マンション管理に関する法律トラブル相談室修繕工事

大規模修繕工事の費用負担は

マンションの大規模修繕を初めて行うことになりました。必要経費の負担割合はどのように決めるべきでしょうか。

 「屋上の防水修理は最上階の人が行う。」「エレベーターの修理は二階より上の人が行う。」「駐車場の外灯の取替やアスファルト舗装は駐車場契約者が行う。」など、受益者による共用部分修繕の考え方は(一見合理的に見えますが)、マンションの共用部分が区分所有者全員の財産であるという大前提と相反する場合があります。
 管理費や修繕費の負担方法については、一般に管理規約の中で取り決めがあります。多くの規約では、専有部分の面積に応じて負担することを定めていますが、各戸均等といった定めや、専有部分の用途によって差をつけるといった規定もみられます。
 管理規約に定めがなければ、建物修繕の費用負担割合は、区分所有法の定めにより共用部分の持分割合(規約で持分割合について特別の定めがない場合は、専有部分の登記面積の割合)となります。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

1991年10月掲載

外壁に穴を空ける工事について

管理規約で外壁が共用部分に該当し、改造は禁止されております。一部の居住者から、換気装置が不良でどうしても新たに換気用の穴を空けたいとの申し出がありました。管理組合としてはいかに対処すべきでしょうか。

 区分所有法に、「区分所有者は、建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない」(第六条)とあります。
 昭和五三年二月二七日、東京高裁判決では、「外壁の開口部(直径一〇〜一五㎝の円筒形)を設置すれば壁面強度が弱くなり、ひいては建物全体の安全性を弱める恐れがある」とし、換気用の穴を空けることは共同の利益に反することとしました。
 しかし、マンション内にある換気装置が適切なものでなく、どうしても居住者のために穴を空けることが必要で、さらに穴を空けても壁面強度に影響を与えないことが調査で明確となれば、「管理組合の同意を得たうえ」で改造してもいいようです。
 「共同の利益」に反するかどうかは、改造の必要性の程度と、これによって他の区分所有者が被る不利益の程度などを比較考慮して判定されるといって差しつかえないでしょう。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

1989年8月掲載

理事長発注の修繕工事が不十分な場合は

管理組合員ですが、理事長が発注した修繕工事(工事費用八〇〇〇万円)に関し、施工業者が仕様を落として施工したり、施工が不十分な点がみられました。理事長に申し入れても十分な対応が得られません。どうしたものでしょう。

 理事長(管理組合法人では理事、法人でない管理組合では管理者のことを言います)は、委任契約として、対外的には管理組合を代表して契約などの行為を行い、対内的にはその業務を執行する地位にあり、これらの行為を行う場合、善良な管理者としての注意義務を負うことになります。通常、本問のような大きな工事を発注する場合は、理事会に諮り、その仕様を定め、事前に見積もりを依頼し、それに基づき契約代金を決定したうえで、本問の工事契約を締結することになるでしょう。また、施工業者が工事の仕様を変更する場合には、必ず事前に発注者の承認を得て、変更に伴う修正の見積書をもとに、工事代金の増減について理事長と協議することが必要であり、理事長は理事会に諮り、契約を変更し、施工が不十分であれば、理事長は当該個所の手直しを求めることになります。
 本問のように仕様を落として施工したり、施工が不十分な場合には、理事長は当該個所の契約どおりの工事の施工を求め、不十分な施工の補修を求めることになります。
 ところが、設問では、理事長が十分な対応をとらないとのことですので、理事長を解任する手続きをとることもできます。それだけでなく、理事長が善良なる管理者としての注意義務を尽くさず、管理組合に損害を与えた場合には、その損害を賠償する必要も生じます。また、理事長が施工業者に対して利益を与える意図がある場合には、他人のために事務を処理するものが、自己や第三者(本問の場合は施工業者)の利益を図り、その任務に背いた行為をなし、財産上の損害を加えたとして、刑事上の背任罪(懲役五年以下または五〇万円以下の罰金)を問われることにもなります。
 いずれにしても、理事長は管理組合の重要な職務を行う権限を有していますので、自覚と責任感をもって、その職務を遂行することが必要でしょう。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

