事録の利害関係人への閲覧に関する規定がありますが、組合員・居住者名簿の閲覧に関する規定はありませんので、組合員・居住者名簿については法令上の開示義務はありません。
しかし、管理規約に規定があれば、組合員の氏名及び住所(メールアドレス、電話番号等は含まない)については開示しても良いでしょう。
ただし、個人情報保護法(以下、法という)では、管理組合も適用対象事業者に該当しますので、本人の同意がある場合を除いて、上記以外の個人情報に当たる組合員の情報や居住者名簿の内容の開示は、開示を求める理由にもよりますが、極めて限定的に対応することが求められます。
ただし、法は、「あらかじめ本人の同意を得ない、個人データを第三者に提供してはならない」ことの除外例を規定し、必ずしも開示義務はありませんが、次の4項目が管理組合に関する除外例に該当すると考えられます。
①法令に基づく場合(警察からの照会等)
②本人の同意を得ることが困難なときに人の生命、身体や財産の保護のために必要な場合(災害発生時の安否確認等)
③本人の同意を得ることにより支障を及ぼす恐れがあるときの公衆衛生の向上などの必要がある場合(感染症の予防等)
④守秘義務を負う委託先に提供する場合(管理会社等委託先に提供)
しかし、その場合でも開示することの最終判断は管理者であり、一定の責任が伴いますので、開示請求者に対して事実関係を確認するなどの慎重な対応が必要と考えます。
編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士
2022年8月掲載マンション管理、ビル・施設管理、
修繕改修工事や設備工事、ビルメンテナンスのお悩みごとなど。