マンション管理に関する法律トラブル相談室総会・理事会の運営

管理組合の理事会の権限は

管理組合の理事会はどんな権限を持っているのですか。

理事会の職務権限は管理規約の中で定められています。一般的な規約では「総会上程議案の審議」や「総会で決議された事項、総会で理事会に付託された(委任された)事項」などの具体的業務の執行を行う機関です。
 区分所有法には集会(総会)についての定めはありますが、理事会についての定めはありません。区分所有法では「区分所有者は全員で管理組合を構成しており、集会を開いたり規約を定めたり管理者を置くことができる」としています。また、組合の運営上重要な事項(規約の変更、共用部分の変更、義務違反者に対する措置など)についてはすべて集会(総会)の決議を必要としています。このように、管理組合(組合員)に関係する重要な案件については、組合員の全員参加による集会(総会)の意思決定が求められますが、これを集会主義といって、管理組合の運営のあり方の基本となるものです。
 そこで、理事会は、この集会主義の精神を尊重し、管理組合の運営方針を検討、策定していく重要な執行機関と位置づけることになります。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

1992年2月掲載

移転先住所の届について

専有部分を賃貸している区分所有者です。引越しをした際、うっかり住所変更届を管理組合に届けるのを忘れてしまいました。そのため、集会開催の通知は来ませんでした。管理組合は、賃借人に尋ねるなどして、移転先を調べてくれればいいのに。

管理組合に、区分所有者の移転先を調べる義務はありません。区分所有法第三五条三項に、「区分所有者が管理者に対して通知を受けるべき場所を通知したときはその場所に、これを通知しなかったときは区分所有者の所有する専有部分が所在する場所にあててすれば足りる」としています。したがって旧住所に集会開催の旨を郵送し、「転居先不明」として返送されてきたとしても、管理組合の責任はそれで果たしたこととなり、それから先は個々の管理組合員の問題となります。
 通知場所の届け出制は、管理者(理事長)の事務処理の便宜のため必要とされているものですから、本問のように、集会に参加できなかった不利益は、正確な通知場所を届け出なかった区分所有者が負わなければいけません。
 通知場所変更の届け出は早めにしたいものです。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

1990年1月掲載

海外居住者の代理人設置について

区分所有者の一人が、部屋を第三者に賃貸したまま海外に居住しています。日本企業の海外進出が進むなか、こうしたケースは今後増えていくと思います。集会の通知など不便ですので、管理規約に「海外居住者は国内に代理人を置くこと」と定めてはどうかと考えています。許されるでしょうか。

本来、区分所有者が代理人をたてるか否かは本人の自由意志に任せられるものであり、規約によって義務化される性格のものではありません。また、将来どのような案件の議案が集会に上がるかも分からないのに、代理人に対して包括的な代理権を与えることは危険な行為です。あくまでも、代理権は個別の案件について授与されるべきものです。
 以上のことから、集会に際して、海外居住者である区分所有者にあらかじめ代理人の国内設置を義務づけることは、許されないと思われます。
 区分所有者が、海外に居住することにより、集会に限らず、日常の連絡事項についても、スムーズに行われない恐れはあります。国内における連絡場所を管理組合に届けるようにするなどの対策を講じられてはいかがでしょう。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

1990年2月掲載

委任状と議決権行使書の違いについて

総会の案内がきました。私は出席できないので、委任状か議決権行使書のいずれかを選ぶことになっていますが、それぞれどういう意味をもつものですか。

総会の決議は、代理人又は書面(議決権行使書)によっても行使することができます。委任状とは、代理人を選任したことを証する書面のことです。誰を代理人に定めるのか記載していない、いわゆる白紙委任状は無効とされます。また管理規約では、「代理人は三親等以内の血族又は配偶者に限る。」などと代理人の選任に制限を加えているのが通例です。皆さんのマンションの規約を今一度確認してみてください。自分の意見を代弁し、議決権を行使してもらう代理人の選定は、くれぐれも慎重に行いたいものです。
 一方、議決権行使書とは、本人が直接議決権を行使する書面のことです。総会の各議案毎に、「賛成」又は「反対」の意見を明記して、総会の招集者にあらかじめ提出しますと、総会に出席して議決権を行使したことと同様に扱われます。代理人の制限が無い場合には、特定の者への委任を強要したりして、委任状が票集めに利用され問題となる場合がありますが、議決権行使書を用いれば、本人の意志を確実に伝えることができます。
 総会は皆さんのマンションの管理・運営についての重要な意志決定がなされる場です。出席できない場合は委任状又は議決権行使書を提出し、必ず総会の決議に参加してください。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

1992年11月掲載

死亡された区分所有者の議決権はどうなるか

総会を一週間後にひかえていますが、区分所有者の方が死亡され、相続の手続きが終わっていないとのことです。このような場合、当該区分所有者の議決権は誰が行使するのでしょうか。

法律的には区分所有者の建物を誰が相続するかによって、議決権者が決まります。しかし、一週間後にひかえる総会の日までに遺産分割協議ができるとは思えません。そこで、実務的には以下のような方法をとればよいといえます。
 まず、相続人の一人(なるべく被相続人の同居の親族や近親者がよい)に連絡をとり、相続人のどなたかに代表して当該議決権を行使していただきたいと伝えます。この場合に、代表者となる方には他の相続人の委任状をとりつけるのが理想的ですが、管理組合としてはそこまで厳密に追求する必要はなく、代表者から他の相続人の委任をとりつけた旨の報告を受ければ、全相続人の代表者として認め、議決権を行使してよいと考えられます。
 ただし、この相続の対象となっている区分所有権にかかわる議決や、代表者の一票が決定的な一票で議決全体を左右する場合は、少なくとも相続分の割合で過半を有するよう、委任状をとりつけておく必要があります。この点は議長の判断となるところでしょう。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

1998年5月掲載

部屋を共有している場合の議決権は

マンションの部屋を妻と二人で共有しています。この場合、二人が総会に出席をしてそれぞれの意見を述べることはできるのですか。また、議決権数及び区分所有者はどのように数えられるのですか。

マンションの一室を数人で共同購入したり、区分所有権者が死亡して数人の相続人が共同相続した場合など、専有部分を数人で共有することはよくあることです。
(1)議決権行使者は一人
 ところで、区分所有法では、専有部分が数人の共有に属するときは、共有者は、議決権を行使すべき者一人を定めなければならない(区分所有法第四〇条)と規定しています。
 そこで、共有者が議決権を行使するには、行使する者一人を指定して、届出をしなければなりません。
 また、議決権行使の前提となる意見陳述権、さらには総会への出席権についても、同様に解しています。
 従って、夫婦二人が出席をして異なった意見を述べることはできません。
 共有者は議決権の行使をよく話し合い、議決権を行使する者を誰に指定するかを決めることになります。
 なお、共有者は議決権者を自由に指定できますが、この指定を明らかにするために、共有者連名の議決権行使者指定の書面を管理者に届出ておくのが適当です。
(2)総会招集の通知について
 また、共有者の場合の総会招集の通知については、議決権を行使すべき者一人に対して通知すればたりますし、その指定がない場合は、共有者の一人にすればたります(区分所有法第三五条二項)。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

1994年12月掲載

夫婦共有で二戸所有している場合の「区分所有者数」について

私たちは同一マンション内で夫婦共有の部屋を二戸所有しています。この場合は総会における「区分所有者数」について、どのように扱われることとなるのでしょうか?

区分所有法第四〇条には「専有部分が数人の共有に属するときは、共有者は、議決権を行使すべき者一人(本欄では、以下「代表者」といいます)を定めなければならない。」と定められており、共有に属する部屋では代表者として共有者の中から一人を管理組合に届け出ることとなり、届け出られた代表者の人数が「区分所有者数」となります(図参照)。
 つまり、問いのケースでは「夫」または「妻」のどちらかが一人で二戸すべての部屋の代表者となった場合には「区分所有者数」は「一人」となり、代表者を「夫」と「妻」で分けた場合は「二人」となります。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2005年1月掲載

管理組合の総会での賃借人の議決権は

管理組合の総会に賃借人も参加させ、所有者と同じく議決権を与えることはできませんか。

管理組合はマンション所有者の団体であって、居住者の団体ではありません。マンション所有者は全員で敷地や建物の共用部分といった大切な共有財産を自分たち自身で管理するために管理組合を構成しているのです。総会はその共有財産の管理・運営・処分まで審議し決定する重大な席です。所有者としての権利を行使する議決権が、単にマンションを借りているだけの賃借人に与えられないのは当然のことなのです。
 ただし、総会の議題がマンションの使用方法などで賃借人にも影響する内容である場合に限って賃借人も総会に出席して意見を述べる(この場合でも議決権はありません)ことができます。
 さて賃借人といえども共同生活の秩序を維持するという点ではマンション所有者と同じ立場ですから、一定のルールを守らなくてはいけません。その主な内容は以下のとおりです。
(1)建物の共用部分に穴を開けたり、勝手に変更を加えてはならない。
(建物保存に関する有害行為禁止)
(2)騒音、悪臭、振動を発したり、共用部分を勝手に使ったりして他の居住者に迷惑をかけてはならない。
(建物使用又は管理に関し共同の利益に反する行為の禁止)
(3)建物の使用方法について規約や総会で決まったことは守らなくてはならない。
 

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

1991年9月掲載

破産した区分所有者の議決権は誰が行使するか

破産した区分所有者がいるのですが、この人の議決権は誰が行使することになるのですか?また、競売中の場合には誰が議決権を行使するのですか?

議決権の行使については、区分所有者が破産した場合には破産管財人が、また、競売中の場合にはその区分所有者が行うことになります。
 区分所有者が裁判所から破産宣告を受けると、破産者が持っている権利の管理処分権限はすべて裁判所が選任した破産管財人に移ることになります(破産法)。よって、議決権の行使についても破産管財人が行うことになります。
 ただし、これは法的に破産した場合に限ってのことで、たとえば、実態として破産状態にはなっているものの裁判所の破産宣告がなされていないという場合については、区分所有者が依然として議決権をもっています。
 次に、競売中の場合については、破産の場合とは違い、区分所有者の持つ財産を本人が勝手に処分しないようにするための差し押さえはなされます(登記簿にも「差押」と記されます)が、目的物の管理権限は依然として区分所有者が持っています。よって、議決権の行使については区分所有者が行うことになります。
 ただし、競売が終了(所有権移転登記がなされた状態)した場合には、競落人が議決権を持つことになります。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

1998年1月掲載

書面決議の効力は

総会を開かなくても書面で議案の決議ができると聞いたのですが、具体的にはどういうことですか。また、その効力は総会の決議と同じですか。

総会は管理組合の最高の意思決定機関として位置づけられています。しかし、区分所有者の人数の少ないところでは、わざわざ総会を開く必要がない場合も多いと思われますし、区分所有者の人数の多いところであっても、議題によっては議論の余地がなく同意が得られる場合があると思われます。そこで、区分所有法では、「総会において決議すべきものとされた事項につき、『区分所有者全員』の書面による合意があったときは、総会の決議があったものとみなす」という規定が置かれています。これを書面決議と呼んでいます。これとは別に、集会を開いたうえで、議決権を書面で行使する議決権行使書の制度がありますが、これは書面決議とは異なるものです。
 書面により決議することができる事項は、区分所有法又は管理規約によって、総会において決議すべきものとされた事項のすべてにおよびます。しかし、「区分所有者全員」の書面による合意が必要ですので、総会を開けば通常の決議で決定することができる事項も、書面決議をするには、「区分所有者全員」の合意が必要となるわけです。総会を開く必要がないといっても、区分所有者全員から書面を集めること自体が非常に困難と思われますので、あまり効率的な方法とはいえないでしょう。
 また、注意すべきことは、書面決議ができたとしても、これによって集会の招集があったものとはみなされませんので、毎年一回の定例集会は招集しなければなりません。
 書面による決議がなされたときは、総会の決議があったとみなされます。したがって、書面による決議は総会における決議と同様の効果を生ずることとなります。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

1995年5月掲載

総会に弁護士同伴で出席できるか

総会で管理規約違反による駐車場使用の差止め請求(議題)をするそうです。私にも釈明したい点は山ほどあります。弁護士に代理として出席してもらうか、できれば同伴で出席したいのですが…。

一般的に区分所有者は自分の代理人を誰にするかを自由に決められる権利をもっています。
 しかし、集団意思決定の必要などから、規約で「代理人の範囲を組合員が法人のときはその構成員、個人のときはその組合員と同居する者か、三親等以内の血族又は配偶者とする」などと定めても許されると考えられています(合理的な範囲であれば)。
 さて問いのケースですが、弁護士であっても前述のような代理人の制限がある場合は代理人とは認められないこととなります。
 次に代理という形ではなく、本人に加えて弁護士も出席して総会で意見を述べるというのは原則として許されません。但し、次のように同伴者の出席が認められる場合があります。
 その一つは、管理規約の中に「組合員のほか理事会が必要と認めた者は総会に出席することができる」という条文があり、あらかじめ理事会の許可を得ている場合です。もう一つは、理事長(総会議長)の許可を得る場合です。理事長自身が集会の主催者として「弁護士を同伴させたとしても議場が特に混乱することもなく、必要性がある」と判断した場合は、たとえ管理規約に右のような条文がなくとも出席が認められます(弁護士以外でも身体障害者の場合の介添人や、外国人の場合の通訳なども同様に、補助者としての同伴が認められます)。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

1993年5月掲載

総会での質問の対処のしかたは

管理組合の理事長をしています。今度の総会で議長を務めるのですが、要領がよくわかりません。総会の場で出た質問について、説明を拒否したり、即答できない場合は調査して後日説明することは認められますか。

 区分所有法では、規約に別段の定めがある場合を除き、通常の総会の議長は管理者である理事長が務めることとされています。総会開催に当たっては、開催日、開催場所、議案の内容について全区分所有者に通知する必要があります。そして、総会の場で決議されるのは、前もって通知されていた事項に限ります。
 本問のケースですが、質問が通知されていた決議に係わる事項に関してのものか、そうでない事項かによって、異なります。
 決議事項に係わる事項に関する質問であれば、提案者たる管理者としては、その目的や必要性など提案理由たる事項について、十分承知しているはずであり、議決権を行使するうえで必要な内容については、答弁する必要があります。仮に、答弁に調査の必要があれば、決議できない事態が生じることもありますから、議決権を行使するうえで、必要な事項(例えば、修繕費用の事前見積り)などは、事前に調査しておくことが必要です。また、管理会社に管理事務を委託している場合には、答弁の補助のために、同席してもらうのがよいでしょう。
 なお、質問と称して意見が述べられる場合があります。これは質問ではないので答弁する必要はありませんが、意見の中にも、議決権を行使するうえで、誤解のある事項などがあれば、誤解を解くように努めるのがよいでしょう。
 前もって通知していた事項に関係のない質問であれば、答弁できるものは回答するのがよいでしょうが、不適当と思った場合には、答弁しないこともできます。また、調査を要するような質問には、調査した後に回答するのがよく、不正確な答弁をして議事を混乱させないためにも、即答しないほうがよいでしょう。その他にも、答弁することにより人のプライバシーや名誉を傷つける恐れのある質問には、答弁を拒否してもよいでしょう。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

