マンション管理に関する法律トラブル相談室管理費の滞納問題

遅延損害金の利率は、利息制限法の制約を受けるのか

平成一二年の六月に利息制限法という法律が改正となり、利息の上限が年一四・六%になったと聞きました。しかし、私どものマンションの管理規約においては遅延損害金の利率が年一八%と定められています。規約における利率は、利息制限法の改正により無効となるのでしょうか?

ほぼ全てのマンション管理規約には遅延損害金の定めがあり、一四・六%を超える年利を設定している管理組合も少なくないようです。ここで問題となるのは、管理規約における遅延損害金の規定が利息制限法、またはその他の法律による制約を受けるのか否かということです。
 金銭消費貸借における利息の上限を制限する法律として、利息制限法と出資法があります。利息制限法によると、一四・六%を超える利息を課した場合、超過部分について、無効である(罰則規定無し)と規定されています。一方出資法では、二〇%を上限としており、これに違反した場合、罰則規定が設けられています。
 問題の遅延損害金の性格についていいますと、算出方法を管理費等の○○%としているため遅滞利息であると誤解されている方も多いようですが、債務の履行が遅れたために生じた損害の「賠償金」であって、利息ではありません。そのため、出資法や利息制限法による制約を受けることはありません。
 ですから、遅延損害金の年利については社会通念を超える法外なものでない限り自由に決めても問題はないといえるでしょう。この事例における年利一八%の定めが法外なものとは考えられません。
 以上のことからこのお問い合わせのケースでは、規約における定めは有効であるといえます。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2001年8月掲載

前所有者滞納の管理費の請求について

私は中古マンションを購入したのですが、前の区分所有者が三年間、管理費等を滞納していたらしく、その滞納分を払うように管理組合から請求されました。売買契約を交わす前までは、私の滞納分ではないので払う必要はないのではないかと思いますが。

区分所有法第八条に明記されているとおり、管理組合は新しい所有者(譲受人)に対しても債権を行使することができます。
 したがって、新しい所有者は前の所有者(譲渡人)の滞納分といえども支払わなければなりません。
 また、最終的にこの損害(滞納分)を誰が負担すべきかは、譲受人と譲渡人の当事者間の約定によって定まることであり、管理組合の請求権とは関係ありません。
 仲介に立った宅建業者の説明が十分でなかった場合は、当該業者が責任を負うこともあります。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

1990年5月掲載

管理費を滞納したまま会社が倒産した場合は

マンションを区分所有していたA社が、管理費を滞納したまま倒産しました。破産管財人が選任されましたが、滞納している管理費はどうなるのですか。

 会社が立ち行かなくなり、裁判所へ破産の申立てを行うと、裁判所は破産の原因を確認した後破産宣告を行います。同時に、破産者の全財産の管理処分を任される破産管財人が選任されます。破産管財人は破産者の財産を裁判所の許可を得て換金処分し、現預金などの財産を確保し、それを届出のあった債権者に対し、平等に配当することになります。
 さて管理費についてはどうでしょうか。管理費等は法律の定めにより、裁判費用や公祖公課と共に上記の破産手続きによることなく、破産者の財産の中から優先的に支払いを受けることができるのです。また、支払方法についても毎月発生する費用なので、現金・預金などの財産が残っていれば随時支払いを受けることができます。A社の破産管財人に対して、今までの滞納管理費と今後毎月発生する管理費について書面で通知しておいてください。破産者の郵便などは破産管財人へ届くよう手続きされていますので、送付先はA社の所在地宛でよいです。
 管理費が支払われなかった場合でも、専有部分の売却または競売により、新たな区分所有者に所有権が移ることになります。通常は売却代金などにより支払いを受けますが、支払われなかった場合は、区分所有法の定めにより、新たな区分所有者が従前の滞納管理費を支払わなくてはなりません。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

1995年10月掲載

共有名義になっている部屋への滞納請求について

管理組合の理事長をしています。以前からマンション内に高額滞納者がいて支払の督促を行っています。最近、登記簿を調べてみると、この部屋は共有名義になっていることが判明しました。共有持分に応じて二人に支払の請求をしたいのですが、どのようにしたらよいのでしょうか。

 管理費等の負担について区分所有法では、区分所有者が共用部分の持分割合に応じて負担するとしています。この原則にしたがって、通常は管理規約により各戸ごとに負担すべき管理費が定められています。したがって、管理費は、債権の目的がその性質上不可分な債務として、分割することはできません。
 本問の場合では管理組合は共有者のどちらにでも満額の請求をすることができ、また共有者は「もう一人に請求してくれ」と他の共有者に支払の責任を押しつけることはできません。
 管理組合から見て、管理費等請求の最小単位は一所有区分(一住戸)であり、住戸の共有にまで考慮して請求する必要はありません。
 管理費等の請求や滞納督促を書面で行うことには、管理組合の債権を明示し、債務者に債務を認めさせるという意味があります。ところが、上記のように分割請求を行ってしまうと、債務者から見て自分に支払義務のある金額が明確でなくなってしまう恐れがありますので注意してください。
 結論として、共有者への分割請求は行うべきではありません。最終的には共有者双方に満額の支払義務があることを明示して、督促業務を行えばよいでしょう。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

1999年4月掲載

滞納者に対する管理会社の責任は

管理費の悪質な滞納者がいます。管理会社に対し、回収の責任はどこまで問えるのでしょうか。

 管理会社に管理組合の会計業務を委託している場合、管理費の集金事務は管理会社が代行します。つまり、本来管理組合が行う管理費の集金に関する権限を、契約によって管理会社に委任しているのです。管理会社は管理組合の名称を明示して(管理組合事務代行○○管理会社など)管理費の請求を行います。管理会社が通常の請求事務を怠ることなく行い、その結果滞納者が発生したとしても、これは管理組合の問題として解決しなくてはなりません。こういった事態に備えて、区分所有法では管理組合に強い権限を与えて、管理費滞納者などの義務違反者に対して、「共同の利益に反する行為の差止め請求」を行ったり、また訴えによって「専有部分の使用禁止請求」、「区分所有権(マンション)の競売請求」などを行うことができるとしています。
 滞納者への督促の具体的方法は管理委託契約に定めますが、通常は手紙、電話などによる督促まででしょう。悪質な滞納者へは内容証明郵便で督促し、それでも回収できない場合は、弁護士へ相談の上裁判所へ支払命令の申し立てを行うなどの法的措置を取られるのがよいでしょう。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

1992年10月掲載

賃借人が家賃を支払わない場合管理費の滞納は

私は管理組合の理事長をしておりますが、当管理組合員に管理費の高額滞納者がいます。再三、催促しても支払ってもらえません。その人は外部に住んでおり部屋を賃貸に出しているそうなのですが、賃借人が家賃を払わないため管理費を支払わないと主張されます。さらに賃借人に今までの滞納分を請求してくれと言われます。管理組合としてはどう対応すればよいでしょうか。

 通常マンションの管理規約には、「区分所有者は、敷地及び共用部分等の管理に要する経費に充てるため、管理費等を管理組合に納入しなければならない」と定めてあります。管理費等の納入は区分所有者の義務であり賃借人には関係はありません。ましてや賃借人が家賃を支払わないため管理費を支払わない、または支払えないというのは理由になりません。ですから管理組合としては、今まで通り区分所有者に請求し続けるのが当然です。
 管理組合としては、区分所有者に賃借人における賃料と管理費等とは、全く別のものであること、管理費等の負担は自ら居住しているか否かによらず区分所有者の基本的義務であることを十分理解してもらう必要があると思われます。それでも支払わない場合は裁判上の措置をとることができます。
 また、区分所有者の専有部分が競売にかけられた場合は配当手続に参加して、一般債権者に優先して配当を受けることもできます。
 逆に賃貸している区分所有者が滞納したまま行方知れずになった場合はどうすればよいでしょうか。賃借人が区分所有者に賃料を払っている場合はそこから区分所有者を探し出す努力をし、それでも行方が分からない時は賃借人の家賃を差押さえて管理費等を徴収することもできます。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

1996年5月掲載

理事長が管理費を滞納しているのだが

管理組合の役員をしています。最近、理事長が自ら管理費を長期滞納されていることを知りました。どのように対処するべきでしょうか。

 一般的に滞納者への対処方法として、まず電話、訪問による支払の督促、それでも支払に応じてくれない場合は、内容証明郵便による支払催告書を発送し、支払の督促を行います。通常、内容証明郵便による支払催告書は、管理組合名で理事長が発送します。本件のケースでは理事長が自ら滞納しているわけですから管理組合名で副理事長が発送すればよいでしょう。
 理事長は管理組合の業務の遂行をはかる責務があるにもかかわらず自ら管理費の滞納をし、組合員の義務を果たしていないことは重大な義務違反となります。理事長は自ら理事(理事長)を辞任するなり、理事会で他の理事を理事長に選任する必要があると思われます。
 通常の規約では総会の決議により理事及び監事を選任し、その後理事の互選により理事長、副理事長を選任すると定めています。すなわち、理事会で決議すれば、理事長の変更は可能なのです。規約で理事長(または管理者)の選任について定めがない場合は、総会を開催して新たな理事長(または管理者)の選任の決議を行うことになります。理事長が総会の招集を行わない場合は、通常、臨時総会の招集権限を規約に規定していますので、監事により行うことができます。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

1999年1月掲載

滞納者名の掲示は名誉毀損か

私が理事長をしているマンションには、数名の管理費等滞納者がいます。この度の理事会で、滞納者の名前を掲示して督促することを決議したので、滞納者に対して事前にこのことを伝えたところ、滞納者の一人から、「掲示したら名誉毀損で訴えてやる」と言われました。この場合、名誉毀損になるのでしょうか。

 本問の「掲示したら名誉毀損で訴えてやる」との発言は、刑事告訴と民事損害賠償をする趣旨のいずれかと考えられます。
 まず、刑事告訴の場合、公然事実を摘示して人の名誉を毀損した場合は、名誉毀損罪が成立することになります。しかし、本問の場合、氏名を掲示することは公然事実を摘示したということに該当するといえますが、公共的必要があり、摘示した事実が真実であると証明された場合は、処罰されないことになっています。
 この公共的必要とは、国家や社会全体に関するものだけでなく、小規模の集団に関するものでもよく、滞納している事実が真実であれば、名誉毀損罪が成立しないといえるでしょう。
 次に、民事損害賠償の場合、プライバシーの侵害が問題となります。
 管理費の滞納を放置しますと管理業務にも影響し、また多数の遅滞なく管理費を納めている他の組合員にも影響しますので、管理費の徴収はマンション管理の重要な課題です。
 そこで、滞納者に各種の督促手続を行い、これらの督促にも関わらず支払わなかった場合、一般的にはプライバシーの侵害にならないともいえますが、プライバシーの関係、家族に子どもがいる場合の配慮、管理組合へのリアクションの問題もあり、この方法はあまり実施されていません。ただ、所在不明者や連絡不能者に対して、また、その債権者(住宅ローン会社などの債権者)に対して、債務があることを告知する意味がある場合は、氏名の公表は有効な方法でもあります。
 いずれにしても、氏名を公表する場合には、督促文言や掲載場所にも慎重な対応と配慮を要します。本問では、理事会で決議したとのことですが、訴訟提起の必要に迫られている状況では、そのための情報として総会で滞納者の氏名を公表することは許されるといえるでしょう。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2000年12月掲載