1995年6月掲載

火災後のマンションの復旧について

漏電による火災で、六階建てのマンションのうち、五階部分が焼失しました。誰が、その復旧をするのですか。

 火災、地震、爆発などにより、区分所有建物が滅失する時には、建物の価格の二分の一以下に相当する部分が滅失した場合と、二分の一をこえる部分が滅失した場合とに分けられます。前者を小規模滅失、後者を大規模滅失と呼びます。
 さて問いのケースですが、この場合は小規模滅失にあたり、滅失した部分を復旧することになります。復旧にあたって、専有部分は、それぞれの所有者が自己の責任において為すべきものです。その他の共用部分の復旧にあたっては、集会の普通決議での決定が必要になります。この決議により、原則として、共用部分の持分の割合に応じて費用を分担し、区分所有者全員つまり、通常は管理組合で復旧を行うことになります。この復旧の決議がなされるまでは、各自で、滅失した共用部分を復旧することができ、その復旧を行った区分所有者は、他の区分所有者に対し、復旧に要した費用を請求することも可能です。一方、大規模滅失の場合にはいかなる対応をとるかが問題です。滅失部分の復旧をする場合には、小規模滅失と同様に集会の決定が必要ですが、このときに区分所有者及び議決権の各四分の三以上の賛成が必要となります。また、復旧するよりも、建物全体の建替えをという場合には、五分の四以上の集会の決議が必要となります。また、大規模滅失の復旧となると、費用が莫大になり、その負担に耐えられない者が出てくるでしょう。そこで、決議に賛成しなかった区分所有者(反対、保留した者および欠席者またはこれらの承継人)は、決議に賛成した者に対して、自己の所有するマンション(建物およびその敷地に関する権利)を時価で買い取るよう請求することができます。また、建替えの場合は、その不参加者に対して建物およびその敷地を時価で売り渡すように請求することになります。このように、決議に賛成した者をはっきりさせる必要があるため、集会の議事録には、各区分所有者の賛否をも記載しなければなりません。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

1993年9月掲載

泥棒に割られたガラスの修繕は

専用庭に面するサッシのガラスが割られ、泥棒が入りました。この場合のガラスの修理費用は、個人負担でしょうか?管理組合負担でしょうか?

 まず、ガラスの修理費の負担義務ですが、本来は割った人、すなわち泥棒が負担しなくてはいけません。しかし、泥棒がすぐに捕まらない可能性もありますし、捕まったとしても直ちに費用を負担できないかもしれません。
 よって、実際に修理費を負担するのは、その住戸の所有者と管理組合では、どちらが相当かということになります。
 そこで、サッシのガラスが専有部分か共用部分かということを考えないといけませんが、通常は、専有部分で利用制限をすべき場合、例えば外観の保全を考慮して、窓ガラスや窓枠、玄関扉、雨戸などは規約で共用部分としているのが一般的です。
 ちなみに標準管理規約によると、「窓枠及び窓ガラスは専有部分に含まれないものとする(共用部分である)。」と規定しており、通常共用部分と考えられます。
 しかしながら、本問の「サッシのガラス」については、共用部分とはいえ、その場所・機能から居住者が排他的、独占的に使用する権利(専用使用権)を有すべき部分ですから、通常の使用に伴うものについては、(規約に特段の定めがない限り)専用使用権を有する者がその責任と負担において管理を行うことになります。
 次に今回の泥棒にガラスを割られたという行為が、通常の使用に伴うものと考えられるかどうかですが、本件の場合、不慮の事故に該当し、通常の使用に伴うものとは考えられませんので、管理組合にて修理費を負担することが相当と考えられます。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2004年4月掲載

配水管取替工事に協力しない居住者がいる場合

理事をやっております。現在、管理組合では配水管の取り替えを計画しておりますが、協力していただけない居住者がおり、その部屋の工事ができない可能性があります。当マンションの配水設備は老朽化しており、一住戸が工事しない場合、配水管の破損などで他住戸へ迷惑をかけてしまうことも考えられますので、ぜひ工事をしたいのですが。