1995年8月掲載

総会の決議が個人的に不利益な場合は

今度の総会で二段式駐車場を増設する案が提出されます。増設場所は私の住戸のすぐ側で、増設後は、部屋の中に日光が全然入らなくなります。個人的には反対なのですが、総会で承認されれば私は承諾せざるを得ないのですか。

 

総会の決議は区分所有者全員に対して効力があるのが原則ですが、その決議の結果が特定の区分所有者の権利や専有部分の使用に特別の影響を及ぼすときはその区分所有者の承諾を要する場合があります。
 区分所有法では、次の場合に区分所有者の承諾が必要であると定めています。
(1)共用部分の変更が専有部分の使用に特別の影響を及ぼすとき
(2)共用部分の管理に関する事項の決議が専有部分の使用に特別の影響を及ぼすとき
(3)規約の設定、変更または廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすとき
 以上のような場合、総会の決議を実行させるには、該当する区分所有者の承諾が必要となります。
 ところで「特別の影響を及ぼすとき」とはどの程度のことを表すかについては判断が難しく、一般的には「その決議によって管理組合が受ける利益およびその決議の必要性とその決議によってその区分所有者が受ける不利益を比較し、その区分所有者が受忍すべき限度を超える程度の不利益を受けると認められる場合」とされています。
 問いのケースですが、二段式駐車場を増設することによって自分の部屋に日光が全然入らなくなり、がまんできない程度の不利益を受けることが認められる場合には、前記のケースに当てはまると考えられます。よって、その住戸の承諾が必要であるということになるでしょう。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

1995年9月掲載

定足数に満たず、総会が成立しない場合は

マンションの屋上から雨漏りするため、防水工事をすること、及び全戸から当該工事費用を一時金として徴収するという議案の承認を得るため総会を招集しましたが、定足数に満たず総会が成立しませんでした。工事を行うことはできないのでしょうか。

総会が定足数に満たず不成立であったということですが、総会で否決された訳ではありませんので、再度総会を招集するべきでしょう。なるべく多くの組合員が出席できる日時に開催し、出席できない組合員にも書面による議決権行使をしてもらうよう呼びかけるなどの努力をするべきです。
 それでも定足数に達する見込みの無い場合や工事が緊急を要する場合はどうすればよいでしょうか。民法及び区分所有法には建物の共用部分のような共有物の保存行為はそれぞれの共有者が行うことができると定められています。保存行為とは財産の価格を現状において維持するための手入れ、修繕などの行為です。
 問いのケースでの防水工事は共有物の保存行為に該当すると考えられますので、総会がどうしても成立しない時は理事会の判断で工事を実施することが可能です。また、そうした場合の費用負担ですが、区分所有法の定めにより各区分所有者の共有持分に応じて負担することとなります(規約で管理費の負担割合について別段の定めがあればその割合によります)。
 よって総会で決議されなくても、発生した工事代金を各区分所有者は支払わなければなりません。しかし、よほどのことが無い限り、総会を開催して承認を得るのが最良の方法ですから、全組合員に総会の出席を呼びかけ、総会を開催するべく努力する必要があるでしょう。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

1996年1月掲載

総会決議で可否同数になった場合は

「総会で可否同数になった場合は議長の決するところによる」と管理規約で定めてあるのですが、これは議長が一度議決権を行使した上で、さらに二度目の議決権を行使できるということですか。

この場合、二度目の議決権を議長が行使できるわけではありません。議長としては、最初に区分所有者としての議決権を行使するか、もしくは最初は議決権を行使することなく可否同数となった場合に初めて議決権を行使するかのどちらかとなるでしょう。もし、二度も議決権を行使できるとすると、結果としては一人の区分所有者が二個の議決権を持つことになってしまうからです。
 つまり普通決議においては、議長は区分所有者としての議決権を行使しないで、可否同数の場合のみ議決権を持っていると解されます(議長が最初に区分所有者としての議決権を行使した場合には、その結果がたとえ可否同数になった場合でも、議長決裁権は行使できません)。
 特別決議においては、四分の三以上などの賛成が必要とされているので、議長は最初から区分所有者として議決権を行使するべきでしょう。
 参考までに国会においては、議長は本人の議決権に加えて可否同数の場合の決裁権も持つとされています(憲法、国会法)が、慣行で議長はその客観的公正を保持するためか、議長の職務執行中は議員としての表決に加わっていません。県議会や市議会においては、地方自治法の定めにより、議長は議長としての議決権しか持たないとされています。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

1997年8月掲載

賃借人への総会の通知について

駐車場の増設が理事会で決定され、臨時総会を開いて正式に決定することとなっています。駐車場は二階建の立体式を考えており、一階の住人に採光や騒音などの悪影響を及ぼす可能性もありますが、この場合、賃借人にも総会の通知をすべきでしょうか。

区分所有法の第四四条は賃借人をはじめとする占有者が会の決議につき利害関係を有している場合に、集会に出席して意見を陳述する権利を保障しています。
 この権利が認められるには、二つの要件を満たさなければなりません。一つは、占有者が区分所有者の承諾を得てその専有部分を占有していること。もう一つは、集会の目的である議題に利害関係を有していることです。ここでいう利害関係とは、建物やその敷地、附属施設の使用方法に関わるもの、あるいは占有者に対する専有部分の引渡請求などのケースです。
 本問の場合は、以上の要件を満たしているものと思われます。したがって管理者(通常は規約で理事長)は、区分所有法第三五条の規定に基づいて区分所有者に招集通知を発した後、遅滞なく、集会の日時、場所および会議の目的である事項を建物の見やすい場所に掲示しなければなりません。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

1989年9月掲載

賃借人が総会で意見を述べるのはどんな場合か

賃料に加えて管理費実費を家主へ支払っている賃借人です。総会で管理費の値上げが議題となっている場合、私は総会に出席して意見を述べることができるのでしょうか。

区分所有法(第四四条)は、賃借人など専有部分を区分所有者の承諾を得て占有する者は、「会議の目的たる事項につき利害関係を有する場合」には、総会に出席して意見を述べることができると規定しています。ここで「利害関係を有する」とは、法律上の利害関係がある場合で、事実上の利害関係がある場合は該当しません。
 設問の「管理費」とは、敷地および共用部分の管理に要する経費にあてるための費用であり、法律上、それを負担するのは区分所有者であって、賃借人ではありません。
 したがって、「管理費の値上げ」の議題は、事実上は賃借人に利害関係がおよびますが、法律上の利害関係、この場合は、賃借人が負担するという関係はありませんので、総会に出席して意見を述べることはできません。
 ちなみに、一般的に賃借人が総会に出席し、意見を述べることができる議題とは、建物などの使用方法や行為の停止、契約解除などが考えられます。具体的には、専有部分の居住目的以外の使用の禁止や、ペットの飼育の禁止、特別決議を要しますが賃貸借契約の解除を決議する場合が該当することになります。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

1998年6月掲載

理事長が行方不明の場合どのようにしたらよいか

当マンションの理事長が行方不明になり、一ヶ月が経過します。当組合には解決すべき重要な懸案があるのですが、今後どのようにしたらよいでしょうか。

理事長は、管理組合を代表し、規約や総会で定められた組合業務を執行するという責務を負っています。上記の場合、理事長がその職務を行うことは現実的に不可能と思えます。
 通常、多くのマンションで副理事長という役職が定められ、管理規約において、理事長に事故がある時や理事長が欠けた時は理事長の職務を代行すると定められています。
 ところで、管理規約において理事長が管理者を務めると定められる例も多く、対外的にいつまでも副理事長が理事長の職務を代行するという状態は、正常な状態とは言えません。そこで、近々に帰ってくることが推測できない場合は、理事長を解任し、新理事長を選任した方がよいでしょう。
 通常の管理規約では、理事長は理事の互選によって選出されることになっていますので、理事会の決議で理事長を解任し、新理事長を理事の互選によって選任することになります。その場合、必ずしも副理事長が新理事長になる必要はありません。
 理事会で理事長の解任に関心がなく、管理組合の運営が滞るような場合には、区分所有者の五分の一以上で議決権の五分の一以上を持っている者が理事会に対して、会議の目的(理事長解任)を示して総会の招集を請求できます。それでも、理事会が一定期間内に総会を招集しない場合は、総会の招集を請求した区分所有者が総会を招集することができます。
 なお、理事長に不正が認められる場合は、監事も臨時総会を招集することができます。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2000年1月掲載

夫婦二人とも役員になれるのか

分譲マンションの一室を夫婦で共有しています。次期管理組合役員となる順番なのですが、夫婦二人とも役員になれるのでしょうか。

ご質問されている方のマンションの管理規約の内容が不明なので、標準的な例でお答えします。
 一般的な規約では、[役員の資格]に関しては「理事および監事は、○○マンションの組合員のうちから、総会で選任する」と定められています。この条文だけを見ると、ご質問のようにご夫婦二人で共有していらっしゃる場合は、二人がともに区分所有者(=組合員)でありますし、問題はないように見えます。
 しかし、マンションの基本法とも言える区分所有法には「専有部分が数人の共有に属するときは、共有者は、議決権を行使すべき者一人を定めなければならない」と決められています。これはあくまで総会の議決権行使者に関しての定めですが、これは法律の主旨が、「組合の決議に関して、一戸に複数の共有者がいる場合でも議決権を行使できる人は一人としなければならない」ということなのです。
 この原則は規約の中で運営方法などを規定する理事会においても準用できると考えられ、理事会役員も一戸に一人とするのが妥当です。もし仮に、複数の共有者が役員になることを認めてしまった場合、極端な例ですと、理事の過半数が一戸の所有者で占められてしまい、理事会の決議が一戸の所有者の意向で決定されてしまう危険性もあります。こうした事態を避ける意味でも、役員は一戸一人で、かつ、その役員は議決権を行使すべき者とするのがよいでしょう。
 ただし、以上は通常のマンションの場合で、再開発ビルなどの区分所有建物で、一区分で多数の議決権を有する場合などでは前提が違ってきますので、規約で特別の定めをすることが必要でしょう。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

1997年10月掲載

配偶者は役員になれるか

私は理事長ですが、ある組合員から配偶者を役員にできないかという相談がありました。これは可能でしょうか。

夫が区分所有者で、役員になってはいるものの実際に理事会に出席しているのは妻だというケースは、多くの管理組合で見受けられます。
 本来役員は規約でその資格が定められかつ総会の議決により任命されるものですから、代理人は認められません。しかし現実に区分所有者でなくても区分所有者の配偶者であれば役員として選任したいという希望は少なくないように思われます。
 方法としては次のようなことが考えられます。
 一つは管理規約に役員の資格として組合員の配偶者も可能とする条項を設けるという方法があります。例えば、役員選任について「理事及び監事は現に居住する組合員、若しくはその配偶者のうちから、総会で選任する」という規定が考えられます。配偶者以外に範囲を広げる場合は、慎重な検討を加えることが肝要でしょう。
 二つ目の方法は、配偶者を区分所有者にすることです。
 もちろん夫婦間で共有名義になっている住戸であれば問題なく配偶者を役員にできますが、これから共有名義にする場合は贈与(贈与税が発生しない額での一部共有)又は売買によって所有権の一部を移転することになります。夫婦間の所有権の一部移転は、管理組合にとって所有権の移転登記がなされていない場合、客観的な確認が困難なため、例えば、公正証書による夫婦間の契約を要件とするなどの工夫が必要でしょう。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2001年3月掲載

理事会議事録の保管期間はどのくらいか

これまで、管理組合設立当初からの総会・理事会議事録、規約、委託契約書、決算書類はすべて保管してあります。しかし、収納スペースが一杯になったので整理をしたいのですが、保管期間など法律で定められているのでしょうか。

まず規約ですが、区分所有法では、管理者が規約を保管し、保管場所は建物内の見やすい場所に掲示しなければならないと定められています。また、利害関係人から規約の閲覧の請求があれば正当な理由がない限り拒むことはできないとされていますので、当然永久に保管する必要があります。
 次に、総会・理事会議事録(決算報告書等議案添付書類を含む)については、規約で、通常は規約の保管に準じた保管方法が定められています。議事録は訴訟等様々な局面で必要となる重要書類です。例えば管理費等を滞納している住戸が競売にかかった時に配当要求書を提出しますが、積立金や管理費が過去に変更となっていれば、これを決議した総会の議事録などを添付しなければなりません。以上の理由から議事録についても、永久的に保管する方がよいでしょう。
 その他の書類で永久に保管すべきものは、マンションの設計図書です。
 「建築確認申請書」(建築が許可された当初の図面)、「竣工図書」(建築途中の設計変更を含め、完成した状態の図面)は、将来の大規模修繕工事に際して必要となります。委託契約書については通常は現契約書・旧契約書共に保管しておくべきでしょう。会計関係の領収書、請求書、振替伝票や補助簿などは、各管理組合の実情に応じて保管年数を決められるのがよいでしょう。ただし、滞納者がいる場合は履歴の情報として必要なもの(滞納者別に発生日、金額、費目、督促状況などを整理した資料)はそれを越えて保管しておく必要があります。
 これらの書類などが膨大になり収納スペースがなくなってきた場合には、総会や理事会でその書類の性質、内容、必要性を検討し、保管期間を決めて順々に処分していく方法が考えられるでしょう。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2000年2月掲載

理事長に総会招集の請求をするには

理事会に、駐車場の増設について総会で審議してほしいと要請したのですが、理事会(理事長)としては増設の必要がないので総会にはかるつもりはないとのことでした。しかし、多くの人が駐車場不足で困っており、増設の余地もあると思われますので、ぜひこの問題を協議したいのです。どうしたらよいでしょうか。

まず、相当数の駐車場増設の立場をとる人が再度理事会(理事長)に要請してみてください。それでも理事会の態度が変わらない時は、以下の要件を満たせば区分所有者から理事長へ臨時総会の招集を請求することができます。
 その要件とは、(1)区分所有者の五分の一以上かつ議決権の五分の一以上を有する者(この数は規約の規定により減じてあることがあります)が、(2)会議の目的たる事項(議題)を提示して臨時総会の招集を請求することです。
 この要件を満たす区分所有者から臨時総会招集の請求があった場合、理事長はその請求があった日から二週間以内に、その請求日から四週間以内の日を会日とする総会の招集通知を発しなければならないことになっています。理事長から期間内に通知が発せられなかった場合は、上記(1)・(2)の要件を満たす区分所有者が、直接臨時総会を招集することができます。
 以上は、あくまで区分所有法の定めにより、臨時総会を招集する非常事態ともいうべきケースであって、基本は話し合いで解決すべきです。よく話し合って、本当に必要な事項なら理事会も取り上げるはずですし、緊急を要する事項でない場合には、臨時総会によらなくても、定時総会まで待って定時総会の議題にするなどの方法もあるかもしれません。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

1998年4月掲載

総会の決議について

管理規約に基づき、総会を開催し、各議案を審議しました。しかし、総会後、一区分所有者より同総会にて決議された議案について、本人が都合で出席できなかったので納得できないとの理由で、理事会へ再審議の請求がなされました。理事会としては、管理規約に基づき正式な手続を経て行った総会で承認されたことを理由に、再審議の請求を退けました。この理事会の判断は適切でしょうか。