先取特権とは

管理費の滞納者に対し、訴訟による回収を検討しているのですが、「先取特権による回収」という手段があると聞きました。先取特権とはどのようなものですか。訴訟よりも有効なのでしょうか。

 滞納管理費を回収する方法の一つに、「先取特権」による方法があります。
 債権(ある人〔債権者〕が他の人〔債務者〕に対し金銭の支払いや義務の履行(例えば、物の引渡しなど)を請求し、これを実行させることを内容とする権利)について、管理費のような特定債権については、他の一般債権より優越して、債権の請求ができることを先取特権といいます。
 区分所有法の第七条の規定によれば、区分所有者が負担する管理費(他に規約や総会の決議による負担金)については、不動産および動産の上に先取特権を認めています。この趣旨は、区分所有者が区分所有者全員の共有に属する共用部分、建物の敷地もしくは共用部分以外の建物の附属施設を共同して維持管理すべき立場にあるので、管理費の請求権には一般の債権よりも優先的な立場を与えているのです。
 そこで、管理費を滞納した場合、管理組合は滞納者のマンションの建物と敷地またはマンション内に設置している家財などの動産について先取特権をもって、裁判所に申し立てて実行することができますし、裁判の判決を必要としないことから有効かつ簡便な手段となる場合があります。
 しかし、マンションの建物について言えば、この先取特権の優先順位は登記された抵当権に劣ります。住宅ローンなどの抵当権が設定されており、かつ、競売落札価格より多額のローン残高がある(オーバーローン)場合には、この先取特権によって競売しても、管理組合は滞納金を回収できないことになります。
 また、家財などへの先取特権の行使には、滞納者が差押えを承諾することなどが条件であり、滞納者の協力を得られにくいといった問題もあります。
 このような場合には、滞納金の回収をより確実に行うために、訴訟手続を活用し、滞納者に支払い方法などの言い分を聞き、裁判所から滞納者が支払いやすい方法などを考えた上での判決をえて、滞納者に自主的に支払いをさせることが有効な方法といえますし、これを怠った場合に、訴訟の確定判決により、先取特権では行使できなかった滞納者の預金、給与、賃貸している場合の家賃などを差押えて、滞納管理費を回収していくことがよいといえるでしょう。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2002年2月掲載

配当要求とは

理事長をしております。滞納したまま行方不明になっている区分所有者の住戸が、競売に掛かっているとの知らせが裁判所よりあり、管理会社の勧めで配当要求の手続きを検討しています。配当要求とはどのような意味があるのでしょうか。

 マンションが競売の対象となるケースは非常に多くなっています。
 配当要求は、区分所有法第七条の先取特権に基づき行うことになります。
 先取特権とは、債務者の財産から優先的に弁済を受ける権利で、競売したときの売却金を配当する際に、一般債権者に対して優先的に配当が受けられる権利です。この先取特権の実行方法として、動産・不動産の「競売の申立」や「配当要求」があります。
 今回の質問の配当要求とは、他の債権者により既に開始されている競売に「こちらにも配当をください」と言って要求するものです。配当要求の手続きは、様々な書類が必要になるので、書類の作成や手数料、手続きの代行を頼めばその分の手数料がかかります。司法書士に依頼すれば、一定の費用(二万円位)が必要になります。
 また、管理費の先取特権は、抵当権より優先順位が低く、競売代金は、まず抵当権者に配当された後、残金が残らなければ管理組合は、配当を受けられません。
 だからといって、配当要求を行う意味がないわけではありません。配当がなくても競売された旨の通知が裁判所よりあるため、新所有者への請求がスムーズにできます。何よりも、管理組合として「必要な手続きは必ず行う」という姿勢を他の組合員に示すことは非常に大切です。
 手続きに関しても管理会社によっては、サービスとして郵便切手代、収入印紙代、文書作成費など、実費相当額だけの費用で行ってくれる会社もありますので、管理会社に確認してください。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2000年8月掲載

支払督促の申立について

この度、マンション管理組合の理事長に選任された者ですが、管理費等の滞納額の多さに頭を痛めています。いまだに支払の要求に応じない人については、法的手段の行使も考えているのですが、実際にはどういった手続きが必要なのでしょうか。

 管理費等の滞納に対する督促は、支払期限後三ヶ月の間に、電話、自宅訪問、督促状の順で行われるのが一般的です。これらの督促を行っても改善されない場合は、法的手段をとるようになります。
 このような滞納管理費等の収納を行うための法的な手続きとして『支払督促の申し立て』があります。
 支払督促の申し立てを行うにあたっては、事前に管理者を支払督促の債権者とすること、および訴訟となった場合に原告となることについて、集会の決議を経ておくべきです。また、支払督促の申し立てを行った場合は、その旨を区分所有者全員に通知する必要があります。
 支払督促の申し立ては、債務者(滞納をしている人)の住所地の簡易裁判所で行います。この際、「支払督促申立書」、「当事者目録」、「請求の趣旨及び原因」他、債権および債権者についての各種証明書類、印紙など、所定の書類を提出します。申請日から二週間以内に債務者から異議申し立てがあれば、通常の訴訟に移行しますが、異議申し立てのない場合には、支払督促が確定し、裁判の判決と同様の効力をもちます。この判決に基づいて強制執行をかけ、滞納管理費等を取り立てることとなります。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

1997年1月掲載

調停とは

本マンション管理組合と滞納者との間で調停が成立しました。調停とはどういうものですか。調停は非公開が原則だそうですが、どういう趣旨から非公開にするのですか。非公開であると、組合員にどのように知らせればよいのですか。

 調停とは、私人間の紛争解決のために、簡易裁判所に申立をし、調停委員の仲介のもとで、当事者間に解決のための合意を成立させる裁判手続の一つです。合意が成立するためには、当事者双方が調停の場に出頭することが必要です。
 合意が成立した場合には、調停調書が作成され、確定判決と同様に調停調書が執行力(合意した内容を強制的に実現すること)を有することになり、比較的少額な事件の紛争解決には最適な方法といえます。
 調停手続は、訴訟とは異なり、厳格な手続が求められることはなく、簡単な様式の書面を提出して、手続が開始されます。それゆえ、弁護士に依頼する必要もありませんし、非公開のため、当事者が忌憚のない意見を述べ、歩み寄って解決することになりますので、意外と早く紛争が解決することもあります。非公開とする趣旨は、お互いが忌憚のない意見を交換し合い、最適な紛争の解決策を模索するために、非公開の方が最適と考えられたからです。
 本問のケースでは、調停における申立人は管理組合であり、理事長個人ではありません。理事長は、管理組合の代表者として、調停の場に出席し、管理組合の意向を述べるにすぎず、管理組合の構成員である区分所有者に対しては、総会における管理未収金の報告の際に、氏名を明らかにしないで、調停の結果(支払金額、支払方法など)を報告すれば良いでしょう。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2002年1月掲載

管理費の滞納者に対し、「支払命令」以外のよい方法は

管理費を滞納している組合員に対して、その滞納額が少額である場合は、支払命令の申立よりももっと簡単な制度があると聞きました。どのような制度なのでしょうか。

 管理組合の業務として管理費の督促を行う場合、(1)電話・訪問による督促(2)内容証明郵便による支払催告書の送付 (3)支払命令の申立(4)訴訟という流れが一般的だと思われますが、(4)の訴訟にまで発展するケースは非常に希なことであるといえます。というのも、訴訟にまで発展するような金額を滞納している人はほとんどの場合、他にも多大な債務を抱えており、このような人は滞納者の中では少数だからです。
 以上の事情から、滞納者の支払能力が期待できる少額のうちに、早め早めに対策を講ずることが大切だといえます。
 平成一〇年一月一日より改正民事訴訟法が施行され、三〇万円以下の金員の請求については「少額訴訟制度」が導入されました。また、平成一六年四月一日の改正により、六〇万円以下の金員まで「少額訴訟制度」を利用することが出来るようになりました。原則として一日で審理を完了し、直ちに判決が言い渡されます。
 ただし、「一日審理・即日判決」とはいっても、訴訟である以上、事実を主張する場合にその立証をしなければならないという原則は変わりません。簡単な手続きだからといって準備を怠って審理に臨むと、せっかくの制度を生かすことができません。やはり事前に弁護士などに相談し、周到な準備をした上で審理に臨むことが大前提です。
 また、訴訟の提起には、総会の決議が必要となりますが、管理規約で「少額訴訟制度」の事件については「理事会の決議により管理費等の滞納者に対する支払督促の申立及び支払の請求を目的とする訴えの提起を為すことができる」旨を定めておけば、総会の手続きを省略することも可能と考えられます。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

1998年2月掲載

少額訴訟制度について

管理組合の理事長をしています。組合員の中に八〇万円の高額滞納者がおり、少額訴訟制度を利用したいのですが、少額訴訟制度を利用するには限度額が六〇万円以下と聞きました。六〇万円と二〇万円にわけて訴訟を行うことはできるのでしょうか。

 少額訴訟制度とは、現在の滞納金額が六〇万円以下(元本のみ。遅延損害金は含まない)の金銭の支払い請求の際に利用できる制度です。原則として一日で審理を完了し、直ちに判決が言い渡されます。判決に対しては同じ簡易裁判所に異議の申し立てができるだけで地方裁判所への控訴はできないことになっています。また、この制度の利用回数は年間一〇回以内に制限されています。
 基本的に管理費等の滞納額が六〇万円以下(元本のみ。遅延損害金は含まない)であれば訴訟を提起することは可能です。本問の場合、八〇万円の支払いを請求する訳ですから、六〇万円と二〇万円の二回にわけて訴訟を提起することは可能です。しかし、請求額が一部請求であることから、裁判所が通常訴訟への移行を求めることもあり、また二回にわけて訴訟を提起するには、手間と労力を要しますので、一四〇万円以下の管理費等の滞納額であるならば、即日判決という訳にはいきませんが、簡易裁判所(一四〇万円を超える場合であれば地方裁判所)で通常の訴訟を提起するのも一つの方策です。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