 マンションの配水管は時間とともに劣化し、漏水事故が発生する恐れがあります。しかし管理組合で工事をしようとしても、配水管の枝管は専有部分とされており、管理組合だけで工事を進めるわけにはいきません。また、共用部分のみを新しく取り替えても老朽化した専有部分で漏水してしまうため、全世帯の一斉工事を行う必要があります。そこで標準管理規約第二一条では「専有部分である設備のうち共用部分と構造上一体となった部分の管理を共用部分の管理と一体として行う必要があるときは、管理組合がこれを行うことができる」となっています。また標準管理規約第二三条では、管理を行う者は、管理に必要な範囲で、他の者が管理する専有部分又は専用使用部分への立入り請求ができるとなっており、該当住戸は正当な理由がなければこれを拒否できないこととなっています。
 当該管理組合で標準管理規約を採用していなくて、同様の規定がなくても、考え方は同じでしょう。しかしながら、重要なことは該当住戸に一斉工事の必要性を十分伝え、納得していただくように努めることです。そして、居住者が立入りを拒否される理由や、立入りされることができない事由を聞き取ることに努め、居住者が工事のために在宅できる日や時間にできるだけの配慮をして、居住者の了解の下に立入りさせてもらえるように努めることが必要です。
 それでも、居住者が立入りを認めない理由や事由を説明せず、立入りを拒否され、一戸の配管工事だけができないことが共同の利益に反する場合には、配管工事のために、理事長が、特定の日時にその工事を妨害してはならないという通知をなすなどの手続きをし、現に立入りができないなどの事態の発生した場合には、工事のため入居妨害禁止の仮の裁判(区分所有法第五七条)を求めることも可能でしょう。
 この場合には、裁判費用などが居住者の負担となり、不利益を受ける場合もありますので、そのことを理解していただき、居住者の了解を得るように努めましょう。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2006年11月掲載

隣接地の使用許可について

理事長をしています。マンションの大規模修繕工事を予定しています。工事には足場の架設を必要としますが、敷地内に足場を架けるスペースがありません。隣接地の所有者に対して、工事期間中の足場の架設に伴い隣接地の使用許可を求めることはできるでしょうか。

 本問のように、修繕工事の実施において敷地スペースの問題で足場の架設が不可能である場合には、隣接地の所有者に対し、敷地境界線を越えて隣接地の部分的な使用をさせていただけるよう協力を求めるしかありません。
 民法では「土地の所有者は、境界又はその付近において障壁又は建物を築造し又は修繕するため必要な範囲内で、隣地の使用を請求することができる。ただし、隣人の承諾がなければ、その住家に立ち入ることはできない」と定めがあります(民法第二〇九条第一項)。この定めに基づけば、隣接地の所有者の協力が得られない場合においては、法的な手続きによって隣接地の使用許可を請求していくことも可能です。
 まずは隣接地の所有者に対し、修繕工事の内容と必要性、足場架設において隣接地の協力の必要性などを詳細かつ誠意をもって説明の上、協力要請をしていくことが必要でしょう。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2009年10月掲載

契約内容不履行の工事の完了確認をした役員の責任は

私のマンションでは、三年前に大規模修繕工事を実施しました。契約時とは異なり、約三分の二の規模で業者が修繕を実施し、当時の役員はそれに気付かずに完了確認を行い、業者へ工事代金を支払っていたことが発覚しました。これは当時の役員(監事を含め)の責任だと思うのですが、どの程度責任を追及できるのでしょうか。

 管理組合の役員の就任は、管理組合との間の委任契約になると解されます。民法の委任契約はその六四四条に「委任の本旨に従い、善良なる管理者の注意をもって委任事務を処理する義務を負う」と規定され、受任者(委任を受けた人)は、有償、無償を問わず、この注意義務を有することになり、この注意義務を怠ったときは、損害賠償を受けることもあります。この委任者の注意義務を一般的に「善管注意義務」といって、「受任者の職業・地位・知識などにおいて一般的に要求される平均人の注意義務」を指すといわれています。
 そうすると、管理組合の役員としては、「工事業者が契約内容の通りに適正に工事を実施されていること」、「実施された工事の対価として定められた代金の支払いを行うこと」などについて、平均人が持っている注意を払う義務があるといえます。
 当時の役員が契約内容とは違う工事が実施されていることを見過ごしたということですが、この見過ごしが、工事の外観を見れば誰もが容易に気付くべきものであるとか、実施された工事が契約内容と違うことを知っていて黙っていたということであれば、善管注意義務違反としてその責任が問われます。
 しかし、一般的に要求される知識などを超える専門知識が必要な場合や、監理業者や工事業者が虚偽の報告をなし、専門知識がなければ到底これを見破ることができない場合であれば、責任を追及することは難しいと思われます。
 この点は、有償であろうと、無償であろうと異なることはありません。
 いずれにしても、工事業者や工事監理業者は契約した内容を履行する責任があり、本問のケースは、業者が契約を誠実に履行していないといえますので、これら契約相手の責任を追及することが基本でしょう。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2007年10月掲載