総会で議案が議決されるというためには、総会が適法な手続きで開催されること、その総会で議案が有効に議決されることが必要です。
 そこで、総会の開催手続きが適正でない場合(一部の区分所有者に対し、総会開催の通知をしてない場合など)や議案が提案されてない場合や議決されてない場合などは、総会で議案が議決されたとはいえませんので、適法な手続きで再度総会を開催し議案を議決する必要があります。
 本問は、適法な手続きで総会が開催され、議案が議決された事項について、総会に出席しなかった一人の区分所有者が、議決された事項に納得できないから、再度総会での審議を求めた設問と考えられ、総会の議決手続きに何ら違法性がないので、区分所有者の意見を入れて、総会で再審議する必要はありません。
 また、会議を運営する原則のひとつに、一度審議・議決した事項については、原則として再審議しないという「一事不再議」という原則があります。
 その理由は、一度議決しているのに、何度も議決をやりなおすことが許されれば、いつまでたっても議案の結論が確定できないからです。
 しかし、一度議決した場合でも、その事情が異なってきた場合には、再度審議をする必要のある場合もあります。例えば、一〇〇〇万円で補修工事を実施するという議案を議決したが、補修工事が三〇〇〇万円かかることになった場合などは、同じ議案でも、再度審議する必要があるといえるでしょう。
 ところで、本設問では、一人の区分所有者が総会に出席しなかったということですが、通常は再審議する事情の変更にはなりませんので、再審議に応じる必要はありません。
 それゆえ、理事会が再審議の請求を退けたのは、適切といえます。
 しかし、決議した事項が重要な事項(例えば、マンションの建替えの決議)で、一人の区分所有者が反対の意思を表示すれば、議案が否決されたような場合で、同人が総会に欠席したこと、あるいは、書面決議を行使できなかったことに合理的な理由がある場合には、決議された事項をスムーズに処理する上でも、慎重な審議が求められ、その場合でも、理事会は一区分所有者の再審議の求めに応じることはできませんが、区分所有法により区分所有者及び議決権の五分の一以上の区分所有者による臨時総会の開催を求めることは可能ですので、このような請求があった場合には、臨時総会を開催して、再審議する必要がある場合もあるといえるでしょう。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2002年10月掲載

事前に議案について説明する必要はあるのか

理事会が総会開催案内を配布した後、総会に出席できない区分所有者から、「議決権行使書にて意思表示をするため事前に議案の説明をしてほしい」との投書がありました。理事会として回答が必要ですか。

総会の招集手続の前提として、総会を開催するには、総会招集権者による招集手続が必要です(少数区分所有者も総会招集請求権があります)。
 通常は、管理組合の理事長が、総会開催日の一週間前に招集通知を発しなければなりません。
 その招集通知には、会議の目的たる事項(議題)を示すことが必要です。さらに、共用部分の変更、規約の設定・変更、建替えなどの一定の重要事項が議題である場合には、議案の要領(決議内容についての案を要約したもの)も通知しなければなりません。
 議題が重要なものでなくても、総会の議題には、区分所有者が意見を決定するために必要な資料を添えて通知されるのが一般的です。
 さて、本問についてですが、「事前に議案の説明をしてほしい」との意見があったとのことであり、一応議題は通知されていたが、意思決定するための議題の要領やその資料が添付されていないと思われます。
 そこで、本問の議題が重要事項である場合には、招集手続に問題があり、再度議題とその議題の要領(通常は資料が添付されます)を記載した書面を送付して招集手続をやりなおす必要があります。
 一方、本問の議題が重要事項でない場合には、事前に議題が通知されているので、招集手続に問題はありません。
 しかし、「事前に議案の説明」までの必要はありませんが、意思決定するための資料を通常添付しますので、招集手続をやりなおすのではなく、区分所有者全員に添書を添えた資料を配布するなどの方法を行うのがよいでしょう。
 なお、議題そのものが不明な場合は、招集手続をやりなおす必要があることはいうまでもありません。
 また、「事前に議案の説明をしてほしい」と言われた区分所有者には、議題に対する意思決定のために、資料を配布するようにした旨の管理組合の対応を説明して理解を求め、その際に、手続の公正さ、適正さに疑念がもたれるような、区分所有者の意思を左右する言動は慎むことに注意してください。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2003年1月掲載

長期の管理費滞納者が役員になることを阻止できるか

区分所有者のうち数人の長期の管理費滞納者が、自分たちが役員になるべく、現理事全員の解任を求める臨時総会の開催要求を行いました。現理事会はこの要求に応じる必要があるのでしょうか。また、理事になることを阻止することはできますか。

区分所有法第三四条の規定によれば、区分所有者の五分の一以上で議決権の五分の一以上を有するものが理事長(管理者)に対して総会(集会)の招集を請求した場合、理事長は総会の招集をしなければならないことになっています。また、このときの定数を規約で減らすことができます。
 この手順をふまえて理事長に対して総会の招集を請求した場合、理事長は総会を招集しなければなりません。理事長が総会の招集を拒否した場合は、総会の招集を請求した区分所有者が連名で総会を招集することが可能となります。
 長期の管理費滞納者が理事になることを阻止できるかという問題ですが、管理費等の滞納があるなど、たとえ区分所有者に問題があったとしても、区分所有法では区分所有者の権利行使に差をつけることは認めていません。
 理事会としては、総会の開催要求を受け止め、理事の交替を諮る解任を問う議案を上程することになるでしょう。そのとき長期の管理費滞納者が混乱を起こそうとしている目論見の不当性を示し、解任の議案を否決に向かわせることが必要になります。
 もし解任となってしまった場合、総会の招集を請求した区分所有者が総会を招集することとなると思われます。その場合この人たちが理事になり、新しい理事会を構成される可能性がないとはいえません。この人たちが理事になることを阻止できるのは、総会の決議だけですから、組合員の一人一人の常識、判断力、組合への関心の高さなどが大切になります。
 管理組合は組合員の大切な財産を管理するわけですから、区分所有者の皆様の良識ある判断が期待できると思います。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2003年3月掲載

任期の途中で辞任した理事長が議事録を作成してくれない

定期総会の際に理事会役員の不祥事が発覚したため、役員全員が任期を残して辞任してしまいました。そのときの理事長は不祥事が記載されるためか三ヶ月を過ぎても議事録を作成しようとしません。このような場合、新理事長が議事録を作成・配布することができるのでしょうか。

区分所有法四二条一項には「集会の議事については、議長は議事録を作成しなければならない」と規定し、議長(一般的な規約では理事長が務めます)が議事録を作成する義務のあることを規定し、同条二項・三項には「議事録には、議事の経過の要領及びその結果を記載し、議長及び集会に出席した区分所有者の二人がこれに署名押印しなければならない」と規定し、議事録に記載する内容と作成手続を規定しています。この規定を設けた理由は、本法により、集会の決議が重要性を増したことによって、議事録が正確に記載される必要性を生じたためです。
 「議事の経過」とは、開会、議題、議案、討議の内容、表決方法および閉会などをいいますが、その要領で足りるので、経過を知りうる程度に要約して記載することになります。
 「結果」とは、表決を行って可決されたか否決されたかということであり、決議の成否が問題とされる場合もあるので、その根拠を示すために、各議決数を記載しておくことが必要です。
 さて、本問によると、理事長(議長)が議事録を三ヶ月過ぎても作成しないということですが、議事録を作成しないこと、また、記載すべき事項を記載しないことや虚偽の記載をすることは同法四二条に違反する行為であるとして過料に処せられることになります(同法七一条三号)。それゆえ、集会の議長を務めた前理事長に議事録を作成するよう説得することが必要でしょう。
 ところが、前理事長が説得しても議事録を作成しない場合に、本問の新理事長が議事録を作成することができるかということですが、議事録の作成義務者はあくまでも集会の議長を務めた前理事長ですので、新理事長であろうとその他の集会の出席者であろうと、同法四二条にいう集会の議事録の作成者にはなり得ません。
 しかし、前理事長がどうしても議事録を作成しない場合は、これにかわるものとして、先の集会の議事の経過及びその結果の資料とするために、同法四二条の規定にしたがって、集会に参加した者(新理事長と二人の区分所有者)が署名押印した報告書を作成しておくのが良いでしょう。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2003年3月掲載

事前に通知のなかった議案に対する総会での決議は有効か

私の住んでいるマンションで総会があり、議案になかった駐車場の工事について、緊急に提案がなされ、現に出席された方々だけの賛成多数で承認されました。私は総会に出席できなかったので、他の議案には賛成で議決権行使書を提出していたのですが、議案になかったこの工事については反対です。この決議は有効なのでしょうか?

集会(総会)の招集手続として、区分所有法第三五条一項において、「集会の招集の通知は、会日より少なくとも一週間前に、会議の目的たる事項を示して、各区分所有者に発しなければならない」と定められており、事前に(1)会議の日時(2)会議の場所(3)会議の目的(議案)を通知しなければなりません。
 また、区分所有法第三七条一項において、「集会においては、第三五条の規定によりあらかじめ通知した事項についてのみ、決議をすることができる」と定められています。
 つまり、事前に通知することにより各区分所有者は各議案について、十分に検討した上で集会に臨むことができます。しかし、事前に通知されていないと十分な討議ができませんし、集会に出席できない区分所有者は議決権行使書により議決権を行使できませんし、出席して意見を述べることによって、決議が否決されることもありますので、事前に通知されていない議案については、決議することができないのです。
 それゆえ、事前に通知した議案以外の決議は、賛成多数であっても、基本的には決議の効力がないことになります。
 ところで、建物の管理を円滑に行うためには、集会においては、柔軟かつ迅速に決議する必要もあり、特別決議を除く普通決議については、あらかじめ通知していない事項であっても決議ができるように規約で別段の定めをすることができます(区分所有法第三七条二項)。
 しかし実際には、無制限に通知していない事項を決議するというのは、問題があると思いますので、「現出席者の議決権のみで定足数を満たしている場合に」という議決要件に限って、かつ、「あらかじめ通知され議決された議案に関する事項(例えば、実施方法や細則の制定)」や「緊急を要する事項(保存行為)」という議決事項に制限をもうけて、決議できるとすることが望ましいと思います。
 以上のことから、本件決議の効力は、駐車場の工事がどのような工事であるのか明らかではありませんが、原則として無効といえます。しかし、「緊急に提案された」とあり、雨漏りやひび割れなどの緊急な事態(保存行為を要する事態)があったようにも思われ、このような場合には、規約に定めがある場合もありますので、規約を確認してみてください。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2003年9月掲載

電磁的方法による議決権の行使について

現在、区分所有者が総会を欠席する場合には、書面により議決権の行使をしています。電磁的方法による議決権の行使ができると聞きましたが、具体的にどうすればよいですか?

平成一五年の法改正では「区分所有者は、規約または集会の決議によりこれまでの書面による議決権の行使に代えて、電磁的方法によって議決権を行使することができる」と定められました。
 これは、近年のパーソナルコンピューターやインターネットのブロードバンド化の普及に鑑みて、管理運営に関して迅速・適正な対応を実施することができるよう意思決定の方法を新たに追加採用したものと考えられます。具体的には、平成一五年六月一日より法務省令として『建物の区分所有等に関する法律施行規則』が施行され、あらかじめ管理規約又は集会の決議で、書面による議決権の行使の他に「電子メールの送信」や「ウェブサイト(ホームページ)への書込み等の利用」、「フロッピーディスク」や「CD-ROM」の交付による方法の採用を確認した上で、議決権行使を行うことができることとなりました。
 ただし、この方法を採用する場合においては、議決権行使が区分所有者本人のものかどうかの確認が容易にできないという問題が生じるため、これらの対応策として、電子署名を付する方法やあらかじめ区分所有者へ割り当てしたパスワードを入力する方法などの本人確認を行うことのできる手段を導入しなければならないでしょう。
 なお、FAXの場合、従来採用できるかどうか議論が分かれていましたが、法務省令では電磁的方法とは、具体的には電子計算機を使用するものと想定しており、記録、保存、出力が可能であるものとされているようです。
 しかしながら、この法改正によりFAXと同様の性質を有する添付ファイル等も認められていると考えられることから、FAXの採用についても一定の方向性は出たと考えられますが、その採用にあたっては、管理組合で事前に合意されていること、本人確認の方法もできることなどの要件が必要でしょう。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2003年11月掲載

法人が役員になることはできるか

私のマンションでは役員の就任については、輪番制をとっています。今回法人所有の部屋に順番がまわってきました。法人でも役員になることはできるのでしょうか?

組合員なら原則だれでも役員になることができます。法人は自然人でないため、通常の規約では想定外のことと考えられますが、法人そのものではなく、区分所有者たる当該法人を代理する立場の者であれば役員に就任することに問題ないと考えられます。
 ちなみに標準管理規約には、そのコメントの中に『法人が区分所有する専有部分があるマンションにおいて、法人関係者が役員になる場合には、管理組合役員の任務に当たることを当該法人の職務命令として受けた者に限定する等どのような資格を有する者が実際に役員業務を行うことができるかについて、あらかじめ規約や細則に定めておくことが望ましい』と記載しています。
 仮にその記載がなくとも、例えば総会へ出席する者として当該法人の代理を受けた者などであれば問題ないでしょう。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2004年3月掲載

理事長の報告義務について

私は理事長をしています。先日、ペットの飼育について理事会で検討するため居住者にアンケートを行いました。その結果について、ある区分所有者が「書面で報告してくれ」と何度も家まで押しかけて来られました。私はアンケートは未集計段階なのでお断りしたのですが、集計がまとまった段階では、この区分所有者に書面で報告する義務があるのでしょうか。

管理者の権利義務は、区分所有法第二八条によると、「委任に関する規定(民法第六四五条)に従う」と定められており、民法第六四五条によると、「受任者は委任者の請求があるときは、いつでも委任事務の処理の状況を報告する」と定められています。
 ここで特定の一区分所有者が法にいう委任者にあたるのかどうかですが、受任者である理事長は、総会で選任された理事数名の中から互選によって選出され、個々の区分所有者から直接管理者となることを委任されたものではないけれども、区分所有者の総体としての管理組合により委任を受けているといえるでしょう。
 また区分所有法第四三条によると、管理者は少なくとも毎年一回集会(総会)において、管理者の取り扱う事務に関する報告をすることが定められていて、特段の問題が生じない限り、一般的には年一回の報告で良いといえます。
 本人の管理費の収納状況などは、各区分所有者に対して、告知すべきです(このために管理会社に事務を委託しています)が、本件のケースの場合、あくまでも理事会で検討するためのアンケートであり、必ずしも特定の区分所有者に対して個別に理事長が書面で報告する義務はなく、理事会で検討して、その報告方法(報告するべきか否かを含めて)、報告内容を決定すればよいと考えられます。
 ただし、アンケートの結果については、組合員の関心のあることでしょうから、特定の個人に対してではなく、差し支えない範囲で集計したもの(もちろん匿名性のあるデータとして)を組合員全員または回答された組合員に公表されることが望まれます。
 なお、規約・議事録は、区分所有法において利害関係人の請求があったときは正当な理由がある場合を除いて、閲覧を拒んではならないとなっています。
 これらの公表、閲覧等の実務は、理事長自ら行う必要はなく、その実務について管理会社などに再委託して実施されればよいでしょう。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2004年5月掲載

議決権を理事長一任とする規約は有効か

理事長をしていますが、総会への出席が非常に少なく、何度も議決権行使書の提出を依頼してようやく総会を成立させるというような状況です。毎回このような苦労をするのも嫌なので、「議決権行使書も委任状も提出されない場合は、理事長(又は議長)に一任したものとする」という規約を設定したいのですが、このような規約は有効でしょうか?