1999年3月掲載

長期滞納者に対して訴訟を起こすには総会の決議が必要か

マンションの理事長ですが、管理費等の長期滞納者を相手に、その支払いを求める訴訟を起こそうと思っていますが、総会で決議しなければなりませんか。

 管理費等の徴収は管理組合の本来的な機能の範囲内に属する権能と解されますが、訴訟により滞納管理費等を請求するために、総会決議を行うか否かは規約の定めによります。ただ、裁判の提起という重要な議案は、総会決議によると規定されているのが一般的で、滞納を予防し周知させるためにも、総会で決議したほうが望ましいと思われます。
 一方、設問のような管理費等の長期滞納者に対して、常に総会を開催して訴訟の提起を決議することが煩雑である場合には、一定の期間を超えた滞納者に対して、規約で、理事長に訴訟提起を一任する旨の規定を総会決議により設けることも可能と考えます。
〈総会議案例〉
「第○号Ⅰ案規約変更(追加)について
  • (1)理事長は管理費等を滞納する区分所有者に対して、その滞納額が合計○年分以上○年分以下の場合には、第○条の定めにかかわらず総会の決議を経ることなく、支払いを求める訴えを提起することができる(第○条は総会決議事項の定め)
  • (2)前項の訴えを提起する場合、当該区分所有者は管理組合に対して、訴えに要する訴訟費用及び弁護士費用などの一切を支払わなければならない」
 なお、管理費は五年で時効になりますので、滞納額がいくらになったら訴えを提起するかだけでなく、理事長は訴えを提起しなければならないことに注意してください。
 また、訴え提起のための滞納額の上限および下限を規定したのは、理事長の恣意的な運用を回避するためであり、無限定な規定は無効になる可能性があるためです。
 さしあたって滞納管理費等の問題がない管理組合においても、管理費等の支払義務の重要性に鑑み、またその備えとして、規約の変更を行っておくのもよいでしょう。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

1998年12月掲載

判決を得ても相手が応じない場合どうすればよいか

管理組合の理事長です。先日、原告代表となり、長期滞納者に対し少額訴訟を行い、毎月三万円ずつ返済するという内容で和解しましたが、その後一回入金しただけで、振込がありません。本人は、支払いたくてもお金がない、と言うばかりです。残り二一万円ほどですが、どうしたらよいでしょうか。

 債権者(管理組合)が、民事訴訟で勝訴または和解などで債権取り立ての権限を得ても債務者(滞納者)が任意にその支払いを行わないことは、時としてあることです。
 債務者が任意に支払わないということですから、債務者の財産を差し押さえるか、または債務者が債権を持っている第三債務者(本人の勤務先の会社やマンションを借りている賃借人など、本人に対し給与や賃料など、金銭を支払う義務を負う者)に支払いを行ってもらうことになり、強制執行をするしかありません。
 強制執行は、本件では、申し立てを行えば定められた執行機関(原則、執行裁判所と執行官)によって行われます。
 例えば、債務者の給料・退職金・家賃・電話加入権・自動車・銀行預金などに対して強制執行することとなります。強制執行の対象は債権者が自由に選べますが、債務者がどの会社に勤務しているとか、電話番号が何番か、賃借人は誰で家賃はいくらであるなど、債権者で債務者の財産状態を調査しなければなりません。
 例えば、勤務先が判明した場合、給料・退職金を対象に差し押さえを行うために、管轄地方裁判所に債権差押命令の申し立てを行います。この申立書には、債権者・債務者・第三債務者(勤務先会社)を表示し、差し押さえるべき債務者の債権や金額を特定し、差し押さえを求めることのできる債権を記載します。差押命令は、債務者と第三債務者に送達され、第三債務者に送達された時に差し押さえの効力が生じます。差し押さえの効力が生じた後一週間経過すると、第三債務者から取り立てを行うことができます。
なお、執行手続きには裁判所の定める申立手数料、送達費などの執行費用八〇〇〇円程度がかかります。執行債権二一万円にこの執行費用を加算した額を取り立てることになります。
 何を対象として強制執行を行うかによって、申立書の内容や調査すべき内容などが異なりますが、詳しいことは管轄地方裁判所に尋ねても教えてくれます。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2000年5月掲載

差し押さえとなっている住戸に対する手続きは

管理組合の理事長をしています。ある高額滞納している住戸の登記簿を調べてみると差し押さえとなっていました。この住戸に対し管理組合として、どのような手続きを行えばよいのでしょうか。

 差し押さえとは金銭債権についての強制執行の第一段階として、裁判所が債務者の財産の処分を禁止することをいいます。差し押さえとなった住戸は、競売手続が開始されます。管理組合として、まず裁判所に対して配当要求請求を行い、競落された際に配当をもらえる権利を意思表示した方がよいでしょう。
 管理費や修繕積立金の支払義務は、通常は規約で定められており、管理組合の債権については先取特権(区分所有法第七条)が認められ、他の一般債権よりも先に管理費等の支払を受けることができます。
 先取特権とは、債務者の財産から優先的に弁済を受ける権利です。しかし、この権利は登記をした抵当権には優先しません。今日のように不動産価格が下落して、登記した抵当権が不動産の実勢価格よりも額が多い場合は、配当を得ることができなくなることが多くなっています。
 ただし、配当が得られなかったとしても配当要求の手続きを行うことにより、競落された際に裁判所より、次の所有者(競落人)の通知があります。
 配当要求の手続きは、その競売手続きのなかで公告された終期までに行う必要があります。
 競売の情報を得たらすぐに、裁判所に上申書を提出しておくのも一つの方法です。上申書とは、競落人に対して現在滞納がいくらあるかを記載した書類です。上申書を提出し、競落人に対して滞納管理費があって、請求されることを明示しておくことで、回収が容易になるというメリットがあります。
 なお、仮に管理組合が配当要求、上申書を提出していなかったとしても、次の所有者(競落人)に対して滞納管理費を請求することはできます。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

1999年6月掲載

行方不明の長期滞納者へ訴訟を行うにはどうすればよいか

理事長です。当マンションに長期滞納者がおり、総会にて訴訟を行うことが議決されました。しかし、その滞納者は、現在行方不明となっております。どうしたらよいでしょうか。

 訴状などの送り先(送達場所)が不明なため、滞納者に対し送達書類を届けることができない場合に、裁判所の掲示だけで「滞納者に訴状が届いたもの」と同じ効力を持たせる制度があります。
 これは、「公示送達」といい、裁判所書記官が送達書類を保管し、いつでも滞納者に交付する旨を裁判所の掲示板に掲示し、その日から二週間が経過することで書類が送達されたと同じ効力が生じます。
 ただし、この「公示送達」を行うには、次の要件を満たすことが必要です。「当事者の住所、居所その他送達をすべき場所が知れない場合」(民事訴訟法第一一〇条第一項第一号)。これは、現住所や転居先と思われる場所および勤務先について調査したが判明しなかったことを証明すれば、公示送達の要件を満たすと考えてよいでしょう。
 実際には、公示送達を行う場合、公示送達の申立てを行い、送達場所が不明であるという判断の資料を裁判所に提出することとなります。その際の判断資料とは、当事者(管理組合)が調査を行った報告書などをいいます。調査報告書には、調査の方法(調査者、調査場所、調査日時、第三者に面接して調査した場合には、被面接者の住所、氏名、面接内容)およびその結果を記載することになります。
 以上の手続きを行い、公示送達を行うと、掲示をした日から二週間を経過することにより送達の効力が生じます。
 よって、相手方は訴訟の呼び出しを受けたことになり、相手方が欠席しても判決を得ることができます。ただし、支払督促や少額訴訟は公示送達によることができません。なお、公示送達により訴訟を行い、判決を得たとしても、相手方からの直接的な取立ては困難なため、動産・不動産の差押えや賃借人がいる場合は、賃料の差押えを行い、未収管理費の取立てを行うことになると思われますので、事前に相手方の財産状況も確認しておくことが必要です。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2000年6月掲載

管理費滞納者が死亡した場合はどうすればいいのか

管理費を滞納していた区分所有者が死亡され、登記上はまだ死亡された本人の名義のままになっています。所有者の相続人が全ての相続を拒否されたのですが、ただちに競売等が行われる動きは見られません。当然管理費は納めてもらえないため、滞納額は膨れ上がる一方です。何かよい解決方法はないでしょうか。

 民法によれば、相続は死亡によって開始し(民法第八八二条)、相続人は被相続人(死亡した人のこと)の財産に属した一切の権利義務を承継します(民法第八九六条)から、死亡した人の遺した相続債務が相続財産を上回る場合にも当然に相続することになると、相続人には余りにも不合理、不都合な場合もあり、相続人は相続財産を調査して、相続を承認、限定承認(相続財産の範囲で相続債務の責任を負うこと)または放棄するかを一定の期間(相続を知ったときから三ヶ月)、考慮できることにしました(民法第九一五条)。
 この期間に、相続人が限定承認や放棄の手続きを取らない場合には、承認したとみなされます(民法第九二一条一号)。
 本問の場合、死亡した人の滞納管理費等について、相続人が相続を拒否するとの意思を示していますが、相続を放棄するためには、家庭裁判所で相続放棄の申述をしなければなりません(民法第九三八条)。この手続きをしない場合には、適法な相続放棄とはなりません。
 さて、相続人が適法な相続放棄の手続きをした場合には、相続財産を管理する人がいなくなりますので、相続財産は法人(会社の財産のようなもの)となり(民法第九五一条)、これを管理する相続財産管理人を選任して(民法第九五二条)、相続債権者は相続財産に権利を行使することになります。
 本問のように相続放棄された場合には、管理組合は、その滞納管理費等を回収するために、通常は抵当権の付いた住宅ローン債務が残っているので、マンションの登記簿謄本を調査し、抵当債権者を捜し出して、抵当権者にマンションを競売してもらうのが一般的です。
 管理組合も、滞納管理費等は一般債権に優先する先取特権を認められるので、マンションを競売することもできますが、抵当債権は先取特権に優先し、昨今の不動産価格が下落している状況では、競売価格が抵当債権を下回ることも多く、競売手続きが取消されて実効性に乏しいといえます。
 そこで、管理組合は抵当権者にマンションを競売(この場合、相続財産管理人が当事者となります)してもらい、その配当手続きに加わって配当請求を行い、競売代金が抵当債権を上回った場合には、優先的に配当を受けて回収することにします。
 また、例え競売代金が抵当債権を下回った場合にも、競売物件の調査報告書には、滞納管理費等のあることが明記されるので、マンションを競落した人は、滞納管理費等があることを知って、マンションを競落することになります。
 その結果、管理費等は特定承継人(マンションを競落した人も特定承継人になります)にも承継されるので(区分所有法第八条)、管理組合は競落人に対して滞納管理費等を請求することになりますが、競落人が滞納管理費等があることを知らないというトラブルを避けられ、その回収も容易になるでしょう。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2003年4月掲載

区分所有権の中間取得者に滞納管理費等の支払義務はあるか

私のマンションには、管理費等を滞納しているAさんがいました。その部屋をマンション外のBさんが競売にて落札しました。区分所有法第八条に基づきBさんに管理費等の滞納を請求したのですが、Bさんは既にCさんに売却し所有権がCさんに移っているため、自分に支払の義務はないと言っています。この場合、管理費等の未収については誰に請求することができるのですか?