マンションの建替え手続きについて

理事長をしています。マンションの老朽化が進み、マンションの建替えを検討しています。建替えを行うにはどのような手続きが必要ですか。

マンションの老朽化が進んだ場合、修繕工事ではなくマンションの建替えを行う際は、集会(総会)において、区分所有者および議決権の各五分の四以上の決議が必要になります。建替え決議の手続きについては、区分所有法第六二条に規定があり、その概要は次のようなものです。
 まず、集会(総会)の招集手続きについても、通常の招集手続きとは異なり、集会の会日より少なくとも二月前(規約で伸長することは可能)に発し、少なくとも一月前までに、当該招集の際に通知すべき事項について区分所有者に対し説明を行うための説明会を開催することが必要です。
 また、建替え決議を行う場合には、次の事項を確定する必要があります。

  • (1)新たに建築する建物(再建建物)の設計の概要
  • (2)建物の取壊しおよび再建建物の建築に要する費用の概算額
  • (3)前号に規定する費用の分担に関する事項
  • (4)再建建物の区分所有権の帰属に関する事項
 そして、招集の際に通知すべき内容としては、建替え決議の議案の要領のほか、次の事項をも通知しなければなりません。
  • (1)建替えを必要とする理由
  • (2)建物の建替えをしないとした場合における当該建物の効用の維持又は回復(建物が通常有すべき効用の確保を含む)をするのに要する費用の額およびその内訳
  • (3)建物の修繕に関する計画が定められているときは、当該計画の内容
  • (4)建物につき修繕積立金として積み立てられている金額
 建替え決議による建替え制度は、少数の反対者が存在することを前提とする制度ですから、建替え決議が成立した場合は、同法六三条で建替え参加者と不参加者を区分・確定する手続きを規定しています。集会を招集した者が建替えに賛成しなかった区分所有者(決議に参加しなかった区分所有者を含む)に対し、建替えに参加するか否かを催告し、参加しない旨を回答した区分所有者に対し、区分所有権および敷地利用権を時価で売り渡すように請求し、最終的に売却を受けることになります。
 また、マンションの建替えにおいては「権利変換」という手法が用いられ、旧マンションについて存在した権利関係(区分所有権、敷地利用権、抵当権など)は、再建建物(新マンション)に移行されます。
マンションの建替えは、非常に大きな問題です。建替えの検討や協議においては、専門家の意見も参考にし、新旧のマンションにおいて各区分所有者間の公平性が保たれるとともに、できるだけ区分所有者の意見が反映されるよう慎重に議論することが重要です。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2010年12月掲載

大規模修繕工事中に業者が倒産した場合は

理事長をしています。大規模修繕工事を実施中ですが、工事を実施している業者が倒産してしまいました。どのように対応すればいいでしょうか。

 業者が倒産したというのは、手形不渡りを出すなどにより、建築資材が納入できなくなり、実質上、事業の継続が不可能な状態をいいます。このような状態になると、業者に資産があっても、債務が超過しているのが通常ですので、債権者からの事実上の債権取立行為を避けるために、裁判所に破産申請を行い、破産管財人(通常は弁護士)が選任されることになります。
 もしも、大規模修繕工事途中でこのような事態が起こってしまったら、工事の継続が停止してしまい、請負契約そのものが破産管財人に処理されることになります。
 破産管財人は、この請負契約を継続して工事を続行し、工事代金の支払いを受けた方が良いのか、請負契約を解除した方が良いのかを破産会社の財産状態を中心に判断しますが、工事が完成間近であるなどのケースを除いて、建築資材を調達できず、従業員の給料の支払いもできないのが普通ですから、請負契約が解除されるのが一般的です。
 一方、注文者である管理組合から、この請負契約を解除できるかが問題となりますが、判例は、破産法の法的解釈として、注文者からの解除を認めていません。この点、学説ではいろいろな解釈によって解決策を模索していますが、一般的には、請負契約を解除することができないといえます。
 そこで、注文者である管理組合には、この請負契約を継続するかどうかの催告権が認められるので、破産管財人が選任されたら早急に催告するのが良いでしょう。
 契約が解除された場合には、通常は前渡金を支払っていることから、工事出来高と前渡金とを清算しますが、過払金が発生して破産財団に先取特権のある破産債権として届出をしても、全額配当を受けるのは不可能でしょう。
 大規模修繕などの高額な工事代金の請負契約をする場合には、このような危険がありますので、請負業者の財務状態を事前にチェックすることが絶対に必要ですし、連帯保証人をつけることも必要です。
 建築業法二一条では、請負代金の一部前払いがされる場合は、注文主は保証人を立てることを請求できると定めていて、業者は、債務不履行の場合の損害金の支払いだけでなく、工事完成の保証人を立てることになっていますので、万一のためにも、このような注意を払うことが重要です。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2011年6月掲載