総会における議決権の行使については、区分所有法第三九条二項に「議決権は、書面で、又は代理人によって行使することができる」と定められています。この定めに基づき区分所有者が代理人を選任し、総会における議決権の行使を代理人に委任したことを証する書面が委任状であり、この書面が管理組合に提出されることによって代理人は総会での議決権行使を認められます。
 代理権の授与は、通常委任状という書面でなされますが、委任状には、代理人の氏名、代理する事項(本問では総会議決事項)を記載し、本人が署名と押印をして、作成されます。
 したがって、規約において、ご質問のような規約を制定するために規約の改正をしても、委任状が提出されない状況では、代理権授与の要件を満たしているとは言えず、理事長を代理人と認めることはできません。
 仮にこのような規約を盾に、当該区分所有者に成り代わって議決権を行使したとすれば、当該区分所有者の権利を侵害することになって、決議自体が無効です。したがって、本問のケースでは、議決権を理事長一任と扱うという規約は無効であると解せます。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2004年11月掲載

出席者二人で開催した総会とその議事録について

総会を開催しましたが、実際に出席したのは議長と区分所有者一名のみで、後は議決権行使書による出席でした。区分所有法で「議長及び集会に出席した区分所有者の二人がこれに署名押印しなければならない。」とあるため、議事録署名人として「総会に出席していない議決権行使書を提出した区分所有者」を議事録署名人としました。法でいう「出席した」とは、現に出席したことを指すのでしょうか。この議事録は、有効でしょうか。

区分所有法第四二条によれば、議事録には、議事の経過の要領及びその結果を記載し、議長及び集会に出席した区分所有者二人がこれに署名押印しなければならない、と規定しています。
 この規定によれば、法はそもそも出席者が議長を含めて二人で議事を進行することを想定していないといえます。
 すなわち、総会は区分所有者の意思を決定する重要な会議ですので、二人しか出席者がいない場合には、区分所有者に連絡を取り、できるだけ多くの区分所有者に出席してもらって、議事を進行する必要があるといえます。
 ところで、本問では、出席者二人で総会を開催し、議事を進行してしまったということになりますが、ここに「出席した」とは現に総会に出席し、議事の経過を確認したことを要し、「書面議決者」は適法な議事録署名者といえませんし、また、議長と出席した区分所有者一人だけが署名した議事録も有効とはいえません。
 それゆえ、区分所有者から議事の結果を争われる場合もあり、管理組合の理事長は、議事録に記載された議事の経過などを法的に確認することが必要なこともでてきます。
 一方、適法(有効)な議事録が作成されたとしても、議事録に記載された議事の経過などが存在したかどうかは別の問題であり、例えば、書面決議を含めて過半数に達していないのに、議事録に可決されたと記載し、議長と出席した議事録署名者二人が署名をした場合にも、議事録は適法(有効)であるが、その議事の結果は法的効力を有しません。
 しかし、議事録が適法(有効)に作成されていれば、議事録に記載のある議事の結果が存在したと法的に推認されるので、これに異義のある者が不存在を証明することを要します。
 以上のとおり、議事録署名者が議長と出席区分所有者一人しかいない場合は、適法(有効)な議事録を作成できませんので、総会は区分所有者の意思を決定する重要な会議であり、また、法的紛争を回避するためにも、議長は総会を流会とし、再度総会を招集するのがよいでしょう。
 ただし、どうしてもほかに一人も出席できない場合には、仮の議事録とし、次回総会までに特段の「異議」がなければ、議事の経過及び結果が追認されたと考えてもよいでしょう。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2005年4月掲載載

事前に通知している案と違う内容で承認された管理規約の改定は有効か

管理規約の改定を議案とする臨時総会を開催しました。総会の場で事前に通知していた案から若干の変更を加え、区分所有者及び議決権の四分の三以上の承認を得て可決されました。事前に通知している案と違う内容で承認されましたが、この改定は有効なのでしょうか。

問の規約の改定のように特別決議を要する場合は、その議案とその要領(決議内容についての案を要約したもの)も通知しなければなりません。そこで、規約改正の議案の場合は、規約の新旧の対比表を付して、提案とするのが一般的です。
 議案だけでなくその要領も知らせる目的は、各区分所有者が、事前に決議する内容を検討したうえで、集会に臨んでもらうことと、さらに集会に出席できない区分所有者には、この議案と要領をもとに書面決議により、議決権を行使してもらうためです。
 よって、明らかな誤字、脱字の修正という変更は可能ですが、通知している議案と内容の異なる議案での決議は許されません。
 しかしながら、あまりにも厳密に運用するとたった一ヶ所の表現が明確でない為に議案全体が否認されるということにもなりかねません。
 そこで、議案に『改定の主旨に沿った範囲での若干の字句の追加、修正も併せてご承認ください』という旨の但し書きを付しておけば、総会において出席者の総意により、若干の字句の変更はすることができるといえます。
 ただし、その変更部分が、議案の主旨を逸脱していたり、異なる意味合いが生じる場合は、改定の決議をされた規約は効力を有しないことになります。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2005年5月掲載

管理費の不足により、公共料金などの支払ができない場合は

管理組合の理事長です。期の途中ですが、滞納者も多く管理費が不足しています。このままだと、公共料金などの支払もできなくなりそうです。規約では管理費の値上げや修繕積立金口から取り崩しをするためには総会決議が必要になりますが、臨時総会開催の余裕もないほどせっぱつまっています。何かいい方法はないでしょうか。

電気料金や水道料金といった公共料金は(自治体や電力会社によりますが)早収期限までに支払わないと割引が受けられなくなります。さらに、通常期限を過ぎてしまうと延滞利息をかけられたり、電気や水道の供給サービスを停止されてしまう恐れがあります。また、公共料金以外の一般の債務も納付期限を過ぎると、延滞利息を請求されることがあり、何より債権者に対して管理組合の信用の失墜につながりかねません。
 以上のことから、支払を遅らせたり止めたりするのは管理組合にとって不利益をこうむることにもなり、これを避けるため、修繕積立金口から理事長の判断で支払っても問題ないと考えられます。
 また、この場合の支払いは、修繕積立金口の「取り崩し」ではなく、修繕積立金口から一時的に管理費口の費用を負担する、「仮払い」ですので、総会決議を得ることは不要といえます。
 ただし、これは公共料金や予算で認められた通常の管理業務上発生する支払い、あるいは建物の保存上最低限の補修、災害など、緊急な出費に限り可能であると考えられ、大規模な修繕などの多額の支払いの場合は、臨時総会で決議を経ることを要します。
 また、一時的には以上の方法で回避しても、できるだけ早めに訴訟を提起するなどして滞納者の未収金回収に努め、それでも管理費が不足するようなら管理費の値上げを検討すべきでしょう。組合資金に余裕ができた時点や総会決議が得られた時点で、前記の「仮払い」を解消すべきことは言うまでもありません。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2007年2月掲載

総会の議事録に、指名した署名人が署名押印しない場合は

総会の議長を務めました。総会の場で議事録署名人二名を指名したのですが、総会後、私が作成した議事録に不満があるとして議事録に署名押印をしてもらえません。議長の私だけが署名押印した議事録を正としたいのですが問題があるでしょうか。または、総会に出席した別の二名の組合員の署名押印を頂いても問題ないでしょうか。

 区分所有法第四二条には、「集会の議事については、議長が議事録を作成しなければならない」と定められています。また、同条三項には、「議事録には、議長及び集会に出席した区分所有者の二人が署名押印しなければならない」とも定められています。
 質問のケースでは、議長が指名した二名が議事録に不満があるとのことですが、よくある不満のケースは、 (1)すべての発言者の発言を一語一語記述すべきだという主張をされるケース、(2)署名人の期待した決議が得られなかったケース、(3)記述に誤りがあるケースなどです。
 (1)のケースについては、マンション管理組合総会では、通常、「議事の経過」と「結果」を簡潔に記せば足りると思われます。ただし、工事の発注、規約の改正など、組合の出費などに関することや、組合員の権利・義務関係に影響を与える特別な決議については、その要領を詳細に記述する必要がありますが、発言の一語一語までは必要ないでしょう。
 (2)のケースでは、署名人は総会の開催にあたり、総会の決議を順守することを前提に議長の指名を受諾しているわけですから、適正に作成された議事録の署名を拒否することはできません。そもそも、議事録署名人は正式な総会の決議によって与えられた地位ではなく、議長の指名によるものなので、合理的な理由があれば、議長によって署名までに、先の指名を撤回し、交替させるのもやむを得ないこともあります。この場合、後に紛争となることも予測されますので、議案に対する賛成や反対の正確な員数を確認しておくことも重要です。そして、署名欄の下に特記として、署名人を交替した理由を記しておくべきでしょう。
 (3)のケースでは、間違いのない記述に訂正し、署名人が納得して署名押印するよう努めてください。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2007年4月掲載

理事会議事録について

理事長をしています。このマンションの管理組合では、設立当初から、総会議事録は作成して保管していますが、理事会議事録は作成していません。管理規約にも、理事会議事録の作成、保管については何も規定がありません。先日、最近区分所有者になられた方から、「理事会議事録を作成、保管していないのは、管理者の善管注意義務違反に当たる」といわれました。本当にそうなのでしょうか。

区分所有法には、集会(総会)議事録は作成しなければならないと定められていますが、理事会議事録については何も定めがありません。また、管理規約にも、理事会議事録について何も規定がない、ということですので、ご質問のケースは、区分所有法・管理規約上は何も問題はありません。
 では、理事会議事録を作成、保管していないのが、管理者の「善管注意義務」違反に当たるかどうかが問題になります。
 区分所有法には、「この法律及び規約に定めるもののほか、管理者の権利義務は、委任に関する規定に従う。」とあります。管理者と他の区分所有者との関係は、共用部分などの管理に関して、実質的に委任の関係にあり、管理者の権利義務に関しては委任に関する民法の規定が準用され、その一つに「善管注意義務」があります。
 「善管注意義務」とは、「善良なる管理者の注意をもって、管理業務を行う」ことで、注意義務の内容、程度は、その人の職業、社会的・経済的地位などに応じて、一般的に要求されることになります。
 ご質問のケースの場合は、区分所有法・管理規約に何の定めもないこと、また設立当初から理事会議事録を作成していなかった(理事会議事録を作成しないことが慣例的になっていた)ことから、善良なる管理者の注意をもってしても、見過ごされても仕方がないと考えられ、年一度は、定期総会にその内容も報告されていることでもあり、「善管注意義務」違反があるとまではいえないでしょう。
 しかし、マンション標準管理規約では、総会議事録にならって理事会議事録を作成するように規定されており、理事会で検討した結果を記録として残すことは意義のあることですので、今後は議事録を作成し保管することをお勧めします。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2007年6月掲載

管理組合役員の辞任について

総会で承認された理事(監事)が、任期の途中で、特段の理由もなく辞任することは可能でしょうか?

標準管理規約には、「理事および監事は、組合員のうちから、総会で選任する」と規定していますが、辞任に関しては、直接的な規定がありません。しかし、役員の任期に関して、「補欠の役員の任期は、前任者の残存期間とする」とか、「任期の満了又は辞任によって退任する役員は、後任の役員が就任するまでの間引き続きその職務を行う」とあり、理事(監事)が残任期間を残して辞任されることを予定しています。
 ところで、理事(監事)の就任は、管理組合とその理事(監事)との間の委任契約になると解され、民法では、委任について、「委任は各当事者において何時にてもこれを解除することを得。」と規定し、いつでも契約を解除することができることになり、解除のための特段の理由も必要でありません。
 それゆえ、総会で選任された理事(監事)が一旦就任を承諾したが、その後、特段の理由がなくても、任期の途中で辞任することはできるといえます。しかし、「管理組合業務が混乱する形」での一方的な辞任は、管理組合業務が停滞してしまう可能性もありますので、新たに総会を開いて、後任が選任されるまでの間は、残任期間中その職務を行うこととなります。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2007年7月掲載

新会計年度開始前に予算案の承認を受けなければならないのか

マンションの管理規約では、新会計年度開始後三ヶ月以内に総会を招集しなければならない、と決められています。この方法だと、新会計年度開始後最長三ヶ月間は、予算案の承認を受けずに管理組合業務を行っていることになります。「臨時総会を開催して新会計年度開始前に予算案の承認を受けなければならない」という人もいますが。

原則として、予算を執行するためには、総会で承認を受けて行うことは当然のことです。それゆえ、新会計年度が始まる前に、総会で次年度の予算案の承認を得るのが適正なことです。
 しかし実際には、多くのマンションの管理規約では、本問のように、新会計年度開始後に通常総会を開催することを規定し、また多くの管理組合では、その通常総会で前年度の決算と次年度の予算案の承認を受けて、済ませているようです。
 ところで、厳密に予算執行の適正な手続きを考えれば、予算と決算の年二回の総会を開催する必要がありますが、年二回の総会の開催手続きを行うことが大変わずらわしいことと、一般的には、管理業務にかかる予算の執行はそのほとんどが継続的、定型的な業務であることが多いことから、管理規約では、新会計年度開始後に通常総会を開催することとし、必ず決算が行えるように規約を規定しているのです。
 このように、理事長(管理者)が行う予算の執行は継続的、定型的(管理委託料や清掃代金などの支払い)な予算の執行であり、予算案の承認の有無にかかわらず、管理組合の業務として、支払いをする義務を負っていることから、新会計年度に入っての管理組合業務は、総会の承認を得る必要性も低く、旧予算に準じて執行されていれば、問題はないと考えられます。
 また、役員に関する規定についても、一般的なマンション管理規約では、新会計年度開始後三ヶ月以内に開催される総会にて選任されており、次期総会で新役員が選任されるまでの間を任期とすることが定められていますので、同様に予算も、慣行的に新会計年度開始後三ヶ月以内の通常総会で承認されているのであれば、新会計年度開始後も前年予算に準じて執行されることに問題はないと考えて良いでしょう。
 ただし、前年予算で見込まれていなかった多額の支払いなど(大規模修繕の支払い、管理費や使用料の改定など収入金額の変更、新たな多額の支払いの追加など)が発生する場合には、理事長の一存で契約を変更し、支払いを行うことは、委任業務に必要な善管注意義務に違反することにもなります。必ず臨時総会を開催し、予算案の承認が必要になりますので、注意してください。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2007年11月掲載

入居者へのアンケート結果をもとに決議したい事項があるが

理事長をしています。管理組合の運営に関する事項を、区分所有者ではなく、賃借人を含めた入居者を対象としたアンケートを集計し決定しようと考えていますが、問題があるでしょうか。