 区分所有法第八条には「同法第七条第一項に規定する債権は、債務者たる区分所有者の特定承継人《競売、買取などにより権利(ここでは、区分所有権)を承継する者》に対しても行うことができる」と規定されています。
 通常Bの立場は、Aより競売にて区分所有建物の取得をしているので特定承継人に該当し、支払義務があります。しかし、Bは既にCに売却をしており、現在の所有者ではありません。ここで、現に所有権を有していない特定承継人が区分所有法第八条でいう特定承継人に該当するかどうかが問題となります。
 区分所有法第八条の記載では「管理組合が債権を行使する相手」については、「債務者たる区分所有者の特定承継人」と規定するのみであって、「現に区分所有権を有している特定承継人」に限定していません。もし仮に、「Bを特定承継人として扱わない」とすると、一般的なケースで、管理費等の支払について裁判となった場合、現所有者が訴訟途中、または、敗訴判決確定後に他に譲渡することによりその負担から逃れることが可能となり、法規定の趣旨・目的に照らして妥当でないと考えられます。よって、現に所有権を有していないBについても区分所有法第八条の特定承継人として扱うべきと考えられます。
 なお、売買などの中間取得者については、特定承継人に「該当しない」という判例、「該当する」という判例に分かれていますが、一般的には特定承継人に該当するといえるでしょう。
 本件の場合、管理費等の滞納について、区分所有法第八条の規定により譲渡人A・譲受人B両者に同時に請求できるものとし、B・Cの関係についてもCはBの特定承継人に該当し同様のことがいえますので、個別にそれぞれ請求することも、三者に同時に請求することもできます。
 その請求額については次の通りとなります。例えば、A・B・Cが区分所有権を有していたときに、新たに発生させた管理費等の滞納額が、それぞれAが二〇万円、Bが一〇万円、Cが五万円とした場合、遅延損害金は別に加算するとして、Aには二〇万円、Bには三〇万円、Cには三五万円を請求することになります。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2004年1月掲載

債務弁済の充当方法(順位)について

私は理事長をしております。当管理組合は毎月末日に翌月分の管理費等を支払うこととなっていますが、二〇〇三年九月分より、月々二〇〇〇〇円の管理費等を五ヶ月分滞納している方がいます。その未払金額に年利一五%の遅延損害金を加えて請求することができると規約に記載があり、それに基づき遅延損害金を請求しました。  一月二〇日にその滞納者から三〇〇〇〇円入金があったのですが、元金・遅延損害金どちらから充当するのですか。

 この度のケースを、表にすると、下表のとおりとなります。

債務弁済の充当方法

 まず、民法によると費用・利息が発生している場合は、費用・利息・元金の間の充当方法(民法第四九一条一項)によれば、まず費用(例えば、売買契約費用・競売費用・執行費用等の訴訟費用など)、ついで利息、そして残額を元金に充当するべきとされています。なお、ここでいう「利息」には、遅延損害金も含まれます。費用は発生していないとすると、まず遅延損害金、次に元金に充当するということです。元金の充当については、民法によると、当事者の一方(第一次に弁済者(組合員)、第二次に弁済受領者(管理組合))が充当方法を指定していれば、指定弁済充当(民法第四八八条)によります。当事者のいずれからも指定がない場合は、法定弁済充当(民法第四八九条)となります。指定弁済充当とは、例えば弁済者が「入金をした場合は支払期限の新しい元金から充当すること」と指定した場合、まず、「番号一、二、・・五」の遅延損害金三三三五円に充当し、次に支払期限が最も新しい「番号五(二〇〇〇〇円)」の元金に充当し、次に新しい「番号四(二〇〇〇〇円)」の元金の一部に残金六六六五円を充当することとなります。そうすると、「番号四」の元金二〇〇〇〇円は、一三三三五円となり、「番号三、二、一」の元金はそのまま残ります。
 法定弁済充当については、債務者にとって弁済の利益が多いものから充当する(民法第四八九条二項)ことと定めてあり、債権が複数ある場合(本件の場合、「番号一〜五」、計五個の債権)については、確定期限の有無・利息の有無・利率の高低などが充当の優先基準となります。本件ではそれらの基準において、債務者の利益が各同一ですから、このような場合は、支払期限の古いものから充当する(民法第四八九条三項)とされています。
 よって、「番号一、二、・・五」の遅延損害金三三三五円に充当し、そして支払期限が最も古い「番号一(二〇〇〇〇円)」の元金に充当し、次に古い「番号二」の元金に残金六六六五円を充当することとなります。そうすると、「番号二」の元金は一三三三五円となり、「番号三、四、五」の元金はそのまま残ります。
 なお、このような弁済充当をした場合には、必ず滞納者に書面で残管理費の額を通知しておきましょう。滞納者に思い違いがあると、後に紛争のもととなるからです。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2004年2月掲載

民事訴訟法の改正について

理事長をしています。管理費等を五〇万円滞納している人がいます。法律が改正され法的処置が行いやすくなったと聞いていますが、どのように変わったのでしょうか。

 平成一六年四月一日より民事訴訟法が改正されました。改正のポイントは以下のとおりです。
(1)少額訴訟について、三〇万円以下の金銭請求とされていたところが六〇万円以下の金銭請求へと変わりました。
(2)簡易裁判所で扱える請求額の制限が九〇万円以下から一四〇万円以下へと変わり、請求額が一四〇万円を超える場合は地方裁判所での取り扱いとなりました。
 今回の場合、滞納額が五〇万円ですので少額訴訟で対応することができ、原則一回の審議で訴訟は終わります。
 仮に六〇万円を超えていても、一四〇万円までは簡易裁判所の取り扱いとなります。地方裁判所での代理人は弁護士しかなれませんが、簡易裁判所では裁判官が認めれば、弁護士以外の利害関係人(例えば他の役員)や「特別研修」を受講した上「認定試験」に合格した司法書士が代理人となることができます。
 なお、管理費の時効について、平成一六年四月二三日に最高裁で「管理費は定期給付債権(民法一六九条)にあたり、消滅時効は五年」との判決が出ましたので、滞納者に対する時効を中断させるためにも、早急に法的処置を行うのが良いでしょう。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2004年10月掲載

簡易配当手続きとはどのようなものですか

理事長をしています。管理費を滞納していた区分所有者が破産し、その破産管財人より「簡易配当手続きのご案内とお願い」が届きました。同封の回答書に簡易配当手続きに同意するか同意しないかを記入し、提出するようにという案内です。簡易配当手続きとはどのような手続きでしょうか?また、同意すべきなのでしょうか?

 簡易配当手続きとは、債権者への配当原資となる財産が一〇〇〇万円以下の場合に、配当手続きを簡略に行い、できるだけ早期に配当手続きを処理し、配当手続きにかかる費用を節約することを目的として行われる手続きです。
 通常の配当手続きを実施すると官報掲載などの費用(約三万円)と時間(約三ヶ月)がかかります。
 簡易配当手続きでは、この官報掲載の手続きを省略します。それにより、官報掲載費用相当額を配当に回すことができるとともに、早期に破産管財人が配当への着手を行うことができます。
 簡易配当は、配当手続きを簡略にする手続きですので、その後の配当表の配当には、異議を申し出ることができます。本問では、この手続きを同意するかしないかの回答を求められていることから、簡易配当手続きのうち、同意配当の手続きがとられているようにも思えます。この場合には、債権者全員の同意が必要となり、配当表に異議を唱えなくなります。そこで、同意すべきかということですが、確かに簡易配当は手続き的には簡略化されますが、裁判所の監督が全く無くなるわけではなく、届出債権額が認められている場合には手続きそのものも進行が早くなりますので、拒否する理由はないといえます。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2004年12月掲載

四年前の少額訴訟で得た判決を基に強制執行を行うことはできますか

四年前に管理費を滞納していた人に対して少額訴訟を行い、「滞納分を支払え」といった判決を得ていますが、滞納分が全く支払われていません。最近、その滞納者が部屋を賃貸に出したため、家賃の差し押さえを行いたいと思います。判決を得てから、四年が経過していますがこの判決を基に差し押さえを行うことができますか?

 債権は、その権利が行使できる時点から長い期間権利を行使しない場合、時効により消滅することになります。これを消滅時効といいます。
 法が債権の消滅時効を認める理由は、長い間権利を行使しない状態が続くその平穏な状態を保護する必要があると判断し、長い間権利を行使しないことにより相手方の反論が困難になると判断したことなどから、消滅時効の制度を設けたものです。
 本問は、四年前に管理費を滞納していた区分所有者に対して少額訴訟を行い、「金○○円(滞納管理費分)を支払え」という判決を得ているということですので、民事判決の債権となり、この債権は確定債権として一〇年の消滅時効にかかる債権になります(民法一七四条の二)。
 それゆえ、四年が経過していますが、少額訴訟の判決に基づいて、強制執行(家賃の差押え)を行うことができます。
 ところで、管理費債権の消滅時効は、最高裁判所の判決で五年を経過すると消滅時効にかかると判断されましたので、注意してください。
 しかし、五年の消滅時効にかかる管理費債権も民事判決を得ると一〇年の消滅時効にかかる確定債権になります。この民事判決が一〇年の消滅時効にかかる確定債権にした理由は次の通りです。債権には一〇年よりも短い期間で消滅時効にかかる債権があります。飲食代は一年、電気料金は二年などです。その短期時効債権でせっかく民事判決を得ても、また一、二年で消滅時効にかかることになると、延々と裁判を続けるという労力を強いることになり、民事裁判の有効性がなくなりますので、一〇年の消滅時効になる確定債権としたのです。
 それゆえ、五年の消滅時効にかかる管理費について、確定判決を得れば、一〇年の消滅時効にかかる確定債権となります。しかし、この確定債権も一〇年を経過すると消滅時効にかかりますので、早期に強制執行する必要があり、また強制執行をすれば時効が中断し、さらに一〇年を経過するまで消滅時効にはかからないことになります。
 なお、少額訴訟の民事判決だけでなく、裁判上の調停や和解なども民事判決と同様の確定債権になることになっています。
 強制執行では、今回の家賃の差押え以外に、区分所有者の給料・退職金・銀行預金などの債権や自動車などの動産を差押え、これを取立てまたは換価して債権を回収することができます。
 本問のケースは、四年前に少額訴訟の確定判決を得ているということですから、区分所有者の家賃債権に強制執行をすることができます。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2005年2月掲載

信託された住戸の管理費等の請求等は誰に行うのか

理事長をしています。滞納者Aに対して訴訟を行うため、登記簿謄本を取り寄せたところ、所有権移転という記載があり、その原因は信託で受託者Bとなっておりました。訴訟および今後の管理費等の請求は、A、Bどちらに行えばよいのでしょうか?

 信託とは、ある人(委託者)が一定の目的のために、財産権の処分をし、この処分の委託を受けたもの(受託者)が、委託者との契約により定められた目的に従い、その管理または処分をすることをいいます。
 信託の成立により、信託の目的となった財産は受託者に帰属することとなります。
 そこで、本件設問では、住戸の区分所有者であるA氏が、信託の目的としてその住戸を第三者に賃貸するために、信託の成立があれば、住戸の区分所有権がA氏からB氏に移りますが、この信託の目的とされた財産は、受託者の財産とは独立した性格の財産となります。
 したがって、信託財産は受託者の所有に属するが、受託者の固有の財産から独立し、受託者に対する債権を有する者から強制執行をすることはできません。
 信託にはこのような制限がありますので、通常は、受託者がその住戸を賃貸借することや総会における議決権の行使を行うことはできると考えられますが、管理費等の請求については、受託者には管理費の支払い義務はないといえます。
 また、管理組合が組合員の住戸の登記簿謄本を確認する義務はありませんので、区分所有者であるA氏に請求するのも当然です。
 しかし、A氏から住戸を信託したので、受託者B氏から管理費等を支払いたい旨の届出があった場合は、B氏から支払いがあれば、これを受領するのは問題ありませんが、B氏から管理費等の支払いがなく、これを請求する場合は、A氏に請求するのを怠ってはいけません。
 また、管理費等の請求のために訴訟を提起する場合は、B氏には法的に支払義務がありませんので、A氏を被告として訴訟を行うことになります。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2005年6月掲載

占有者が滞納した水道料金はどのように対処すればよいのでしょうか

理事長をしています。私どものマンションでは、管理費と共に水道料金を所有者に請求していますが、便宜上申出があれば占有者に請求を変更しています。その場合でも使用量と請求金額は所有者にお知らせしています。占有者が滞納したため所有者に請求したところ、自分が使ったわけでもないし、使用量がとても多いので払わないと言っています。今後、どのように対処していけばよいのでしょうか?