大規模修繕工事に仕様変更等が発生した場合は

総会で承認された大規模修繕工事が、着工後の工事の仕様変更や追加工事などのため、総会での承認額を超過する可能性が出てきました。予算の追加については、理事会決議にて承認の上、工事を進めることに問題はないでしょうか。

 大規模修繕工事の実施について、区分所有法では総会決議事項としています。工事の内容が共用部分の形状または効用の著しい変更を伴う場合には区分所有者及び議決権の各四分の三以上の賛成を、その他の場合は各過半数の賛成を必要とします(区分所有法第一七条、第三九条)。
 したがって、本問のように総会決議を経て着手した大規模修繕工事に、仕様変更や追加工事が発生する場合には、原則として予算超過の有無にかかわらず、改めて総会決議を経る必要がありますので、理事会決議に基づいて工事を進めることはできません。
 管理組合での手続きとしては、臨時総会を開催することとなります。手続き上は次期定例総会によることも不可能ではありませんが、総会で決議するまでは工事は行えず、その分建物の劣化につながるおそれがあるため、早急に臨時総会を開催して対応すべきでしょう。
 総会を頻繁に開催することは、理事会役員のみならず組合員の負担も増すこととなります。工事の仕様書や発注金額などはもちろん、仕様変更や追加工事の必要性を明確に示せる資料を整え、より多くの組合員の賛同を得られるように努めることが重要です。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2011年11月掲載

区分所有者による工事の妨害行為

理事長をしています。総会で大規模修繕工事の実施が承認されましたが、理事会役員と工事業者の間に不正な癒着があるとして、役員や工事業者を誹謗中傷する文章を配布するなどの妨害行為を行う住民がいて、そのために工事着工も遅れています。迷惑行為をやめさせるためには、どうすれば良いでしょうか。

 マンションの管理は、区分所有者が協力して実施されるものであり、区分所有者の一人が理事会役員と工事業者の間に不正な癒着がないのに、これを疑うだけでなく、役員や工事業者を誹謗中傷する文章を配布するという行為は、異常な事態であるといえます。
 通常は、区分所有者が抱いている疑惑の払拭や誤解を解くために、管理業者の職員や他の区分所有者等を通じて、疑惑の払拭や誤解の解消に努めることも大切です。
 しかし、区分所有者がどうしても納得されず、工事の着工が遅れることによってさまざまな障害、例えば、雨漏りや外壁タイルの剥離・落下等による居住者等の身体・財産への危険が差し迫った状況にある場合には、工事の妨害行為が区分所有者の共同の利益に反する行為にあたるとして、行為の停止を求めることもできるでしょう。
 それでも区分所有者の行為が止まない場合には、法的に解決することもやむを得ないでしょう。
 その場合、理事会役員と工事業者の間に賄賂の授受等の不法行為がなく、また総会の招集や決議等に何らかの不備がないということであれば、誹謗中傷を受けた役員は名誉を棄損されたことを原因とし、また、施工が遅れた工事業者は業務に妨害を受けたことを原因として損害賠償を求めることも可能です。
 また管理組合は、当該区分所有者に対し迷惑行為の停止を求める場合には、区分所有法第五七条に基づき総会の普通決議を経て、更に、迷惑行為による障害が著しく専有部分の使用禁止等を求める場合には、同法第五八条等に基づき総会の特別決議を経て、訴えを提起することができるでしょう。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2012年3月掲載

給湯器の補修費用を管理組合が負担しても良いか

理事長をしています。地震により、マンションの三分の一の住戸で専有部分の給湯器が破損、故障する被害がでました。理事会では、管理組合の費用から修理費を捻出することを検討していますが、法的な問題がありますか。