原則マンションの管理規約には、理事会で決議できる事項と、総会でなければ決議できない事項が明記されています。ご質問のアンケート事項が、規約において、理事会で決議できる事項か、総会で決議すべき事項かによって、問題が変わってきます。
 総会で決議しなければいけない事項である場合は、必ず総会の決議を経る必要がありますので、アンケート結果だけをもとに決定しても無効となります。理事会で決議できる事項である場合、アンケート集計結果をもとに、理事会で決議するのであれば問題はありません。
 しかしながら、区分所有者の権利義務に影響があると思われるものは、賃借人のものは参考としても良いでしょうが、管理組合の構成員たる区分所有者のみを対象としたアンケートにより意見を集約すべきでしょう。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2007年12月掲載

「総会に出席しなければ議決権の行使ができない」と管理規約を改定したい

理事長をしています。私のマンションでは、総会の出席率が大変低く、ほとんどの区分所有者が書面にて議決権を行使しています。このままでは、区分所有者の管理組合運営の意識が低下していくばかりなので、「総会議案に関する議決権は、現に総会に出席しなければ行使できない」と、管理規約の改定をしたいのですが。

本来、集会には区分所有者自身が出席して議決権を行使することが原則です。しかし、それでは集会当日、都合が悪く、どうしても出席できない区分所有者は議決権を行使できないことになってしまいます。そこで、出席できない区分所有者の議決権行使の権利を守るため、区分所有法第三九条二項では、「議決権は、書面で、又は代理人によって行使することができる」と定められているのです。
 仮に、ご質問のように、「現に総会に出席しなければ議決権の行使ができない」と規約を改定しても、規約よりも区分所有法が優先されますので、無効となるでしょう。
 それよりも、区分所有者の管理運営に関する意識を高めていくために、総会に参加していただくよう呼びかけたり、役員を持ちまわりにしたり、区分所有者が参加できる催し物をしたりして、いろいろな工夫をされることをお勧めします。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2008年1月掲載

復代理人による議決権の行使について

私は一〇二号室の区分所有者です。このたび総会が開催されることになり、一〇一号室の区分所有者から議決権行使を委任され、これを引き受けました。しかし、私も都合が悪くなり、同居人に委任することにしました。この場合、同居人に一〇一号室の分も委任することは可能なのでしょうか。マンションの管理規約には、代理人の資格として「その組合員と同居する者、または他の組合員若しくはその組合員と同居する者」と限定されています。

 

民法の一〇四条には、「委任による代理人は、本人の承諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復代理人を選任することができない」とあります。ここで「復代理」とは、代理人が委任された代理行為を行わせるために、さらに代理人を選任して、委任した本人を代理させることをいいます。
 委任は、もともと代理人を信用して委任するものですから、委任した人が他の人に委任をするのであれば、その人に委任しないこともあるからです。そこで、復代理をする場合には委任者の承諾を要することとしたのです。また、やむを得ない事由とは、事故や急病などで急に出席できない場合などをいいます。
 ご質問のケースによると、一〇一号室の区分所有者(委任した本人)から委任された一〇二号室の区分所有者(代理人)が、さらに代理人として一〇二号室の同居人(復代理人)に代理権を委任することになります。民法の規定では、「本人の承諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるとき」に限り、この復代理行為を可能としています。
 また、管理規約でも、代理人の資格として「他の組合員若しくはその組合員と同居する者」を認めていますので、一〇一号室の区分所有者の代理人として、一〇二号室の同居人に委任することは可能です。
 そこで、一〇一号室の方に、一旦委任された代理権をさらに同居人に委任することについて承諾をもらえば問題ありません。その場合も、委任した本人の承諾書をもらっておくのが良いでしょう。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2008年3月掲載

事前に通知していない議題も決議できるのか

私が議長を務めた総会で、ある区分所有者から緊急動議の提案がありました。総会はあらかじめ通知した事項しか決議できないことを理由に却下したところ、「この総会には委任状を含め全区分所有者が出席している。全員が出席する総会では、事前通知以外の議題も決議できるはずだ」と言われました。本当にそうなのでしょうか。

区分所有法三七条第一項には「集会においては、あらかじめ通知した事項についてのみ、決議することができる」とあり、緊急動議などによる、あらかじめ通知していない議題を決議することはできません。
 しかしながら、区分所有法三六条には「集会は、区分所有者全員の同意があるときは、招集の手続きを経ないで開くことができる」とあり、また三七条第三項には「前二項の規定は三六条の規定による集会には適用しない」とあります。すなわち、区分所有者全員の同意があれば、いつでも集会を開くことができ、その集会ではあらかじめ通知していない議題も決議できることになります。
 したがって、総会に全区分所有者が出席しており、全員の同意がその場で得られれば、事前通知以外の決議をすることも可能です。しかし、総会の出席者が区分所有者ではなく、委任状による代理人などが含まれる場合は、必ずしも「全区分所有者が出席している」といえません。
 なぜなら、代理人に委任した区分所有者は、あらかじめ通知された議題に関する議決権を行使することを委任しているのであって、それ以外の議題に関する議決権行使まで委任していると考えられないからです。
 しかし、ご質問の緊急動議の内容が、あらかじめ通知された議題と趣旨が同じで、部分的な語句の修正などの場合は、もともとの委任の内容に含まれていると考えられますので、決議することに差しつかえはありませんが、通知された事項と趣旨の異なる議題である場合には、決議することはできないといえます。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2008年4月掲載

監事が組合員の資格を喪失した場合は

理事長をしています。先月末で今期の事業年度が終了しましたが、監事の方が住戸を売却することになり、組合員の資格を喪失してしまうことになりました。管理規約では、「役員が組合員でなくなった場合には、その役員はその地位を失う」となっています。来たるべき通常総会の決算案承認決議において、監事の監査報告ができません。どうすればよいでしょうか。

 

監事には、一年間を通じて管理組合の業務の執行状況及び財産の管理状況を監査し、通常総会にて監査結果を報告する義務があります。その監査報告を参考に、各組合員は決算案承認議案について賛成か反対かを決定し、多数決で可決・否決が決まるのです。
 ただし、総会時の報告だけでは、総会に参加できず議決権行使書にて議決に参加したい組合員が監査結果を参考にできませんので、監査報告書という書面を作成し、総会議案と一緒に配布するのが一般的です。 
 本問のケースでは、監事が総会時には監事の地位を失っているとのことですが、監査報告は決算案承認議案の決議をとるための参考にすぎません(監査の結果適正であるという報告であっても総会で否決することは可能ですし、逆に監査の結果、不適切であるという報告であってもその内容によっては、可決することは可能です)ので、現在監事の地位にないことを断った上で、監事の地位にいた間の監査結果を書面で報告してもらい、それを議案書と一緒に配布することで問題はないと考えられます。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2008年6月掲載

一旦通知した総会議案を取り下げることは可能か

理事長をしています。通常総会の開催を予定し、総会案内通知を配付しました。配付後、上程した議案の一つを取り下げたいのですが、可能なのでしょうか。可能な場合はどのような処理をすればよいのでしょう。マンションの管理規約では、総会への上程議案は理事会の決議事項になっています。

管理規約で、総会への上程議案は理事会の決議事項になっている、とのことですので、今回取り下げようとしている議案も、当然理事会で決議しているものと思われます。理事会で決議した上程議案を取り下げるということですから、理事会で再度、取り下げることについて決議する必要があります。
 理事会で決議した後に、総会の開催日まで余裕があるのであれば、当該議案を取り下げる通知を配付することで、議案の取り下げは可能であると考えられます。総会の開催日までに余裕がない場合は、総会の議事運営は議長(通常は理事長)が務めますので、総会の議案としないことの出席組合員の賛成を得て、議案を提案しないことは可能でしょう。
 しかしながら、議決権行使書などの書面による賛成のみで議決要件を満たしている場合は、出席組合員の賛成を得ても議案を取り下げることはできませんので注意してください。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2008年10月掲載

総会決議の履行責任について

昨年度の通常総会で大規模修繕工事実施の決議がされましたが、本年度の理事長が工事を発注しないため、大規模修繕工事が行われません。総会決議はされたものの、時期尚早として理事長が工事発注を保留しているようです。総会での決議事項を理事長の個人的な考えで実施しないことは許されるのでしょうか?

区分所有法では、マンションの維持管理をスムーズに行えるように、第二六条一項で、「管理者は、共用部分である建物の敷地及び付属施設等を保存し、集会の決議を実行し、規約で定めた行為をする権利を有し、義務を負う」とし、同法二五条一項では、「区分所有者は、規約に別段の定めがない限り集会の決議によって、管理者を選任することができる」とし、管理者の制度を規定しています。
 ところで、マンション標準管理規約によれば、「理事長は、区分所有法に定める管理者とする」旨規定され、通常は管理規約にその旨定められていますが、このような規定がない場合には、集会の普通決議によって管理者を選任することになります。そこで、管理規約により、理事長が管理者とする旨の規定がある場合には、理事長は、集会の決議を実行する義務を負うことになりますので、本問のように、理事長が個人的な考えで総会決議をした大規模修繕工事を実施しない行為は、理事長として義務に違反することになります。
 また、大規模修繕工事の実施を遅延させたことにより、管理組合に何らかの損害を生じさせた場合には、債務不履行による損害賠償責任を問われることもありますし、各区分所有者は、総会決議や訴訟により理事長を解任することも可能です(区分所有法第二五条第二項)。
 それだけに、集合住宅であるマンション管理組合を円滑に運営する上で、理事長(管理者)の責任は重大であり、権利および義務を誠実に行うことが求められます。
 まずは、理事長に法に定められた集会の決議を実行することの必要性を理解してもらい、速やかに大規模修繕工事の手続を行うように促すことが重要といえます。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2011年8月掲載

理事会における代理人の出席について

理事会への出席率を上げるため、代理人の出席を認めることは可能ですか。

管理組合では、最高決議機関たる総会の意思決定の下に、管理組合の業務を執行する体制として、理事長を業務執行機関、複数の理事から構成される理事会を業務執行の具体的意思決定機関、監事を内部監査機関として位置付けられています。
 そして、区分所有者には総会において代理人による議決権の行使を認めています(区分所有法第三九条第二項)。これは区分所有者に保障された重要な権利であり、規約によりこの権利を制限することはできませんが、代理人の範囲を合理的かつ部分的に限定することは認められます。
 これに対し、理事会については区分所有法が別段の定めを設けていませんので、理事会への代理人の出席が可能か否かについてはマンション管理規約で認めていない限り理事会に代理人が出席することはできないことになります。また、管理規約で代理人出席を認める場合でも、代理人の範囲を実質的に共有者とみなせる配偶者などの親族に限定する考慮も必要でしょう。
 多くのマンションでは日常的に理事の配偶者が代理人として理事会に出席している実態もあるようですが、厳密には有効な運用とはいえず、訴訟等の争いになれば理事会決議が無効となる可能性がありますので、管理規約に則って運用することが必要です。
 また、理事会への出席率をあげる方法としては、一般的なマンション管理規約では理事の資格を区分所有者に限定していますが、区分所有法は理事の資格に制限を設けていませんので、理事の資格要件を共有者とみなせる配偶者などの親族とする管理規約を定めることも可能です。
 いずれにしても、理事会は、総会の意思決定を具体的に執行する機関ですので、全理事が出席して活発な討議が行われることが管理組合運営を円滑に行うための大切な要素といえます。そのために、マンションの環境に応じた適切なルールを整備することが重要です。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2011年10月掲載

未販売住戸の議決権について

新築マンションに住んでいます。入居開始からもうすぐ一年がたち一回目の定期総会の時期を迎えますが、全一一〇世帯の半数強にあたる六〇世帯が売れ残っています。総会での議決権の取り扱いはどうなるのでしょうか。ちなみに当マンションの管理規約では、一住戸につき一議決権が与えられています。

新築マンションでは入居開始後の一定期間、未販売住戸が残る場合があります。この時、未販売住戸の所有権は売主であるマンション事業主にあるわけですから、その議決権もマンション事業主が保有することとなります。既に販売、引渡し済みの五〇区分の所有者がすべて異なるとすれば、本問マンションは区分所有者数五一、議決権数一一〇が定数のマンションとなります。
 また、総会の決議について区分所有法では、「この法律又は規約に別段の定めがない限り、区分所有者及び議決権の各過半数で決する」(区分所有法第三九条第一項)とあり、本問マンションの総会決議には、区分所有者の二六名以上かつ議決権数の五六以上の承認が必要となるわけです。
 このように一部の区分所有者に多数の議決権が集中する状況で懸念されるのは、当該区分所有者の賛成がなければ、どんな議案も否決されてしまうということです。そういった事態に陥ることを避けるには「区分所有者一名につき議決権が一つ」という管理規約に変更する方法もありますが、管理規約の変更は総会での特別決議で、区分所有者及び議決権数の各四分の三以上の賛成が必要ですので、実質的にはかなり困難であると思われます(区分所有法第三一条第一項)。ただし本問マンションでは、多数の未販売住戸があることが原因ですので、管理規約の変更に協力してくれるようマンション事業主に相談されてはいかがでしょうか。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2012年2月掲載

総会で決議されていない使用細則の暫定運用は可能か

新たに使用細則を制定または変更を検討する際に、実際の運用面での問題点を検証するため、理事会の判断により暫定運用を実施しても問題ないでしょうか。

使用細則等の制定に関する手続きは、マンション管理規約の定めに従うこととなります。国土交通省が作成したマンション標準管理規約では、使用細則等の制定または変更を行うためには総会決議が必要としており(第四八条第四号)、理事会には総会議案を作成する権限が与えられています(第五四条第二号)。
 したがって、その効用を確認するための暫定運用だとしても、理事会の決議で使用細則を制定または変更することは管理規約違反となってしまいます。
 しかしながら、総会で決議された使用細則を実際に運用すると、事前に想定していなかった問題点が生じる場合もあるでしょう。そのような事態を避けるためには、まず理事会で使用細則案を作成し、その案を組合員に配付し意見を求め、その意見に基づいて修正した使用細則案をもって総会決議に諮ると良いでしょう。
 集合住宅である分譲マンションにとって、使用細則は居住者の日常生活にかかわる大切なルールです。より多くの組合員の理解が得られるよう、マンションに適した細則の整備に努めることが重要です。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2012年7月掲載

亡くなった理事長の子息が新理事長に就任するには

理事をしています。先日、在任中の理事長がお亡くなりになられました。生前の故人が病床につかれてからは、理事長の実務は同居するご子息が代行されていました。現役員の任期は半年程残っており、理事会としてはご子息に新理事長への就任を依頼したいと考えていますが、どのような手続きが必要でしょうか。

管理組合の役員の選任や補充、役職の決定に関する手続きは、管理規約の定めに従って行います。
 国土交通省が作成したマンション標準管理規約では、理事及び監事は組合員のうちから総会で選任し、理事の役職については理事の互選によると規定しています(第三五条第二項、第三項)。
 したがって、役員を補充する場合には、必ず総会の決議を経る必要があります。
 ただし、役員の選任については規約で任意の定めができるため、マンションによっては役員に欠員が生じた場合に理事会の決議で補充することができるなど、マンション標準管理規約と異なる内容になっていることもありますので注意が必要です。
 本問の管理組合の規約がマンション標準管理規約の内容に準じている場合、逝去された前理事長のご子息に新理事長に就任いただくには、次の手続きが必要となります。
(1)相続にて、当該マンションの区分所有者となる。
(2)総会にて、役員選任の承認を得る。
(3)理事の互選により新理事長に選任する。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2012年12月掲載

理事長が総会で決議した 訴訟提起の原告となることを拒否した場合について

マンションの副理事長をしています。管理費の高額滞納者に対して訴訟を提起することが総会にて決議されましたが、理事長が原告となることをかたくなに拒否しています。「副理事長は、理事長を補佐し、理事長に事故があるときは、その職務を代理し、理事長が欠けたときは、その職務を行う」という管理規約の定めに基づき、副理事長である私が原告となり訴訟を提起することは問題ないでしょうか?