 管理費等(管理費、修繕積立金など)の支払い義務を負う者は区分所有者であり、賃借人等の占有者が管理組合に対して管理費等の支払い義務を負うのではありません。賃借人等の占有者が管理組合に管理費等を支払ってくる場合がありますが、これは区分所有者と立替払いの委託契約をしているからで、このことによって区分所有者が管理費等の支払い義務を免れるものではありません。
 本問は、ここでいう水道料金がこの管理費に含まれるかという問題です。
 ところで、問題のマンションの水道料金は、管理組合が親メーターを設置し、水道料金を一括して水道局に支払い、管理組合は各戸の子メーターを検針し、水道局の料金形態に準じて各所有者に請求する場合のことです。このことは管理規約の定めまたは総会の決議、もしくは購入時の容認事項として定められている場合がほとんどです。管理費等の支払いについては、区分所有者の義務であることはいうまでもありません。
 本問では、滞納が始まるまでは占有者が水道料金を支払っていましたが、これは所有者の管理費等を立替えて支払うという契約により、管理組合は便宜上、占有者に対して水道料金を請求していただけあって、本来の支払い義務は区分所有者にあります。そのため、「自分が使用したわけではない」、「占有者の水道の使用量が多い」等、いかなる理由であっても責任を回避することはできません。
 請求先を占有者に変更するときに、所有者より「私が第一位の支払い義務者であり、万一当該区分の水道料金等が滞納された場合、全額なんら異議を挟むことなくただちに納付します。」と書かれた誓約書を管理組合に提出してもらうようにしておけば、誤解によるトラブルを防ぐことができます。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2005年7月掲載

時効をむかえそうな管理費の滞納について何か対処法はないでしょうか

先日、最高裁の判例で管理費の滞納の時効が五年であることを知りました。現在、私のマンションで四年一〇ヶ月滞納している人がいます。競売に掛かっているのですが、回収できるめどはたっていません。しかし時効をむかえそうです。何か対処法はないでしょうか?

 時効を完成させない方法として、「時効の中断」という時効の期間の始まりを最初に戻すという方法があります。一般的には、訴訟、支払督促、和解、差押えなどの法的処置を行うことにより時効が中断されます。
 法的処置によらない簡易な方法として、滞納者に債務があることを認めさせる「承認」という方法があります。具体的には、滞納者が滞納金額、内訳、滞納している事実を認める内容が記載された承認書に署名押印してもらうことで中断されます。実務としては支払計画書を承認してもらうことになります。また、一〇〇万円の滞納がある人にその滞納費のうち一万円でも払わせた場合なども承認となり、残高について時効が中断されます。この場合は、全体のうちの一部の入金であるということを書面で承認してもらうことが必要です。
 その他に内容証明郵便を出す方法もあります。しかし、その後六ヶ月以内に裁判上の請求など法的な時効中断手続きをとらなければ、時効中断の効力は認められません。
 本問は、競売に掛かっているということですので、配当要求(競落人が納付した代金から配当を要求する手続き)を行っているか確認してください。配当要求を行っていた場合、差押えと同等の効力を有するとされており、時効中断の効力が認められることになります。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2005年8月掲載

新所有者は、前所有者の遅延損害金を支払わなくてもよいのでしょうか

管理組合の理事長です。滞納していた住戸を競売で落札した不動産業者に前所有者が滞納していた管理費、積立金および規約に基づく遅延損害金を請求したところ、「管理費、積立金は支払うが、遅延損害金については落札前に知らされていないし、前所有者が滞納しなければ発生しないものなので、新所有者に支払義務はない」と言っています。新所有者は、前所有者の遅延損害金を支払わなくてもよいのでしょうか。

 区分所有法第七条において、『区分所有者は、共用部分、建物の敷地若しくは共用部分以外の建物の附属施設につき他の区分所有者に対して有する債権又は規約若しくは集会の決議に基づき他の区分所有者に対して有する債権について、債務者の区分所有権及び建物に備え付けた動産の上に先取特権を有する。管理者又は管理組合法人がその職務又は業務を行うにつき区分所有者に対して有する債権についても、同様とする』と定め、同法第八条において、『前条第一項に規定する債権は、債務者たる区分所有者の特定承継人に対しても行うことができる』と定められています。
 規約に基づく遅延損害金ということなので、当然に承継される対象の債権であり、支払義務が生じます。また、競売手続では、物件調査において、滞納管理費とその遅延損害金を請求することになるから、不動産業者がこれを知らないというのは不自然です。
 なお、規約に遅延損害金の記載がなくとも、民法による年利五%の遅延損害金や覚書などで約束した管理組合と滞納者の定めによる遅延損害金も対象となります。
 よって、新所有者は、前所有者が滞納した日から新所有者の支払日までの遅延損害金を支払う義務があります。最終的にこの遅延損害金を誰が負担すべきかは、前所有者と新所有者の当事者間によって定まることであり、管理組合の請求権とは関係ありません。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2006年1月掲載

修繕積立金値上げに反対した区分所有者が納入を拒んだ場合は

理事長をしています。最近、大規模修繕工事に向けて総会で修繕積立金の値上げを決議しましたが、値上げに反対した区分所有者が値上げされた積立金の納入を拒み、従前の修繕積立金額を供託しました。管理組合としてはどのように対処すれば良いでしょうか。

 本来供託とは、債権者が弁済の受領を拒んだり、または受領することができないときに、弁済をすることができる者は、債権者のために弁済の目的物を供託してその債務を免れるための方法です(民法第四九四条)。つまり債務者が債務を供託すれば、債務弁済を果たしたことと同等に扱われることになり、債権者は債務者に対し債務の弁済を求めることができなくなります。
 しかしながら、本問のように、管理組合は修繕積立金の受領を拒んだわけでも、また受領できない状態にあったわけでもなく、修繕積立金の値上げに納得していない区分所有者が勝手に行った供託は、本来の供託の条件を満たしていないため債務を履行したこととは扱われません。
 つまり、管理組合は依然として当該区分所有者に対し値上げした修繕積立金の全額を請求することができ、区分所有者が請求に応じない場合には法的手続きをとることも可能です。
 また、供託されている値上げ前の修繕積立金を受領することは可能なため、供託所へ払渡請求を行った後の残高について法的措置を講じていけば良いでしょう。この場合、管理組合と当該区分所有者の供託された修繕積立金に対する考え方が異なるため、管理組合は供託者に対して、滞納分の修繕積立金の一部として供託金を回収する旨を通知しておくことが重要です。通知を怠った場合、値上げ前の修繕積立金で良いことを容認したと受け止められる可能性があるためです。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2006年4月掲載

高額滞納者の住戸を競売にかけたいのですが

管理費の高額滞納者に対して訴訟を行い、判決を得ましたが、差し押さえできるようなものがなく、抵当権もたくさん付いているため、当該住戸も競売にかけることが難しい状況です。何かいい方法はありませんか。

 本問では、管理組合は、民事訴訟により判決を得ているということで、区分所有者に対して、その財産(本問の場所は区分所有建物)に強制執行をすることができます。強制執行の方法は、不動産競売になります。しかし、区分所有者の建物には、抵当権がたくさん付いているということで、このような場合、抵当権の債権額が建物の時価を上回り、競売代金が全額抵当権者に弁済され、管理組合が配当を受けられない場合、裁判所は競売をする意味がないと判断し、請求は却下されてしまいます。つまり、本問のように差し押さえる財産もなく、住戸を競売にもかけられない場合は、債務名義(判決文や公正証書などの執行力のある文書)による対応は事実上不可能ということになり、抵当権者による競売を待ち、その後区分所有法第八条に基づき、落札した所有者に請求するというのが一般的です。
 しかし、抵当権者による競売請求がなかなかされない場合、管理組合の未収金は増える一方となります。その場合は、債務名義による方法でなく、義務違反者に対する措置として区分所有法第五九条の区分所有権の競売請求を行い、区分所有法第八条に基づく請求が可能です。最近の判例では、区分所有法第五九条による競売の目的は配当を得ることではなく、あくまでも区分所有者の共同生活維持のために、悪質な区分所有者の排除を目的とするものであると判断し、高額滞納者に対しても競売を認めています。そして、この競売手続で、新しい区分所有者(競落人)に、滞納管理費を支払ってもらって、滞納をなくすことができるのです。
 この競売請求を行うには総会の特別決議(区分所有者および議決権の各四分の三以上)が必要です。また、他の方法によっては、その障害を除去することができないことを裁判所に対して証明する必要がありますので、滞納者に対する催促、請求の記録など、どのような対応を行ったか明確に記録しておくことが重要となります。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2006年7月掲載

遅延損害金に消費者契約法は適用されますか

理事長をやっております。私のマンションでは、管理規約で遅延損害金が年利一八・二五%になっております。しかし、「消費者契約法では上限が年利一四・六%となっており、それを超える部分は無効となるため、民法の規定が適用され五%になる」との見解があるようですが、どうなるのでしょう。

 消費者契約法は、消費者と事業者との間で締結される契約に広く適用される法律です。しかし、管理組合の管理費の徴収は、消費者と事業者とが締結する契約ではなく、区分所有者で構成される団体(事業者)の区分所有者が共有する建物などの維持管理のルールであり、契約行為とは性格が異なります。管理規約の内容が不服であるからといって、区分所有者と管理組合との契約が解除できることになっては大変です。よって、消費者契約法が適用になることはありません。
 当然のことですが、消費者契約法が施行されたからといって規約を改正する必要はありませんし、施行前後で規約の効力が異なることもありませんので、このマンションの遅延損害金は年利一八・二五%を今までも、今後とも、適用されて何ら問題はありません。
 管理費等を滞納した場合に管理組合が請求できる遅延損害金については、管理規約に定めがあります。管理規約の定めは、総会などで全員で決められますが、遅延損害金の利率に関しては、過小であっても滞納者に納付を奨励する動機とはなりませんし、また過大であっても滞納者に大きな負担をかけることになりますので、多くの管理組合では一八%程度の定めとされることが多いようです。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2007年1月掲載

所有権移転登記がされていない部屋への滞納分の請求について

ある部屋で、A氏が管理費等を滞納しています。登記簿謄本を確認したところ、前所有者(B氏)のまま、所有権移転登記がされていませんでした。管理組合へは、B氏からA氏への所有権移転届が提出されており、A、B両氏の押印もあります。管理組合としてはどちらに請求すべきなのでしょう。ちなみにB氏は行方不明になっています。