 マンションでの補修に要する費用は、共用部分については管理組合が負担し、専有部分については区分所有者が負担するのが原則です。
 本問は、専有部分にある設備機器(給湯器や空調機器など)が地震によって破損、故障したということであり、この修理費用を管理組合が負担するということは、区分所有者の共有財産である管理費用を特定の区分所有者のために費やすことになり、利益の享受において区分所有者間に不公平となりますので、適切な対応とはいえないでしょう。
 しかし、被害を受けた専有部分の設備箇所が給湯器への水道配管や電気配線のような箇所の場合には、建物の効用のために設けられた電気配線・ガス・水道配管等の効用上、建物と不可分の関係にあるような設備を修理する必要があることもあり、区分所有者全体の利益に関わることでもあり、その一方で、これを専有部分の区分所有者に修理を委ねると、適正な修理が行われないで漏水事故などのおそれもあり、建物全体の効用に影響を及ぼすことも考えられ、その修理費用を管理組合が負担することが適正な場合もあります。
 本問では、三分の一の給湯器が破損、故障したということですが、例えば、水道配管や電気配線の設備が破損しているおそれもあり、これらの設備の点検が必要であるとする場合は、その点検費用を管理組合が負担し、給湯器の修理費用を区分所有者が負担するという対応が適正と考えられます。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2013年3月掲載

総会で採択された工事を妨害された場合は

理事長をしています。ある組合員が総会で意見を述べることもしないまま、管理組合の役員を誹謗中傷する文書を配布し、総会で採択された工事を妨害するような行為を行っており困っています。当該組合員に対し、これらの行為の中止要求を行っても全く収まらないため、区分所有法第五七条第一項(共同の利益に反する行為の停止等の請求)に基づき、行為の差し止めを求めて訴訟提起することを検討しています。上記のような行為は、区分所有法第六条第一項(区分所有者の権利義務等)に定める区分所有者の共同の利益に反する行為に当たるのでしょうか?

 今回のケースは、総会で提案された議案について、当該組合員が総会の場で意見を述べることもないまま、採択された議案を執行しているところ、管理組合の役員を誹謗中傷する文書を配布し、また、採択された工事の施工を妨害する行為に及んでいるということから、管理組合役員に対する単なる誹謗中傷という問題だけでなく、むしろ、総会で正当に決議された事柄が円滑に進められない事態となっていることが重大な問題といえます。
 そして、このような事態が続けば、管理組合の役員に就任しようとする者がいなくなり、管理組合の運営が困難となる事態が招来されることも懸念されます。
 従って、管理組合への適正な業務運営を妨害する場合には、区分所有法第六条第一項に定める区分所有者の共同の利益に反する行為に当たると考えられますし、場合によっては、過度な役員への誹謗中傷する行為も同条同項に当たるといえる場合があります。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2014年9月掲載

総会で決議された玄関扉改修工事を拒否する区分所有者がいる場合

管理組合の理事長をしています。各住戸の玄関扉の老朽化が目立ってきたことから、玄関扉にリフォームシートを貼る改修工事を総会に諮ったところ、賛成多数で決議されました。ところが、ある区分所有者が「玄関扉は現状で問題ないため、工事は必要ない。」として工事を拒否し続けています。その住戸だけ玄関扉が改修されないと、建物全体の見栄えも悪くなってしまいます。管理組合としてどのような対応を取ることができるでしょうか。

 総会は、管理組合の構成員である区分所有者の多数決で決定される区分所有者団体の最高の意思決定機関としての役割を担っています。区分所有者は、例え反対意見をもっていたとしても、総会の決議事項に従わなければなりません。
 まずは、工事を拒否している区分所有者と理事会との間で話し合いの機会を持ち、管理組合における総会の役割および今回の工事内容について理解を求めるのが良いでしょう。
 どうしても納得いただけない場合、管理組合は、工事を拒否する行為を区分所有者の共同の利益に反する行為とし、総会の決議をもって、当該区分所有者に対して工事に協力するように請求することができます。(区分所有法第57条)
 それでも、工事に協力いただけない場合、管理組合は、総会の特別決議により、専有部分の使用禁止の請求(区分所有法第58条)についての訴訟を提起することも考えられます。
 とはいえ、同じマンションの区分所有者に対して、このような法的措置に踏み込むことは、相当な時間とコストがかかる上、裁判で決着がついたとしても後味の悪いものになることも考えられますので、慎重に検討すべきでしょう。
 当該住戸の玄関扉は施工せずにいったん工事を完了させた上で理解を求めることや区分所有者の変更時に改めて交換を実施するなどの現実的な対応を取るケースもあるようです。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2016年1月掲載