管理規約の定めは、「理事長が病気やけが等で理事長としての職務を遂行することができない場合に、副理事長が理事長の職務を代理する」という職務についての代理権限を定めたものであって、副理事長が理事長に代わって管理者となる地位についての資格権限を定めたものではありません。
 区分所有法第二六条第四項の規定では、総会の決議により区分所有者のために裁判の原告となることができるのは管理者の地位にあるものとされていますので、管理者でない副理事長が原告となることはできないことになります。
 本問では、現理事長が総会決議による職責を果たせないことから辞任され、理事会で新理事長を選任したうえで、新理事長が原告となって訴訟を提起することになります。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2013年5月掲載

監事が収支決算案を承認しない場合の議案上程について

理事長をしています。通常総会の開催にあたり、管理組合の収支決算案について監事の会計監査を受けたところ、会計処理のミスについて指摘した監査意見書が提出され、収支決算案については承認されませんでした。会計処理のミスについては修正しましたが、監事は追加承認を拒否しています。このような場合、理事会は監事の承認を受けていない収支決算案を総会に議案上程することはできるのでしょうか?

マンション標準管理規約第五九条では、「理事長は、毎会計年度の収支決算案を監事の会計監査を経て、通常総会に報告し、その承認を得なければならない」とされています。
 この規定によれば、監事の会計監査を経て通常総会に議案を上程することが求められていますが、監事の承認を得ることまでは議案を上程する条件とされていません。
 そのため、監事の不承認が、議案の上程を妨げられるものではありません。
 ただ理事会としては、規約に基づいて監事の会計監査を経て監査意見書が提出されたことと、上程される収支決算案は監事が不承認であることを明示した上で、総会議案書に監査意見書を添付するなど、組合員が当該議案に対して適切に意思表示できるように対応する必要があるでしょう。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2013年6月掲載

区分所有者の特定について

理事長をしています。総会開催のため、区分所有者に対し案内を配付しようとしていますが、ある住戸については転売された形跡があり、現在の区分所有者について特定できていません。管理組合としてどのような対応を取れば良いのでしょうか?なお、当マンションの管理規約は標準管理規約に準じています。

マンション標準管理規約第三一条(届出義務)では、「新たに組合員の資格を取得し又は喪失した者は、直ちにその旨を書面により管理組合に届け出なければならない」とされていますので、理事長はこの届出に基づき、その者を区分所有者と判断することとなります。この届出義務は各区分所有者にあり、管理組合が区分所有者を特定する調査を行う義務はありません。
 よって所有者変更の届出が区分所有者より行われない限り、理事長は従来の区分所有者に総会の通知をすれば足りると考えられます。
 ただし、総会の決議が区分所有者の権利に関わる決議を行う場合、例えば、建替え等の重要事項の決議である場合は、より慎重な対応が求められます。
 この場合は、全区分所有者の区分所有権を確認する必要があり、登記簿を取得のうえ組合員名簿との照合を行い、組合員の名前と登記簿の名義が異なる場合は、現に区分所有権を有していることについて確認を求めるなどの調査を行うのが良いでしょう。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2013年8月掲載

監事が招集した臨時総会の議長について

監事をしています。管理組合の業務の執行について不正があると認められたため、臨時総会を招集しようとしています。この臨時総会の議長は誰が務めるべきなのでしょうか?

マンション標準管理規約は第六章第三節に「役員」の規定を設け、同第三五条には、管理組合に理事(理事長、副理事長等)と監事とを総会で選任することを規定しています。
 そして、同第四〇条に、「理事は、理事会を構成し、理事会の定めるところに従い、管理組合の業務を担当する」とし、また、同第四一条第二項で「監事は、管理組合の業務の執行及び財産の状況について不正があると認めるときは、臨時総会を招集することができる」と規定しています。
 本問は、理事会が行う管理組合の業務に不正があった場合に、監事によって招集された臨時総会の議長を誰が務めるべきかという問題です。
 そこで、総会の議長は誰が務めるかについては、同第四二条第五項に「総会の議長は、理事長が務める」と定めていますが、監事が臨時総会を招集する場合の議長について標準管理規約では特段の定めをしていません。
 しかし、組合員による臨時総会においては、同第四四条第三項に「前二項により招集された臨時総会においては、第四二条第五項にかかわらず、議長は、総会に出席した組合員の議決権の過半数をもって、組合員の中から選任する」と規定しています。
 その趣旨は、組合員による臨時総会の招集の場合に、理事長が議長を務めることになると、その議事運営の公正さに疑念が生じるからと思えます。
 一方、区分所有法第四一条では「集会においては、規約に別段の定めがある場合及び別段の決議をした場合を除いて、管理者又は集会を招集した区分所有者の一人が議長となる」と定めていて、議長は管理者である理事長又は総会を招集した監事のどちらかが務めることができることになっています。
 ところで、本問は、監事が理事会の実施する管理組合の業務の執行状況について不正があると認めて臨時総会を招集しているため、その総会の議長を理事長が務めるのは、組合員による臨時総会の招集の場合と同様に、理事長が行う議事運営の公正さに疑念を払拭することができません。そこで、本問のようなケースでは、監事が臨時総会の議長を務めることが最も適正であるといえます。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2013年12月掲載

総会決議にて理事長は理事会の決議に拘束されるのか

理事長をしています。理事会にて玄関の横にある植栽を撤去して、その場所にスロープを設置することを検討しています。私自身はこの案には反対なのですが、理事会では理事の過半数の賛成により可決され、次回の総会の議案として上程することとなりました。理事会で可決されている以上、理事長である私は総会では賛成票を投じなければならないのでしょうか?

理事長は、一般的に、共用部分を保存し、集会の決議を実行し、規約に定められた行為を行う権利を有し、義務を負う地位にあります(区分所有法第二六条参照)。
 また、標準管理規約第三七条第一項には「役員は総会及び理事会の決議に従い、組合員のため、誠実にその職務を遂行するものとする」と定めがあり、本問のマンションの規約にこの定めがあるのが通常であり、この規定により、総会招集権者であり、議案の提案者である理事長は、理事会の決議を誠実に遂行する義務があるため、総会で反対票を投じることはできないと考えるべきです。
 一方、仮に、規約にこの定めがない場合は、理事長は、賛成票を投じる義務があると考えるべきです。
 なぜなら、理事長は、総会を招集し、理事会決議の議案の提案者であることから、理事長の意見と理事会の決定が異なることは議事運営にも好ましいことではなく、殊に該当議案に賛成する意思で理事長宛てに委任状を提出してくる組合員の意思と齟齬することも考えられ、理事長が反対票を投ずることはできないと考えます。
 なお、理事長の意向と理事会の決議とが異なることは、総会の議事運営やその後の決議の実行にも影響することがあり、理事会内にて内容をよく協議し、意見を一つにまとめてから総会議案として上程することが求められます。
 そして、理事会内でどうしても意見がまとまらず、理事長が総会で反対票を投じる意思を変えることができない場合は、理事長を辞任し、新たな理事長のもとで総会を招集し、総会を開催することが最も適正なことといえます。
 しかし、理事長が辞任もされず、総会が招集される場合には、委任者の意思と受任者の議決権の行使が齟齬することのないように、あらかじめ理事会が決議し、総会に議案を上程するに至った経過や理事長が該当議案に反対であることの経過報告を総会議案書等に記載し、全組合員に通知しておく必要があるでしょう。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2014年1月掲載

複数の議決権を保有する者が議決権を分割して行使することはできるか

理事長をしています。通常総会の開催にあたり、二住戸(二議決権)を所有する組合員から、ある議案の議決権について、自己の所有する議決権を分割し、二人の代理人を立てても良いかとの問い合わせがありました。理事長としてこれを認めても良いのでしょうか?当マンションの管理規約では、一住戸一議決権と定めています。

区分所有法には今回のケースに関する明確な規定はありませんが、議決権の行使は総会議案に対する組合員個人の意思表示であり、一人の組合員の意思は議決権の保有数に関わらず統一された一個のものであるべきと考えられます。
 区分所有法第三九条第一項では「集会の議事は、この法律又は規約に別段の定めがない限り、区分所有者及び議決権の各過半数で決する」と定めていますが、これは管理組合が区分所有者の集合体であることから、共同の利益を維持する上で、持分割合のみならず組合員の数をも考慮することとしたものです。議決権の数に応じて複数の代理人を認めた場合、議決権数と組合員数が事実上同義となり、上記の趣旨が損なわれることになります。
 また、区分所有法第四〇条では「共有者は、議決権を行使すべき者一人を定めなければならない」としており、同法においても、議決権の分割行使は想定していないと考えられます。
 以上の点を考慮すると、一人の組合員が自己の所有する議決権を分割し複数の代理人を立てることはできないといえます。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2014年2月掲載

組合員名簿の閲覧を拒否できる正当な理由の範囲はどこまでか

マンションの一般組合員です。理事長の目にあまる職務怠慢があるため、管理規約に基づき組合員総数および議決権総数の五分の一以上の組合員の同意を得て、理事長解任を決議とする臨時総会の招集を理事長に請求したところ、理事長はこれを拒否しました。臨時総会を直接招集するために、理事長に組合員名簿の閲覧を求めたところ拒否されたためマンション管理会社に名簿の閲覧を求めましたが、理事長の許可がなければ応じられないとの回答がありました。組合員名簿の閲覧を拒否できる正当な理由の範囲はどこまでなのでしょうか。

区分所有法では組合員名簿の閲覧については特に規定していませんが、管理規約で規定していることが一般的です。マンション標準管理規約第六四条では「理事長は、会計帳簿、什器備品台帳、組合員名簿及びその他の帳票類を作成して保管し、組合員又は利害関係人の理由を付した書面による請求があったときは、これらを閲覧させなければならない。この場合において、閲覧につき、相当の日時、場所等を指定することができる」と定められています。
 規約で上記のような定めがある場合、理事長が正当な理由なく組合員名簿の閲覧を拒否することは職務違反となります。閲覧を拒否することができる正当な理由としては次のことが考えられます。
(1)組合員名簿情報に基づき社会通念上許容される範囲を超える電話・訪問・文書配布等を執拗に行うことが予測される場合
(2)目的が不明確又は個人的な情報収集である場合
(3)深夜又は早朝の閲覧請求の場合
などです。
 なお、管理会社は閲覧書類の保管当事者ではなく、管理組合との管理委託契約に基づき組合員情報を取り扱っている立場ですので、管理組合(理事長)の許可がなければ入居者名簿の閲覧に応じることはできないでしょう。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2014年3月掲載

集会室を用途変更する場合の総会の決議要件は

理事長をしています。当マンションには集会室が設けられていますが、利用が少ないので、かねてから要望が多く出ているスタディールームに変更することを検討しています。この変更に伴い個別ブースを設置するための内装工事と、机・イス等の備品購入が必要となりますが、総会決議は普通決議で問題ないのでしょうか。なお、当マンションの管理規約は標準管理規約に準じており、集会室の利用方法については、使用細則に規定しています。

マンション標準管理規約第一三条では、「敷地及び共用部分等は通常の用法に従って使用しなければならない」と定められており、使用細則で定めることができる事項は、この「通常の用法」の具体的な内容になります。
 今回のように、個別ブースを設置することにより、集会室として使用できなくなるような用途の変更が生じる場合は、特別決議により総会決議を行うことが適切だと考えられます。
 ところで、個別ブースの設置工事も、外部に騒音が漏れない内装工事を要するカラオケ室や音楽室の設置などの場合以外は、近時、取り外しの可能な間仕切り設備の内装工事が可能となっていますので、集会室として利用できる工事方法も可能かと思われます。
 本問では、現在集会室がどのように利用され、スタディールームの構造も定かではありませんが、集会室は、もともと、種々な利用方法を想定して設置されているものですから、仮に、スタディールームとしての使用の必要性が強いとしても、室内の構造自体を固定してしまうことは、できるだけ避けることが肝要と思われます。そして、室内の構造自体を固定的に変更するのでなければ、「通常の用法」に変更があるとまでいえませんので、管理規約の変更に該当しませんから、普通決議で議決すればよく、特別決議を要しないことになります。
 なお、「通常の用法」の変更がある場合で、管理規約に規約共用部分として「集会室」の存在が明記されているときは、「用法変更」の特別決議とともに、規約の内容変更も特別決議を行うことを留意してください。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2014年4月掲載

外部所有者に協力金を求めるとする規約変更には外部所有者の承諾が必要か

理事長をしています。当マンションの管理規約では「役員は現にマンションに居住する組合員のうちから選任する」と定められていますが、外部所有者が増加し、組合運営に関わる負担の不公平を解消するため、外部所有者に対し一定の協力金の負担を求めるように規約の内容を変更することを検討しています。区分所有法第三一条では「規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない」と定められていますが、今回の規約変更には、外部所有者の承諾を得る必要はあるのでしょうか。

外部所有者に対して協力金の負担を新たに規定した規約変更について、最高裁の判例によれば、「規約変更の必要性及び合理性と、外部所有者が受ける不利益の程度などを比較衡量し、外部所有者の受忍限度内にあり、特別の影響を及ぼすまでとはいえない」と説き、規約変更の法的効力を認めた判例があります。
 しかし、管理組合の構成や規模、外部所有者の状況(戸数や組合活動への関わり方など)、管理費等の額等さまざまな条件により、「特別の影響」の有無が判断されることになるため、一概に上記最高裁判例に照らして、外部所有者の承諾なしに規約変更を行うことが認められるものではありません。
 外部所有者に協力金等を負担させる規約変更は、法的紛争を避けるために、できる限りその承諾を得て規約の変更手続きを行うべきであり、慎重に検討する必要があるでしょう。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2015年1月掲載

ケーブルテレビ設備を更新する場合の総会の決議要件は

共用部分のケーブルテレビ設備が老朽化したため、ケーブルテレビ会社の費用負担にて、設備を更新することになりました。総会の決議要件はどう考えたらよいでしょうか。なお、本マンションの規約はマンション標準管理規約に準拠した内容になっています。

マンション標準管理規約第四七条では、共用部分等の変更については特別決議としていますが、「その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く」とされており、その場合は普通決議で足りることとされています。
 設備更新が形状または効用の著しい変更を伴うかどうかということがポイントとなりますが、通常ケーブルテレビ設備は、外観上に影響をほとんど及ぼしていないでしょうし、更新ということから効用の変更ということにも当たりません。
 よって、今回のケースでは、普通決議で足りると考えてよいでしょう。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2015年8月掲載