 B氏は謄本上の所有者であり、当然に管理費等を請求することが出来ます。たとえA氏に所有権を移転していたとしても、B氏は前所有者ということになり、管理組合は区分所有法上、管理費等の滞納を前所有者であるB氏にも請求することが出来ます。
 しかし質問の場合は、B氏が行方不明になっており、現実的に管理費等の滞納を請求することが出来ないと思われます。この場合に、A氏に管理費等の滞納を請求することが出来るかどうかが問題となります。
 B氏からA氏に所有権移転登記がされていない、ということですが、登記する意味合いは、「第三者に所有権を主張出来る」というだけです。また、管理組合には、A、B両氏が押印したB氏からA氏への所有権移転届が提出され、現に占有もされているのですから、管理組合は登記に関係なく、A氏が部屋の所有権を取得した(真の区分所有者である)ものととらえ、管理費等の滞納をA氏に請求することができると思われます。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2007年8月掲載

競落人が旧所有者に過去の滞納分を請求することは法的に可能か

理事長をしています。管理費等を滞納していたマンションの一区分が競売に出され、落札した不動産業者から、管理費等の滞納額を旧所有者に請求したいので、旧所有者の連絡先を教えてほしいと依頼がありました。競落人が旧所有者に対して、過去の滞納分を請求することは法的に可能なのでしょうか?また、旧所有者の連絡先を教えることに問題はないのでしょうか。

 競売物件を落札した新所有者が、管理組合に対して旧所有者が滞納した管理費等を支払った場合は、旧所有者を求償権行使の相手方債務者として求償することができます(東京高裁判決 平成一七年三月三〇日)。
 この他にも、落札した部屋に賃借人がいる場合には、賃貸借契約の当事者として家賃の支払いを請求することもできます。このとき、当該賃借人に過去における賃料の滞納があった場合、新所有者は過去の賃料を請求することはできませんが、当該賃借人が退去する際において、賃料の滞納があれば敷金から差し引くことは可能です。
 また、新所有者より旧所有者の連絡先に関する問い合わせがあった場合、旧所有者の連絡先が組合員間の共通の情報とされている場合は、これを新所有者に教えることに問題はありませんが、一般的には、既に管理組合員ではない旧所有者の連絡先を管理組合が把握しているケースはほとんどありません。このような場合には、新所有者にて、旧所有者の住民票を取得するなど、独自に連絡先や連絡手段を調査していただく必要があるでしょう。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2009年4月掲載

自己破産していた区分所有者の部屋が競売された場合、管理費等の請求は

理事長をしています。裁判所より、自己破産をしていた当マンションの管理費等を滞納している区分所有者の部屋が、競売により落札された旨の通知を受けました。今後の管理費等の請求はどのように行えばよいのでしょうか。

 区分所有法では、前の区分所有者が管理費等を滞納したまま売買等で所有権が移転した場合には、管理組合は新たに所有権を取得した区分所有者に前の区分所有者が滞納していた管理費等を請求することができると定めています(区分所有法第八条)。
 これを特定承継といい、売買だけでなく、競売によって所有権を取得する場合も含まれます。
 本問は、管理費等を滞納している区分所有者が自己破産し、そのマンションが競売によって新たに所有権が移転した場合、滞納された管理費を誰に請求することになるかという問題です。
 ところで、区分所有者が自己破産した場合、破産開始決定前の滞納した管理費等が免責(法的に返さなくてもよいこと)されますから、管理組合は自己破産した区分所有者に対して、破産開始決定前の滞納管理費等を請求することはできません。しかし、破産開始決定後に滞納する管理費等は免責されませんので、自己破産した区分所有者に請求することができます。また、自己破産した区分所有者が破産開始決定前の滞納した管理費等に免責を受けても、前の区分所有者に請求できないだけで、破産開始決定前の滞納した管理費等が消滅するわけではありません。
 そこで、管理組合は競売によって所有権を取得した区分所有者に対して、破産開始決定前後を問わず、自己破産した区分所有者が滞納した管理費全額を請求することができます。
 なお、自己破産した区分所有者は、法的に、破産開始決定前のすべての債務を支払いませんので、経済的に、破産開始決定後に競売されるまでの管理費等を支払うことができる場合があります。その場合、管理組合は自己破産を受けた区分所有者に対して、競売されるまでの毎月の管理費等を請求するのが良いでしょう。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2009年8月掲載

競売落札者から前所有者の少額訴訟判決文の交付要求を受けたとき

理事長をしています。管理費等の滞納者を少額訴訟で訴え勝訴判決を得ている区分所有権が競売に掛かり、落札者から少額訴訟の判決文の交付を要求されました。判決文には被告(前所有者)の氏名や住所も記載されていますが、要求に応じても問題はないでしょうか。

 競売による落札者は前所有者の特定承継人であり、当該区分の当事者に当たります。したがって落札者に対し少額訴訟の判決文を交付しても問題はありません。また、前所有者による管理費等の滞納分を新所有者が支払った場合、新所有者はその支払額を前所有者に請求する権利を有し、前所有者の連絡先を知る正当な利害関係人であるため、判決文における被告(前所有者)の氏名を伏せる必要もありません。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2009年11月掲載

専有部分の所有者と登記簿上の所有者が異なる場合の管理費等の請求について

理事長をしています。管理費等の滞納者A氏に対し訴訟を提起するため登記簿を取得したところ、登記簿上の所有者はB氏となっていました。訴訟の申立てはA氏・B氏のどちらを相手に行えばよいですか。また今後の管理費等はどちらに請求すべきでしょうか。 ※A氏は管理組合にB氏より所有権を譲り受けた旨の届出をし、管理費等を支払った実績もあります。

 管理費の支払義務は登記の有無に関わらず、真の所有者にあります。
 本問では、管理組合に組合員としての届出書の提出も、管理費等の支払もA氏によってなされていることから、当該区分の真の所有者はA氏であるといえます。したがって、管理組合が訴訟にて管理費等の滞納額の支払を請求する相手方(被告)はA氏になります。また、今後新たに発生する管理費等についても引き続きA氏に請求していけばよいでしょう。
 ちなみに、訴訟の申立ての際に被告が該当区分の所有者であることを証するため、登記簿の提出が必要ですが、本問においては、登記簿に添えてA氏から管理組合に提出された所有権を譲り受けた旨の届出書を提出する必要があります。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2009年12月掲載

前所有者が滞納した管理費等を新所有者に請求できるか

理事長をしています。マンションの売買契約の際、従前の管理費等の滞納額は前所有者が支払う旨の特約がある場合、管理組合は新所有者に対して前所有者が滞納した管理費等を請求できないのでしょうか。

 マンション管理費等の滞納があった場合、区分所有法では管理組合は新・旧いずれの区分所有者に対しても請求することができると定められています(区分所有法第八条)。
 本問のように、新・旧所有者間で取り交わした売買契約書に特約の記載がある場合においても、これはあくまでも新・旧所有者の当事者間の約定に過ぎず、区分所有法の定めにある管理組合の権利を制限することはできません。したがって前所有者が自らの滞納額を支払わない場合においては、管理組合は新所有者に対して請求を行うことができます。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

1995年10月掲載

滞納している区分所有者が亡くなった際の管理費等の請求について

理事長をしています。マンション管理費等を滞納している区分所有者が亡くなられました。今後の管理費等の請求について管理組合はどのように行えば良いですか。

区分所有者が亡くなられた場合、今後の管理費等の請求方法は相続人がいらっしゃるかどうかで対応が異なります。
  • (1)相続人がいる場合
  •  亡くなられた区分所有者に相続人がいる場合には、相続人に対して滞納管理費等を請求することとなります。相続人が複数のときには、相続財産の分配比率に応じて請求します。ただし、特定の相続人が管理費等全額の支払を承諾した場合には、その方へ全額を請求することは可能です。
  • (2)相続人がいない場合
  •  相続人がいない場合には、管理組合は裁判所に対して相続財産管理人の選任を申し立てることができます。相続財産管理人による相続財産の整理は競売で換価するのが一応の原則とされており、マンションの管理費等は競落人に対して滞納管理費の請求を行っていくこととなります。
 注意すべきは、時効の成立です。マンション管理費等の定期性債権は五年で時効が成立します。区分所有者が亡くなられた場合にも時効は中断しないため、速やかに相続人に対して滞納管理費の請求を行わなければ、管理組合は大切な債権を失うこととなりますので十分な注意が必要です。
 例外として、裁判所にて相続財産管理人が選任されたときには、選任後の六カ月間は時効が停止されます。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2010年6月掲載

勝訴判決を得た滞納管理費等について再度訴訟を提起できるか

理事長をしています。管理費等の滞納者に対して訴訟を起こし、勝訴判決を得ましたが、いまだに滞納管理費等が支払われず、さらに訴訟後に新たに発生した管理費等も納入されません。再度訴訟を提起することは可能ですか。

過去の訴訟後に新たに発生した滞納については、改めて訴訟を提起することは可能ですが、すでに判決を得ている滞納額が支払われないことを理由に再度提訴することはできません。
 本問のように、判決後も滞納管理費が支払われないときには、管理組合は勝訴判決(債務名義)に基づいて裁判所に強制執行を申し立てることで、滞納者の次のような財産を差し押さえることが可能です。
  • (1)銀行口座の差し押さえ
  • (2)家賃収入の差し押さえ
  • (3)給与所得の差し押さえ
  • (4)不動産の差し押さえ
 滞納者の所有する銀行口座や、家賃収入の有無、給与所得については、これらに関する滞納者の情報が得られれば差し押さえの申し立ては問題なく受理されますが、不動産の差し押さえは、抵当権設定や税金の滞納などがある場合には申し立てることができない場合もあります。これは、差し押さえという行為は、債権回収の目的のために設けられた制度であり、管理費等の債権に優先される抵当権や税金滞納がある場合には、管理組合が差し押さえを行う目的が果たせない場合があるからです。
 前述の強制執行のいずれも行えない場合には、総会の決議に基づいて、共同の利益違反者に対する措置として、滞納者が所有する区分の競売を申し立てることが可能です(区分所有法第五九条)。
 いずれにしても、滞納額の増大化や滞納期間の長期化は、管理組合にとって手続きが煩雑となるばかりでなく、マンション全体の資産価値にも悪影響を及ぼしかねません。事態が複雑または深刻化する前に、早めの対応をとることが大切です。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2010年11月掲載

管理費等の滞納分について前所有者に請求できるか

競売で分譲マンションの一区分を購入しました。前所有者の管理費等滞納分について管理組合から請求がきたので、管理組合に納入しました。私が支払った管理費等の滞納分を、前所有者に請求できるでしょうか。