修繕積立金を専有部分の配管更新工事に使用できるか

マンションの給排水管が老朽化により、水漏れ等の不具合が続いていたため、修繕積立金を取り崩して、共用の給排水管を更新する工事を実施することになりました。工事実施に向けた説明会において、「専有部分である室内床下配管も老朽化しており一緒に更新できないか」との意見が多くあり、理事会で協議した結果、区分所有者が各々で施工するよりもコストメリットも見込まれることから、専有部分の配管更新工事も併せて実施することにしました。なお、既にこれら配管を自己負担で更新されている住戸については、復旧工事代金の減額を行う予定です。ただ、本来は共用部分の修繕等に充当するべき修繕積立金を専有部分の修繕に充当することについて、反対意見もあります。管理組合としてこのようなことを推進しても良いのでしょうか。なお、当マンションの管理規約は標準管理規約に準じています。

 マンション標準管理規約(単棟型)では、第28条(修繕積立金)に「管理組合は、各区分所有者が納入する修繕積立金を積み立てるものとし、積み立てた修繕積立金は、次の各号に掲げる特別の管理に要する経費に充当する場合に限って取り崩すことができる」と規定されています。
  • 1、一定年数の経過ごとに計画的に行う修繕
  • 2、不測の事故その他特別の事由により必要となる修繕
  • 3、敷地及び共用部分等の変更
  • 4、建物の建替え及びマンション敷地売却(以下「建替え等」という。)に係る合意形成に必要となる事項の調査
  • 5、その他敷地及び共用部分等の管理に関し、区分所有者全体の利益のために特別に必要となる管理
 一方、第21条(敷地及び共用部分等の管理)第2項には以下のような条文とコメントがあります。
「専有部分である設備のうち共用部分と構造上一体となった部分の管理を共用部分の管理と一体として行う必要があるときは、管理組合がこれを行うことができる」
第21条コメント
・第2項の対象となる設備としては、配管、配線等がある。
・配管の清掃等に要する費用については、第27条(管理費)第3号の「共用設備の保守維持費」として管理費を充当することが可能であるが、配管の取替え等に要する費用のうち専有部分に係るものについては、各区分所有者が実費に応じて負担すべきものである。
 第28条に規定のとおり、本来、修繕積立金は敷地及び共用部分等の特別の管理に要する場合に限って使用することが原則です。しかし、専有部分である設備であっても、配管・配線等、共用部分である本管・本線と構造上一体となった部分の管理については、管理組合の行う共用部分の管理と一体として行うことがコストメリットも含め効率的であることが見込まれるため、第21条第2項で管理組合がこれを行うことができることとしているのです。
 これらの条文により、今回の専有部分の配管更新工事を、管理組合として総会の承認を以って実施することに問題はないでしょう。ただし、ご案内の通り、既に設備更新を自己負担で実施している住戸に対する配慮が必要であることはいうまでもありません。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2018年5月掲載

マンション建て替えの検討を進めるポイントについて

建物、設備の老朽化が進んでいます。役員のなり手もいない状態であり、今後、マンションの建て替えの検討を行う予定です。検討を進めるポイントについて教えてください。

 2020年6月24日に改正マンション建て替え円滑化法が公布されました。老朽化が進み維持修繕が困難なマンション再生の円滑化のため、「マンション敷地売却事業の対象」と「容積率の緩和特例の適用対象」が拡大されることになっています。
●マンション敷地売却事業の対象の拡大
・外壁の剥落等により危害が生ずるおそれがあるマンション等を適用対象とする(従来は適用対象外)
・従来は全員同意が必要⇒同意要件が5分の4に緩和
●容積率の緩和特例の適用対象の拡大
外壁の剥落等により危害が生ずるおそれがあるマンションやバリアフリー性能が確保されていないマンション等を容積率緩和特例の対象とする(従来は適用対象外)
 また、団地型マンション再生の円滑化のため、一部棟が耐震性不足や外壁の剥落等により危害が生ずるおそれのあるマンションに該当する場合、敷地共有者の5分の4の同意によって敷地分割が可能となります。
 改正マンション建て替え円滑化法は、公布から2年以内に施行される見込です。緩和要件に該当する管理組合においては、検討及び総会決議のタイミングについて、管理会社に相談の上で進められることをお勧めします。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2020年8月掲載

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