役員に就任しない場合の役員免除金の徴収について

当マンション管理組合では、輪番制で役員に就任することとなっていますが、順番が回ってきても役員に就任しない人がいて困っています。役員に就任しない人から、役員免除金を徴収してはどうかと考えていますが、問題ないでしょうか。

本問の役員免除金制度は、役員に就任する組合員と就任しない組合員との間に生じる不公平さを軽減することを目的とするものです。
 役員免除金を課すことは、区分所有者間の利害の調節に関する事項となりますので、管理規約の改定が必要です。(区分所有法第30条)
 また、管理規約の改定をする場合、一部の所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときはその承諾を得なければならないとされています。(区分所有法第31条)
 本問の場合の「特別の影響を及ぼすべきとき」に該当するか否かを判断する事項としては、役員就任が困難な外部組合員等の人数、必要とされる役員の活動内容、役員免除金の額等が考えられます。
 そこで、これらの考慮事項を総合的に判断し、管理規約の改定(役員免除金制度)が役員就任の困難な外部組合員等が受忍すべき限度を超えるものではないと判断される場合に「特別の影響を及ぼすべきとき」に該当しないとし、管理規約改定議案の決議にあたって、役員就任が困難な外部組合員等の承諾を得る必要がないことになります。
 このように、受忍すべき限度の範囲とは、個別の事案毎に総合的に判断されることであり、そこに明確な基準はありません。
 そこで、役員免除金制度の導入にあたっては、決議後の係争を防止する観点からも役員就任が困難な外部組合員等に十分な理解を得ることが必要です。
 また、標準管理規約第37条2項では、「役員は、別に定めるところにより、役員としての活動に応ずる必要経費の支払と報酬を受けることができる。」とされています。この規定により、就任した役員に対して役員に報酬を支払うことで不公平さの軽減を図ることも一つの方法です。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2016年2月掲載

2つの選択肢を総会議案に上程する方法について

大規模修繕工事の仕様について2つの案があり、どちらの案を採用するかについて理事会で決めかねることから、2つの案から選択する内容の総会議案を上程しようと考えているのですが問題ないでしょうか。

2つの案を総会議案に上程する方法として、議案を複数に分け各案ごとの議案とする方法が考えられます。
 A案を第1号議案、B案を第2号議案とし、第1号議案が可決された場合、第2号議案は審議せずにA案で決定とします。また、第1号議案が否決された場合、第2号議案を審議します。そこで、第2号議案が可決されればB案で決定とし、否決された場合は、大規模修繕工事の実施が否決されたこととなります。
 このような議案とする場合、第2号議案には、第1号議案が可決された場合、本議案は審議せず廃案とする旨をあらかじめ記載しておく必要があるでしょう。
 ただし、このような議案は一般的でないことから、議決権行使者が誤って両議案共に賛成とすることがないよう、議案書を明快な内容とすることに、特に配慮しておくべきでしょう。
 管理規約に定める総会の決議要件は、理事会で承認された議案に対して賛否を問うことを前提としており、複数の案から選択することは想定していないと思われます。
 住民アンケートの結果を参考にする等の方法で、理事会で1つの案を定めてから、総会議案とすることが望ましいでしょう。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2016年3月掲載

耐震補強工事の総会の決議要件は

理事長をしています。当マンションは、昭和55年の竣工で旧耐震基準の建物であることから、理事会で耐震補強工事を検討しています。施工会社と協議を重ね、ようやく工事内容および金額が確定したため、臨時総会を開催しようと考えています。耐震補強工事の総会決議要件は、普通決議で問題ないでしょうか。なお、当マンションの管理規約は標準管理規約に準じています。

耐震補強工事は、共用部分の変更行為となり、「区分所有法」においては次の定めがあります。
 「共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く)は、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数による集会の決議で決する」(第17条第1項)
 したがって、耐震補強工事の総会決議要件は、その工事内容が「形状又は効用の著しい変更」を伴うか否かによることとなります。
 耐震補強工事の内容が「柱や梁にシートや鉄板を巻きつけて耐震性を高める工事」のような建物の基本構造の変更を伴わない工事の場合は、形状又は効用の著しい変更とはいえず、普通決議(総会に出席した区分所有者の議決権の過半数の賛成)で足りるでしょう。
 工事内容が「柱の下部を切断し免震のための部材を挿入する工事」のような建物の基本構造の変更を伴う工事の場合は、形状又は効用の著しい変更と考えられ、特別決議(区分所有者及び議決権の各4分の3以上の賛成)を要するでしょう。
 一方で、「耐震改修促進法」においては、『所管行政庁が、区分所有建築物の耐震性について国土交通省の定める基準に適合していないと認定した場合、区分所有法第17条第1項の「区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数による集会の決議」を「集会の決議」とする』旨が規定されています(第25条)。
 この規定により、耐震性が不足し耐震改修が必要とされると所管行政庁が認定した区分所有建築物の場合は、基本構造の変更を伴う耐震補強工事であっても普通決議で足りることとなります。
 なお、上記の認定を受けるためには、管理者(理事長)による所管行政庁への申請が必要です。申請手続きについては、施工会社等に相談するとよいでしょう。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2017年1月掲載

理事会の書面決議について

理事長をしています。理事会を開催したいのですが、理事のスケジュールが合わないため、なかなか開催することができません。理事会で決定したい事項を事前に理事に通知し、理事の書面による承認を得ることで理事会決議とすることはできないものでしょうか。なお、当管理組合の管理規約は、標準管理規約に準じています。

標準管理規約では、理事会の会議および議事について、以下のとおり、コメントされています。
 『理事会には本人が出席して、議論に参加し、議決権を行使することが求められる』(コメント第53条関係(1)後段)
 『理事の代理出席(議決権の代理行使を含む。以下同じ)を、規約において認める旨の明文の規定がない場合に認めることは適当でない』(コメント第53条関係(2))
 つまり、管理規約に明文化しない限り、理事会の書面決議は認められないということです。
 逆に言えば、管理規約を定めることで理事会の書面決議は可能となりますが、書面決議が常態化し、理事会での議論が十分になされなくなることが懸念されますので、理事会の書面決議の導入は、慎重に検討するべきでしょう。
 また、書面決議を導入する場合も、書面決議で承認することのできる事項を、区分所有者からのリフォーム申請に対する承認決議等に限定するなど、書面決議を部分的に導入することも考えられます。
 さらに、管理規約を定めることで理事の代理出席は可能となりますが、上記のとおり、理事会の決議は、理事本人が出席して議論に参加して議決権を行使することが重要であり、代理出席の導入も慎重に検討するべきです。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2017年3月掲載

窓ガラスの変更を理事会の決議で承認できるか

理事長をしています。当マンションでは、各住戸の共用廊下側の窓ガラスは不透明タイプとなっています。区分所有者より、自分で費用負担をするので、窓ガラスを透明タイプに変更したいとの申し入れがありました。理事会の決議にて窓ガラスの変更を承認してもよいものでしょうか。なお、当マンションの管理規約は標準管理規約に準じています。

標準管理規約では窓ガラスを共用部分としています(標準管理規約第7条第2項第3号)。これは、窓ガラスは建物の外観に影響を及ぼす部分であることから、区分所有者による加工等外観を変更する行為を禁止するという趣旨によるものです。そして、共用部分の変更については総会決議事項とされていますので、理事会の決議で窓ガラスの変更を承認することはできません(標準管理規約第48条第6号)。
 なお、不透明ガラスを透明ガラスに変更することは外観に影響を及ぼしますが、形状又は効用の著しい変更を伴うとはいえないでしょうから、総会の決議要件は普通決議でよいでしょう(標準管理規約第47条第3項第2号)。
 一方で、標準管理規約では、窓ガラスを複層ガラスに変更する等の住宅の性能の向上に資する開口部に係る工事については、理事会の承認により当該区分所有者の責任と負担において実施することができるとしていることから(標準管理規約第22条第2項)、開口部の工事の承認に関する細則を定めることも一つの方法です。
 開口部に係る工事について、外観への影響を考慮し承認する工事仕様等を細則に定め、その細則について総会の承認を得ておくのがよいでしょう。以後は、細則に定めた基準で工事申請の可否を理事会で判断することとなります。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2017年6月掲載

監事の理事会出席について

管理組合の理事長をしています。当マンションの管理規約には、「監事は、理事会に出席し、必要があると認めるときは、意見を述べなければならない」との条文があるのですが、監事が出席できない日に理事会を開催してはならないということなのでしょうか。当マンションの管理規約は、標準管理規約に準じています。

ご質問の条文は、平成28年3月の標準管理規約の改正により、変更された条文です。
 旧標準管理規約では、「監事は理事会に出席して意見を述べることができる」と、「できる規程」として定められていましたが、監事による監査機能強化のために、理事会への出席義務を課すとともに、必要があるときは、意見を述べなければならないとされたものです。
 なお、標準管理規約における理事会の成立要件は「理事の半数以上の出席」とされており(第53条第1項)、そこに監事の出席は含まれていません。したがって、監事が理事会に出席しないことは、理事会の成立及び決議の有効性に影響を及ぼすものではありません。
 監事の権限の明確化・監査機能の強化は、平成28年3月の標準管理規約改定の大きなポイントの1つで、理事による管理組合財産の横領事件等の多発を受け対応したものです。
 ご質問の条文の趣旨に則り、公正な組合運営を担保するために、監事が出席できない日に理事会を開催することはできるだけ避けるべきでしょう。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2017年10月掲載

バリアフリー工事の総会の決議要件は

管理組合の理事長をしています。当管理組合では、居住者の高齢化が進んでいることから、エントランス前の階段にスロープを併設し、手すりを追加するバリアフリー工事の実施を検討しています。理事会にて、バリアフリー工事を次回通常総会の議案とすることを決議したのですが、監事より当該工事は共用部分の変更を伴うため、特別決議が必要との指摘を受けました。バリアフリー工事の総会決議は特別決議を必要とするのでしょうか。当マンションの管理規約は、標準管理規約に準じています。

共用部分の変更について、区分所有法及び標準管理規約では、「形状又は効用の著しい変更を伴う」場合に特別決議(区分所有者及び議決権の各4分の3以上の決議)を要するとしています(区分所有法第17条、標準管理規約第47条第3項)。
 そして、共用部分の変更が、形状又は効用の著しい変更を伴うとするか、伴わないとするかについては、変更箇所及び範囲、変更の態様及び程度等を総合して判断されることとなります。
 一般的にスロープや手すりを追加する工事は、建物の基本的構造部分を取り壊す等の加工を伴うものではありませんので、共用部分の形状又は効用の著しい変更とは判断されないでしょう。
 したがって、ご質問のバリアフリー工事については、特別決議を必要とせず、普通決議で問題ないと考えられます。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2017年11月掲載

理事長が理事会の招集の請求に応じない場合は

管理組合の副理事長をしています。当管理組合は、高額滞納者への対応や駐輪場不足の問題等、課題が山積していることから、理事長に理事会の開催を要求していますが、忙しいとの理由で理事会を招集しようとしません。どのようにすれば、理事会を開催できるでしょうか。当マンションの管理規約は標準管理規約に準じています。

標準管理規約では、理事による理事長への理事会の招集の請求について、次の定めがあります。
 「理事が○分の1以上の理事の同意を得て理事会の招集を請求した場合には、理事長は速やかに理事会を招集しなければならない」(第52条第2項)
 「前項の規定による請求があった日から○日以内に、その請求があった日から○日以内の日を理事会の日とする理事会の招集の通知が発せられない場合には、その請求をした理事は、理事会を招集することができる」(第52条第3項)
 まずは、これらの定めにより、他の理事の同意を得て、理事長に対し理事会の招集を求め、それでも理事長が理事会を招集しない場合は、自身で理事会を招集するとよいでしょう。
 また、今後も同様のことが考えられますので、標準管理規約第35条第3項により、理事会決議をもって、他の理事を理事長に、現理事長を理事に役職変更し、新理事長を中心とした理事会運営を行うことも考えられるでしょう。
【標準管理規約第35条第3項】
 理事長、副理事長及び会計担当理事は、理事のうちから、理事会で選任する。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2018年1月掲載

理事会の決議で理事長を解任することができるか

管理組合の理事長の解任は、理事会の決議で可能であると聞きました。どのようなことでしょうか?

2017年12月18日に最高裁にて理事長を理事会決議で解任可能との判断が示されました。
 詳細は次のとおりです。
 本件は、理事会決議による理事長解任の可否について争いとなっていたものです。
 原審(高裁)においては、本件管理組合の管理規約における「理事長を理事の互選により選任する」旨の条文は解任についての定めでないことと、「役員の選任及び解任」が総会決議事項となっていることを根拠とし、理事会での理事長解任決議は管理規約に違反しており認められないと判断をしていました。
 これに対し、最高裁は、以下のような判断を示し、「原審の上記判断は是認できない」として原審に審理を差し戻しました。
(1)区分所有法第25条第1項において「規約に別段の定めがない限り集会の決議によって、管理者を選任し、又は解任することができる」と定められており、集会の決議以外の方法による管理者(理事長)の解任を認めるか否か及びその方法については管理規約に委ねられていると解されること。
(2)本件管理規約において「役員の選任及び解任」を総会決議とする一方で、「理事長を理事の互選により選任する」と定めており、これらの条文は、理事長を理事が就く役職の一つと位置づけ、総会で選任された理事に対し、原則として、その互選により理事長職に就く者を定めることを委ねていると解されること。
(3)(1)(2)から、理事の互選により選任された理事長につき、本件管理規約第40条第3項に基づいて、出席した理事の過半数の一致により理事長の職を解くことができると解するのが相当であること。
 このように、最高裁は、理事会の決議により理事長職を解き、理事としたことは本件管理規約違反とはならないと判断したのです。
 本件管理規約の関連条文は標準管理規約に準じた条文となっていますので、標準管理規約に準じた管理規約となっているマンションでは同様の判断となると解されます。
(当該管理組合の管理規約条文抜粋)
第40条第1項 管理組合にその役員として理事長及び副理事長を含む理事並びに監事を置く。
第40条第2項 理事及び監事は、組合員のうちから総会で選任する。
第40条第3項 理事長及び副理事長等は、理事の互選により選任する。
第43条第2項 理事長は、区分所有法に定める管理者とする。
第53条第13号 役員の選任及び解任については、総会の決議を経なければならない。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2018年2月掲載

高圧一括受電方式を導入する場合の総会の決議要件は

管理組合の役員をしています。私のマンションでは、各戸がそれぞれ電力会社と低圧電力の使用契約をしています。このたび、電気料金が割安となる高圧一括受電方式を私のマンションに導入しようと考えています。導入については総会で普通決議の承認をとることで足りるでしょうか。

まず、高圧一括受電方式を導入するためには、マンション共用部分の電気設備の変更が必要となります。そのため、規約に別段の定めがない限りは、区分所有法第17条第1項の「区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数による集会の決議」が必要と考えられるでしょう。
 さらに2016年4月以降の電力自由化により、居住者は個人の意思で自由に電力会社を選ぶことができます。そのため現在、自身に金銭的メリットの出る電力会社と個別契約をしている所有者の方もいると予想されます。このことから、区分所有法第17条第2項の「共用部分の変更が専有部分の使用に特別の影響を及ぼすべきとき」に該当すると考えられるため、所有者全員の承諾も得ておいた方が良いでしょう。
 近年では電力の自由化に伴い、各戸によって電力契約についての考え方がそれぞれ異なることも予想されますので、総会の前に説明会等でメリット、デメリットを説明し、組合員の意思統一を図っておくことが望ましいでしょう。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2018年7月掲載