 新所有者が前所有者の滞納管理費等を管理組合に納入した場合、新所有者は前所有者に対して求償することが認められています(東京高裁判決 平成一七年三月三〇日)。
 ただし、前所有者が破産している場合は、破産法に基づく免責が適用されます。
  • (1)滞納管理費等が免責される場合
  • ・破産手続き開始決定前に発生した滞納管理費等は、免責されます(破産法第二条第五項に定める「破産債権」に該当します)。
  • ・競売物件が破産管財人の管理下にある期間に発生した滞納管理費等は、免責されます(破産法第一四八条第一項第二号に定める「財団債権」に該当します)。
  • (2)滞納管理費等が免責されない場合
  • ・競売物件に余剰価値がない等の理由で破産管財人が財産放棄し、競売物件が破産者の財産に戻った場合、それ以降に発生した滞納管理費等は、免責されません(破産法第七八条第二項第一二号に定める「自由財産」に該当します)。
 よって、新所有者より破産した前所有者に求償できるのは、上述の(2)に該当する滞納管理費等に限られますので、前記所有者が破産をしている場合は注意をしてください。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2012年4月掲載

駐車場使用料金滞納者の駐車車両を撤去するには

理事長をしています。マンションの駐車場契約者(使用者)が、駐車場使用料を滞納しており、督促しても入金がありません。駐車場使用契約書において、使用料の滞納があった場合は契約を解除することができる旨が定められているため、使用者に対し契約解除を通告し、駐車場を明け渡さない場合には駐車車両をレッカー移動することを検討していますが、具体的にどのような手続きを取ればよいでしょうか。

 駐車場使用契約書の定めに基づいて、使用料の滞納を理由に駐車場使用契約を解除することは何ら問題はありません。この場合、契約解除された使用者は直ちに駐車場を明け渡さなければなりません。
 ただし、契約解除された使用者が駐車場を明け渡さない場合に、管理組合が車両のレッカー移動を行うことは、お勧めできません。といいますのも、このような司法の手続きによらずに自己の権利(敷地利用権)を回復する行為は、民事法の概念で「自力救済」とされ原則禁止されているためです。また、管理組合がレッカー移動を行えば、車両の使用を制限したということで、逆に使用者より損害賠償請求を受ける恐れすらあります。
 お問い合わせのケースでは、次のような手続きをとればよいでしょう。
  • (1)駐車場使用契約書に基づき、駐車場契約解除を通告する。
  • (2)区分所有法第五七条(共同の利益に反する行為の停止等の請求)第一項の規定に基づき、使用者に対し駐車場の不当使用行為の停止を要求する。
  • (3)区分所有法第五七条第二項の規定に基づき、使用者に対する駐車場明け渡し請求訴訟を提起する。
  • (4)裁判で債務名義(勝訴判決)を取得後、裁判所にレッカー移動等による車両の排除(強制執行)を申請する。
 実際に手続きを進める場合には、管理会社や法律事務所等に相談しながら進めていくのがよいでしょう。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2012年6月掲載

水道料金滞納者への給水を停止するには

理事長をしています。当マンションでは、管理組合が水道局と一括契約をしてマンション全体で使用する水道料金を管理組合より支払い、各住戸には使用量に応じて管理組合が請求する方法をとっています。ところが、ある住戸が水道料金を滞納し、再三の督促にもかかわらず支払わないため、給水を停止することを検討しています。給水を停止するにはどのような手続きが必要でしょうか。

 水は人の生活に不可欠であるため、その供給を停止することは非常に慎重な対応が求められますし、安易に供給停止を行えばその行為が権利の濫用とみなされ、逆に管理組合が損害賠償請求を受ける可能性があります。
 過去の判例によりますと、管理組合が水道料金滞納者への措置として給水を停止する行為が権利の濫用とみなされた事例があり、その判例によれば、「他の方法によることが著しく困難か、実際上効果がない場合」であることを要求しています。そのためには、概ね次の手順を踏む必要があり、この手続きによる水道料金の回収が不可能だった場合に、初めて給水の停止が可能となるかもしれません。
  • (1)滞納者に対し粘り強く(少なくとも半年以上)督促をする。
  • (2)訴訟等の法的手段により、債務名義(勝訴判決等)を取得する。
  • (3)債務名義(勝訴判決等)に基づく財産の差押を実行する。
 また、管理規約に「水道料金の滞納者に対し給水を停止することができる」旨を定められていても、上記の手続を踏むことが必要です。
 このように、給水を停止するためには大変な労力を要しますので、水道料金の滞納が始まった早い時点で、滞納者の感情的な反発を招かないように、滞納者の水道料金を他の区分所有者が立て替えるシステムであることを説明などして、早期に回収に努めることが肝要です。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2012年10月掲載

管理費滞納者の役員資格を制限することは問題ないか

理事長をしています。当マンションでは、管理規約を変更して「管理費の滞納者は管理組合の役員に就任することができない」と規定することを検討しています。法律的な問題はないでしょうか。

 区分所有法では、管理組合の役員資格等に関する規定はありません。したがって管理組合の役員の資格・選任方法・任期等に関する定めは、各マンションの管理規約により任意で定めることとなります。
 ただし、定めた内容が一部の組合員に対して極めて有利または不利なもので、適正さや公平性を著しく欠くような規定は、「公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする」(民法第九〇条)との規定に照らして、法的に無効とされるおそれがあります。
 本問のように、管理費を滞納した組合員が役員に就任することができなくなる旨の定めを設けることは、組合員の権利の一部を制限することになります。管理費を一カ月滞納した場合に、役員就任資格を剥奪することは行きすぎた運用であるといわざるを得ませんし、一方、役員就任中に一カ月滞納した場合には、役員就任資格がなくなりかねず、新たな役員を選任する必要も生じて、管理組合の業務にも多大な影響を及ぼすことも予測されます。
 組合総会において、長期間管理費を滞納されている組合員が役員に選任されるようなことは一般的には考えられませんし、このような定めを設けると、役員選任を巡って法的紛争を生じかねませんので、管理組合の運営上重大な支障が生じるなどの特別な事情がない限り、このような規定を設けることは適正でないでしょう。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2013年2月掲載

高額滞納者に対する共用部分の一部使用制限について

リゾートマンションの理事長をしています。管理費の高額滞納者に対してマンション内のプール施設の使用禁止を検討しているのですが、理事会の決議をもって使用禁止とすることに問題があるでしょうか?当マンション管理規約では、「理事長は、理事会の決議を経て、義務違反者に対し必要な勧告又は指示若しくは警告を行うことができる」という定めがあります。

 共用部分の使用方法を定めることは、管理組合の自治に委ねられている事項であり、エントランスホールの使用禁止といったような公序良俗に反するものでなければ、使用禁止について定めることは問題ないでしょう。
 しかしながら、共用部分の使用禁止については、前もって管理規約等にて定めておくことが一般的です。今回のケースでは、総会にて「○カ月以上の管理費を滞納する者はプール施設を利用できない」という使用細則を制定する決議をし、使用細則を定めておくことが求められます。
 なお、当然ながら理事会としてはプール施設の利用を禁止する前に、滞納者への督促を十分に行う等、滞納金の回収に向けた努力を行うことが必要です。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2013年4月掲載

高額滞納者に訴訟に必要な弁護士費用等の支払いを請求できるか

理事長をしています。管理費等の高額滞納者に対し、訴訟を起こすことを検討しています。訴訟に必要な弁護士費用等の支払いを滞納者に対して請求したいと考えていますが可能でしょうか。  当マンションの規約は標準管理規約に準じています。

 標準管理規約では第六〇条第二項に「組合員が前項の期日までに納付すべき金額を納付しない場合には、管理組合は、その未払金額について、年利○%の遅延損害金と、違約金としての弁護士費用並びに督促及び徴収の諸費用を加算して、その組合員に対して請求することができる」と定めています。
 また、違約金として弁護士費用等の支払いを滞納者に対し求める事案として、『管理規約で管理組合が未払金につき「違約金としての弁護士費用」を加算して組合員に請求できると規定しており、同規定は合理的であり違約金の性格は違約罰と解するのが相当であるから、違約金としての弁護士費用は管理組合が弁護士に支払義務を負う一切の費用と解される』と、管理組合の請求を全て認めた判例もあります。
 今回のケースでは、規約が標準管理規約に準じていることから、弁護士費用等を滞納者に対して請求することは可能と考えます。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2015年3月掲載

競売の配当金の取り扱いについて

管理組合の理事長をしています。この度、管理費等の滞納者の住戸が競売にかけられ、配当要求をしていたところ、裁判所より落札者の決定の連絡があったため、特定承継人である当該落札者(以下、「新区分所有者」とします)に対し滞納管理費等を請求しました。その後、裁判所から配当要求に伴う債権計算書の提出を求められたため、その時点での滞納管理費等の額を記載したものを裁判所に送付したところ、同時期に新区分所有者より滞納管理費等の全額が管理組合口座に入金されていたことが判明しました。その後、裁判所から債権計算書に記載した額の通りで、管理組合に配当されるとの連絡があったのですが、受領した配当金の取り扱いをどのようにしたらよいでしょうか。

本件では、配当金が確定していない段階で管理組合より新区分所有者へ滞納管理費等を請求していますが、本来は配当金の確定をもって、新区分所有者に対する債権が確定することになります。

新区分所有者が支払った滞納管理費等は債権確定前であることから、いわゆる仮払金として支払われたものといえます。

よって、管理組合は、配当金が確定し、裁判所からの配当金を受領した上で、新所有者に対して現在の滞納管理費等から配当金額を差し引いて請求すべきですので、新区分所有者に配当金額と同額の金額を仮払金から返還することにし、仮払金を清算することになります。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2015年10月掲載

敷地内の放置車両の撤去について

管理費等の長期滞納者の所有する専有部分が半年前に競売により落札されましたが、マンション敷地内の駐車区画に旧区分所有者(以下、「旧所有者」とします。)の車両(ナンバープレートがついている普通自動車)が放置されたままとなっています。旧所有者に放置車両の移動を要請しようとしましたが、所在不明で連絡がとれません。放置車両を撤去したいのですが、どのような手順で進めればよいでしょうか?なお、管理組合と旧所有者との間で取り交わした駐車場使用契約は、本マンションに区分所有権を有することを前提としており、区分所有権移転時に失効しています。

 駐車場使用契約が失効しており、放置車両は駐車区画を不法に占拠していることとなります。このような車両を撤去するための手順を例示します。
  • (1)旧所有者に対し『駐車区画明け渡し並びに未払い管理費等および不法占拠に対する損害金の支払い』を請求する訴訟を提起します。
     旧所有者は所在不明ですので、公示送達の手続によって、訴状の送達の効力を発生させることとなります。
  • (2)勝訴判決を取得します。
  • (3)車両の差押え(競売手続き)について裁判所に申し立てます。
  •  損害金支払いの勝訴判決に基づいて、放置車両の競売を申し立て、放置車両の価値が競売手続きの費用を上回る場合、競売手続きが進められ、落札者が放置車両を落札して持ち帰ることとなり、落札者がいなければ管理組合が落札し、その後売却や廃棄することで目的が達成されます。
     放置車両の価値が競売手続きの費用をまかなうことができないと判断された場合、裁判所は競売手続きを取り消します。
    (以下、競売手続きが取り消された場合)
  • (4)駐車場明け渡しの強制執行を裁判所に申し立てます。
  •  明け渡しの勝訴判決に基づいて、明け渡しの強制執行を申し立てますが、執行官に放置車両について「無価値」であるかどうかを判定してもらいます。
     競売が取り消されたことに照らして、執行官が「無価値」と判定されると思われ、その無価値物の処分は債権者(管理組合)に委ねるのが一般的です。
  • (5)放置車両の廃棄処分を行います。
  •  廃車手続きが必要ですので、専門業者に手続きを依頼し、放置車両を引き取ってもらうことで目的が達成されます。
 これらの手続きは、非常に煩雑で、ケースによって必要な対応も異なり、かつ、多くの時間と手間を要しますので、弁護士等の専門家に相談されることをお勧めします。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2015年11月掲載

