マンション管理に関する法律トラブル相談室管理費の滞納問題


滞納管理費等の充当先の指定について

理事長(管理者)をしています。私どもの管理組合では、管理費等(管理費、修繕積立金、駐車場使用料)の滞納者が滞納管理費等の一部を支払った場合、支払期限の古いものから充当する運用としていますが、ある高額滞納者が滞納管理費等の一部を支払った際に「今回の支払いは駐車場使用料の滞納分です」と充当先を指定してきました。管理組合は、これに従わなければならないのでしょうか。なお、当管理組合の管理規約は、標準管理規約に準じています。

 債務者が債権者に対して、債務の一部を支払った場合、その充当方法については、以下の順位で定められることとなります。
  • 第1順位 合意による充当
  • 第2順位 費用・利息への優先充当(民法第489条第1項)
  • 当事者の一方による指定による充当(民法第488条第1~3項)
  • 第4順位 法定充当(民法第488条第4項)
 第1順位の「合意による充当」とは、債務者と債権者との合意により充当方法を定めるものです。民法に明文の規定はありませんが、契約自由の原則によって最優先順位となります。
 第2順位の「費用・利息への優先充当」とは、まず費用(例えば、督促費用・訴訟費用等)、ついで利息(遅延損害金)に充当し、残額を元本に充当する方法です。
 第3順位の「当事者の一方による指定」とは、当事者の一方(第1次に債務者、第2次に債権者)が充当方法を指定するものです。
 第4順位の「法定充当」とは、まず、債務者にとって利益の多いものから充当し、債務者にとっての利益が同一の場合は、支払期限の古いものから充当する方法です。
 本問のケースでは、滞納管理費等の中に督促費用や遅延損害金等が含まれている場合は、まずこれらに充当され、充当後の残額を滞納者の指定により駐車場使用料に充当することとなります。
 まれなケースではありますが、滞納管理費等の充当順位について滞納者と合意できない場合、管理組合は特殊な滞納管理を余儀なくされるため、事務が煩雑になることが予想されます。これを回避する方法としては、管理規約に充当順位を明記すること等により、あらかじめ管理組合と組合員とで充当順位の合意をしておくことが考えられます。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2017年2月掲載(2025年2月更新)

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