59条競売とは

理事長をしています。管理費の高額滞納者に対して訴訟を行い、確定判決を得ましたが、滞納金は支払われず、差し押さえることのできる財産もなく困っています。このような場合に59条競売という方法があると聞いたのですが、どのようなものでしょうか。

 区分所有法第59条は、建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をする区分所有者に対して、当該区分所有者の区分所有権の競売を請求することができる旨を定めています。
 この競売のことを一般的に59条競売といいます。
 59条競売とは、区分所有権を競売により剥奪することで区分所有者の迷惑行為を排除する最終手段といえる方法ですが、実際にこれを行うためには、次の要件を満たすことが要求されます(個々の事例により裁判所が可否を判断します)。
  • (1)区分所有者の共同生活上の障害が著しいこと
  • (2)59条競売以外の方法では、その障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であること
 さらに、総会の特別決議(区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数の決議)が必要とされており、その際には、当該区分所有者に弁明の機会を与えなければなりません。
 なお、管理組合が管理費を滞納している区分所有者に対し訴訟を提起し、強制執行を行っても滞納管理費を回収できる見込みがない場合、59条競売の対象となり得ると考えられます。裁判手続きを経て59条競売により強制的に区分所有者を変更し、新たな区分所有者より滞納管理費を回収できる可能性があります。
 滞納者に対して59条競売を行うための要件(上記(1)(2))に合致するか否かの判断には、滞納期間、滞納額、過去の請求経緯等が影響します。また、競売が不成立となっては元も子もありませんから、競落人の見込みも付けておく必要があるでしょう。実際に行う場合は弁護士等に相談して進めるとよいでしょう。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2016年12月掲載

滞納管理費等の充当先の指定について

理事長をしています。私どもの管理組合では、管理費等(管理費、修繕積立金、駐車場使用料)の滞納者が滞納管理費等の一部を支払った場合、支払期限の古いものから充当する運用としていますが、ある高額滞納者が滞納管理費等の一部を支払った際に「今回の支払いは駐車場使用料の滞納分です」と充当先を指定してきました。管理組合は、これに従わなければならないのでしょうか。なお、当管理組合の管理規約は、標準管理規約に準じています。

 債務者が債権者に対して、債務の一部を支払った場合、その充当方法については、以下の順位で定められることとなります。
  • 第1順位 合意による充当
  • 第2順位 費用・利息への優先充当(民法第491条1項)
  • 第3順位 当事者の一方による指定による充当(民法第488条)
  • 第4順位 法定充当(民法第489条2項・3項)
 第1順位の「合意による充当」とは、債務者と債権者との合意により充当方法を定めるものです。民法に明文の規定はありませんが、契約自由の原則によって最優先順位となります。
 第2順位の「費用・利息への優先充当」とは、まず費用(例えば、督促費用・訴訟費用等)、ついで利息(遅延損害金)に充当し、残額を元本に充当する方法です。
 第3順位の「当事者の一方による指定」とは、当事者の一方(第1次に債務者、第2次に債権者)が充当方法を指定するものです。
 第4順位の「法定充当」とは、まず、債務者にとって利益の多いものから充当し、債務者にとっての利益が同一の場合は、支払期限の古いものから充当する方法です。
 本問のケースでは、滞納管理費等の中に督促費用や遅延損害金等が含まれている場合は、まずこれらに充当され、充当後の残額を滞納者の指定により駐車場使用料に充当することとなります。
 まれなケースではありますが、滞納管理費等の充当順位について滞納者と合意できない場合、管理組合は特殊な滞納管理を余儀なくされるため、事務が煩雑になることが予想されます。これを回避する方法としては、管理規約に充当順位を明記すること等により、あらかじめ管理組合と組合員とで充当順位の合意をしておくことが考えられます。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2017年2月掲載

長期滞納者に対する訴訟について

理事長をしています。当マンションには、滞納期間が4年近くになる長期滞納者がいます。管理会社より、再三の電話・訪問督促によっても回収が見込まれず、債務承認もしないため、管理費等の時効が5年であることを考慮して、管理費等の支払を求める訴訟を提起することについて提案がありました。このまま訴訟を提起しないで、滞納管理費が時効を迎えた場合、私の責任が問われる可能性はあるのでしょうか。なお、当マンションの管理規約は標準管理規約に準じています。

 管理組合の理事長は、区分所有法に定める管理者とされており(標準管理規約第38条第2項)、管理者は委任に関する規定に従うこととされていますので(区分所有法第28条)、理事長には、善管注意義務があるといえます(民法第644条)。
 そして、理事長は、管理組合の役員として組合員のため誠実にその職務を遂行しなければなりません(標準管理規約第37条第1項)。
 さらに、管理組合は、納付すべき金額を納付しない組合員に対し、督促を行うなど、必要な措置を講じなければならないとされています(標準管理規約第60条第3項)。
 これらにより、理事長が滞納者に対する訴訟提起を行わず、滞納管理費が時効を迎え、管理組合の財産が毀損された場合、他の組合員より理事長の責任を問われる可能性は否定できません。
 滞納者に債務を承認させるなどの方法で時効の中断を図ることはできますが、債務を承認しない場合や支払計画通りに支払われない場合などに、管理組合が一方的に時効を中断できる手段は訴訟(支払督促含む)しかありません。
 管理費等の滞納訴訟は全国に無数の事例があり、ほとんどの場合債務の存在について争いになることはなく口頭弁論も1回で終結するなど、極めて「事務的に」進捗する訴訟といえます。訴訟の提起は理事会決議で行うことができます(標準管理規約第60条第4項)ので、本件の場合、粛々と訴訟提起に向けた手続きを進めるべきでしょう。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2017年5月掲載

前所有者が滞納した外部所有者負担金を新所有者に請求できるか

私が住んでいるマンションでは、マンションに居住しない区分所有者は、役員になれないこと、また、その場合、外部所有者負担金を管理組合に納入しなければならないことが管理規約に定められています。このたび、外部所有者負担金を含む管理費等を滞納している区分所有者が、所有している部屋を売却したようです。この場合、当該部屋の買主に対して、外部所有者負担金を請求できるのでしょうか。

 区分所有法(以下、「法」という)第19条は、管理費等の負担については、共用部分の持分割合とすること以外に、規約に定めることにより別段の定めをすることができることとしています。
 そして、当該マンションでは、管理費等として外部所有者負担金の支払義務が規約に定められているとのことです。
 そこで、当該住戸を購入し、新たに区分所有者となった買主は、法第8条の「特定承継人」に該当し、滞納された管理費等の弁済がないまま区分所有権が譲渡された場合には、債務者たる区分所有者の特定承継人に対して、滞納されている管理費等の請求を行うことができることを定めています。
 したがって、原則、法第8条に基づいて特定承継人に当該住戸の売却時に滞納されている管理費等を請求することができます。
 しかし、法第8条に基づく特定承継人に対する債権の行使には、その債権に一定の要件が認められることが必要とされていて、過去の判例においても、特定承継人への請求が認められなかったケースもあります。
 一定の要件としては、当該債権の請求が管理規約もしくは集会の決議に基づいていること(債権発生の根拠)、当該債権が建物またはその敷地もしくは付属施設の管理または使用に関する区分所有者相互間の債権であること(債権の規約事項)、当該債権の付従性(支払債務の承継に関する管理規約の規定)があること等、これらの要件を総合的に判断して請求の当否が決定されることになります。
 場合によっては、当該債権の発生根拠が認められない、当該債権が規約事項として認められないなどと判断され、特定承継人への請求が認められないことも考えられます。
 以上のことから、特定承継人への請求が認められないケースがあるというリスクを、管理組合として十分に理解した上で、管理会社等と協力し、滞納が長期化しないための取り組みを進めることが望ましいでしょう。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2019年9月掲載

管理費等の滞納に関する時効の定めについて

私の住んでいるマンションで管理費を滞納している区分所有者がいますが、今年の4月に民法が改正となり、時効に関する定めの見直しがなされたと聞きました。どのような変更があったのでしょうか。

 民法の制定以来約120年ぶりに債権に関する部分が抜本的に改正となり、管理費等の滞納に関しては「時効」について変更がありました。
 従来、時効に関しては、債権の種類によって時効期間が異なっていましたが、債権の区別は合理性に乏しく煩雑で分かりにくいため、今回の改正によって、時効期間が統一されました。これまで、マンションの管理費は一般的な債権と異なる「定期給付債権」として区別され、債権者である管理組合が「権利を行使できる時から5年」までに権利を行使しない場合は短期消滅時効が適用され時効が成立していました。今回の改正により、マンションの管理費も一般的な債権と同様の扱いとなり、改正後の民法における消滅時効である、「権利を行使することができることを知った時から5年」または、「権利を行使することができる時から10年」の期間、権利を行使しないことにより時効が成立することとなりました(民法第166条)。
 このようにマンションの管理費に関する時効について民法の改正がなされましたが、一般的にマンションの管理費について、管理組合が「権利を行使することができることを知った時」とは、通常、債権が発生した時点と解されるため、改正前の「権利を行使できる時」と大きな変更はないことになります。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2020年6月掲載

2020年4月の民法改正は遅延損害金に影響するのか

 2020年4月の民法改正により法定利率が下がったと聞きました。滞納している管理費等に対する遅延損害金にも影響があるのでしょうか。

 2020年4月の民法改正によって、法定利率は従来の年5%から年3%(民法第404条第2項)に変更となっています。しかしながら、以下の理由により、マンションの管理規約の内容によっては、管理費等の滞納金額に対する遅延損害金に影響がでることはありません。
 法定利率とは、民法第404条第1項に「利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、その利息が生じた最初の時点における法定利率による」とあるように、法定利率とは別に利率を定めていない場合に適用される利率を指します。別に定めている利率(約定利率)がある場合にはその利率が優先して適用されます。
 マンション標準管理規約の第60条第2項において「組合員が前項の期日までに納付すべき金額を納付しない場合には、管理組合は、その未払金額について、年利○%の遅延損害金と、違約金としての弁護士費用並びに督促及び徴収の諸費用を加算して、その組合員に対して請求することができる」として、約定利率を定める記述があることから、管理規約で遅延損害金の約定利率を設定しているマンションも多くあり、その場合、法定利率が下がっても遅延損害金の金額には影響がでることはありません。
 したがって、管理規約で遅延損害金の約定利率を定めていないマンションの場合は、民法改正の影響を受けることがあることから、注意が必要でしょう。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2021年1月掲載

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