管理組合法人の監事が総会で理事の解任を決議することを認めた裁判について

管理組合法人の監事が、総会で理事の解任を決議することを認める裁判があったと聞きました。どういうことでしょうか。

2018年9月25日、管理組合法人の監事が、理事の解任を議題にして臨時総会を招集し、決議することを、東京高裁が認める判断を示しました。
 本件は臨時総会決議により解任された理事4人が、前橋地裁に地位保全の仮処分を申請、前橋地裁が却下したのに対して3人が抗告(裁判所の決定に対する不服を上級の裁判所に申し立てること)し、そのうち2人の抗告棄却を東京高裁が決定しています。
 解任された理事の主張は「監事は、報告のための臨時総会招集権はあるものの、区分所有法や管理規約上、理事解任決議案を提出して総会で採決させる権限は全くない、決議は違法な手続きによるものだから無効」だというものでした。
 本件団体は管理組合法人で、区分所有法第50条(監事)の規定が適用されます。規定によれば、監事の職務は「財産の状況または業務の執行について、法令もしくは規約に違反し、または著しく不当な事項があると認めるときは、集会に報告をすること、報告をするため必要があるときは、集会を招集すること」とあり、「監事の総会招集権は、集会(総会のこと)に報告するためのものであって、理事解任を決議することはできない」との解釈が可能です。
 一方で、管理規約には「監事は、管理組合の業務の執行および財産の状況について不正があると認めるときは、臨時総会を招集することができる」との標準管理規約と同様な規定がありました。
 これについて裁判所は、区分所有法と管理規約の条文の違いを指摘して、監事の総会の議案提出、決議を求めることについて以下の通りの判断を示しました。
・区分所有法の規定は強行規定ではなく、管理規約で異なる規定を置くことも許される
・本件管理組合法人の管理規約によると、臨時総会の招集については、報告のみに限られず、不正な業務執行等に関わる理事の解任等、自ら必要と考える対応策を議案として提出することもできる、と解釈することが可能
・以上のことから、本件に係る監事による総会招集、並びに議案の決議は有効である
 以上により、標準管理規約と同様な規定があれば、監事は「管理組合の業務の執行および財産の状況について不正がある」時に、自ら必要と認める議案を提出し、その決議を求めることができると解されます。
 参考に、本件は管理組合法人でしたが、管理組合法人でない場合は、区分所有法第50条(監事)の規定が適用されません。

区分所有法
(監事)
第50条 管理組合法人には、監事を置かなければならない
2 監事は理事または管理組合法人の使用人と兼ねてはならない 
3 監事の職務は、次のとおりとする
一 管理組合法人の財産の状況を監査すること
二 理事の業務の執行の状況を監査すること
三 財産の状況または業務の執行について、法令もしくは規約に違反し、または著しく不当な事項があると認めるときは、集会に報告をすること
四 前号の報告をするため必要があるときは、集会を招集すること
(以下 略)

マンション標準管理規約
(監事)
第41条 監事は、管理組合の業務の執行および財産の状況を監査し、その結果を総会に報告しなければならない
2 監事は、いつでも、理事および第38条第1項第2号に規定する職員に対して業務の報告を求め、または業務および財産の状況の調査をすることができる
3 監事は、管理組合の業務の執行及び財産の状況について不正があると認めるときは、臨時総会を招集することができる
4 監事は、理事会に出席し、必要があると認めるときは、意見を述べなければならない
5 監事は、理事が不正の行為をし、もしくは当該行為をする恐れがあると認めるとき、または法令、規約、使用細則等、総会の決議もしくは理事会の決議に違反する事実もしくは著しく不当な事実があると認めるときは、遅滞なく、その旨を理事会に報告しなければならない
6 監事は、前項に規定する場合において、必要があると認めるときは、理事長に対し、理事会の招集を請求することができる
7 前項の規定による請求があった日から5日以内に、その請求があった日から2週間以内の日を理事会の日とする理事会の招集の通知が発せられない場合は、その請求をした監事は、理事会を招集することができる

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2018年12月掲載

あらかじめ通知していない事項についても決議できるようにすることは可能か

当管理組合の、毎年の通常総会では、多くの区分所有者の皆さまに出席いただき、活発な議論が交わされています。そういった中で、総会では「あらかじめ通知した事項のみしか決議ができない」ため、もどかしい思いをすることがよくあります。多忙な中お集まりいただいた貴重な場なので、出席された方の意見がよいものであれば、あらためて総会を開くのではなく、その場で決議すれば柔軟で効率的な管理組合運営ができると考えています。当管理組合はマンション標準管理規約に準拠しており、「あらかじめ通知した事項についてのみ、決議することができる」との規定があります。あらかじめ通知していない事項についても決議できるようにしたいと考えていますが可能でしょうか。

マンション標準管理規約では、第47条(総会の会議及び議事)に「10 総会においては、第43条第1項によりあらかじめ通知した事項についてのみ、決議することができる」と規定されています。また、区分所有法には以下の通りの規定があります。
(決議事項の制限)
  第37条
1.集会においては、第35条の規定によりあらかじめ通知した事項についてのみ、決議をすることができる。
2.前項の規定は、この法律に集会の決議につき特別の定数が定められている事項を除いて、規約で別段の定めをすることを妨げない。
3.(省略)
※集会とは、総会のことを指します。
 マンション標準管理規約第47条第10項の規定は、この区分所有法第37条第1項を確認的に規定したものです。その一方で、区分所有法第37条第2項では「特別多数決議事項」を除けば、「規約で別段の定めをすることを妨げない」と規定しています。したがって、「あらかじめ通知していない事項についても決議できる」という趣旨を管理規約に規定すれば、「特別多数決議事項」を除き、あらかじめ通知していない事項についても決議することが可能です。
 ただし、管理組合の運営においては総会で議論を交わして意思決定することが原則であることや、区分所有法の趣旨を踏まえると、あらかじめ通知していない事項の総会決議は極力避けるべきでしょう。また、別段の規定を定める場合も、「議長や一部の出席者による恣意的な総会運営」がされたり、「総会欠席者が事前に知らされていない事項について思わぬ決定がされてしまう」などのトラブルが発生することが懸念されます。
 そこで、「特別多数決議事項」を除外することは当然のこととして、誰もが予測可能な範囲に限定された、例えば緊急的・応急的な事項や通知された事項に関連する事項に限るなどの規定にしたり、一部の区分所有者の利害にかかわる事項を除外した規定にするなどの配慮が必要です。
 なお、この規定の制定は、規約改正の手続きを要することは言うまでもありません。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2019年4月掲載

入居者名簿を全戸で共有することは可能か

マンション管理組合の理事長をしています。当管理組合では、緊急時に備えて各住戸の入居者名簿を作成して管理していますが、このたび、大規模災害の発生等、緊急時に備えて入居者名簿を全戸で共有しておくべきではないか、との意見が寄せられました。管理組合として入居者から預かっている個人情報をどのように取り扱うか悩んでいます。

標準管理規約第64条では、「理事長は、会計帳簿、什器備品台帳、組合員名簿及びその他の帳票類を作成して保管し、組合員又は利害関係人の理由を付した書面による請求があったときは、これを閲覧させなければならない」と記載されておりますが、平成29年5月30日に改正個人情報保護法が全面施行され、個人情報を取り扱う「すべての事業者(法人に限らずマンションの管理組合などの非営利組織も含む)」に個人情報保護法が適用されることになっていますので、個人情報の取り扱いについてはより一層の注意が必要です。改正法では個人情報の取り扱いについて、以下4つの基本ルールが規定されています。
(1)個人情報の取得・利用
 利用目的をできる限り特定すること。
(2)個人データの安全管理措置
 個人情報が漏えいしないよう「鍵のかかる棚で管理」「データへのパスワード設定」「PCへのセキュリティーソフトのインストール」等の安全管理措置を講じること。
(3)個人データの第三者提供
 第三者に個人データを提供する場合にはあらかじめ本人の同意を得ること。(なお、法令に基づく場合、人命に関わる場合等で、本人の同意を得るのが困難な場合にはこの限りではない)
(4)保有個人データの開示請求
 本人から個人情報の開示請求を受けた場合は、原則応じなければならないこと。
 本件のケースであれば、「提示頂いた情報を組合員名簿に記載すること」、「災害発生時に備えた名簿として全戸に配布すること」を説明し、本人の同意を事前に得ておく必要があると考えられます。
 また、標準管理規約第31条では、組合員は管理組合に対して氏名を届出することが義務付けられています。電話番号や家族構成等については明記されておらず、届出は任意とされていますが、電話番号等は管理組合運営、緊急対応等を行うために必要な情報であるため、「情報の利用目的を事前によく説明」した上で情報提示を依頼するべきでしょう。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2019年5月掲載

1棟の中の区分所有建物の競売請求を行うには団地総会の決議が必要か

現在、私の住んでいるマンションに高額滞納者がおり、区分所有法第59条に基づく競売請求を検討しています。私の住んでいるマンションは、1つの土地に複数棟の区分所有建物(マンション)が存在する、いわゆる「団地」で、管理規約では、各棟の棟総会と全棟の団地総会があります。このような場合、1棟の中の区分所有建物の競売請求を行うためには、団地総会の決議が必要になりますか。それとも、棟総会の決議が必要になるのでしょうか。

区分所有法(以下、「法」という)では、共同の利益に反する行為を行う、又は、行為を行う恐れのある義務違反者に対する措置として、行為の停止請求、専有部分の使用禁止請求、区分所有権の競売請求、占有者に対する引渡し請求を定めています(法第57条、第58条、第59条、第60条)。また、これらの規定は、義務違反者に対してその者の財産の使用禁止や競売まで請求し得るのは、1棟の建物内において、区分所有者間にはその建物の管理や住環境が相互に密接な関係を持たざるを得ない点を根拠とするものであり、団地内の他の建物の区分所有者間にまで及ぶことは相当ではないとして、団地団体には準用されない規定になっています(法第66条)。
 そのため、今回のケースのように、高額滞納者に対して、法第59条に基づく競売請求を行うことを決議するためには、棟総会の決議で足り、団地総会の決議は必要ありません。
 仮に、管理規約において、義務違反者に対する措置について、団地総会で決議する旨が定められていたとしても、法第57条、第58条、第59条、第60条の規定は、管理規約で別段の定めをすることができない強行規定であるため、団地総会で決議する旨の管理規約の規定は法的効力を有しないことになります。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2019年6月掲載

役員のなり手不足の解決策は

組合員の高齢化によって役員のなり手不足が問題になっています。解決策はないでしょうか。

高齢化社会の現代において、組合員が高齢で役員の仕事を満足に務めることができない、という問題はさまざまな管理組合で問題になっています。
 この問題の解決案の1つとして、管理規約を変更することによって「役員の資格要件」を緩和し、役員のなり手となる資格者を増やす方法が考えられます。
 国土交通省は、役員のなり手不足という実態を踏まえ、2011年(平成23年)7月、マンション標準管理規約の規定を改正し、役員の資格要件を緩和しました。
 すなわち、これまでのマンション標準管理規約第6章第3節の「役員」の項において、「理事及び監事は、〇〇マンションに現に居住する組合員のうちから、総会で選任する」と規定していましたが、これを「理事及び監事は、組合員のうちから、総会で選任する」と改正し、現に居住する組合員だけでなく、マンションの外部に居住する組合員であっても、役員に選任することが可能となりました。
 現に居住する組合員は、マンションの現状を把握しやすいため、管理組合の運営に深く携わる役員として適任と考えられますが、一方で、外部居住役員を入れることにより、これまでにない客観的・第三者的視点での意見が期待できる、という考え方もあります。
 もう1つの案としては、管理規約の変更が必要となる場合がありますが、役員報酬を支払うことで問題の解決を図る方法です。
 高齢で役員ができない組合員を役員の候補から外していくと、高齢でない組合員が頻繁に役員にならざるを得ないという不公平な事態が生じます。この問題を解決する方法として、役員に報酬を支払うことによって、役員とそれ以外の組合員との不公平感を軽減する方法です。
 この方法では、報酬を支払う対象を理事長だけなのか役員全員なのか、報酬を支払う額は役職によって異なるのか、また、理事会の出席率や出席回数に応じて支払うのかなど、報酬の意味合いや報酬に対する考え方が組合によって異なりますので、トラブルを避けるためにも「役員報酬に関する細則」を作成しておくことが必要です。
 また、役員に報酬を支払うとしても、役員に組合運営の全てを任せきりにせず、自らも組合員の1人として組合運営に参加しているという意識を持つことがぜひとも必要なことです。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2019年7月掲載

海外に在住している外国人の区分所有者への連絡について

私は、マンションの理事をしているのですが、私の住んでいるマンションの区分所有者に海外に在住している外国人の方がいます。この方は、マンションには居住しておらず、国内の所在地に関する届出はなく、連絡先も分かりません。このような場合、総会案内など管理組合からの連絡はどのようにしたらいいのでしょうか。

総会案内の招集通知については、お住まいのマンションの管理規約において、どのように定められているのかによります。マンション標準管理規約では、区分所有者が届出をしている宛先に通知することになっていますが、届出がない場合は当該マンションの専有部分の所在地宛に発すると定められているため、ご質問の場合、当該マンションの区分所有者の専有部分宛に通知すれば足ります。
 しかしながら、昨今、海外在住者による日本国内の不動産購入の事例が増えていることや、国内在住の区分所有者であっても、長期海外出張などにより自宅を留守にすることが多く、管理組合として、区分所有者本人と連絡をとることが難しく、連絡に時間を要するばかりか、区分所有者と連絡が取れないケースが増えています。その場合、総会の招集通知が不在の区分所有者に伝わらず、当該区分所有者の議決権行使がなされないことにより、区分所有者数と議決権数の各4分の3以上の賛成が必要な特別決議事項の決議要件を満たさないなど、組合運営に支障をきたす恐れがあります。
 このような事態に対応するため、管理組合としては、あらかじめ管理規約や細則において、海外在住者の不在区分所有者に対し、連絡先窓口となる代理人の届出を義務付けることも一つの方法です。
 海外在住者の場合には、国内の不動産販売会社などを代理人とし、その代理人に求める事項としては、不在区分所有者との連絡・調整だけでなく、管理組合で実施する専有部分内の点検立会、事故等発生時の連絡窓口などが考えられ、一定の様式の長期不在届出書を作成しておき、不在区分所有者が国内の代理人に、当該専有部分の管理に関する事項(点検立会など)を行える承諾を得ておくようにするとなおよいでしょう。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2019年12月掲載

遠方にいる理事の理事会参加について

管理組合の理事を務めているのですが、仕事のために遠方にいることが多く、また代理人を用意することも難しいため理事会への参加が困難です。何か良い方法はないでしょうか。

マンション標準管理規約(単棟型)の第53条(理事会の会議及び議事)の第1項には、「理事会の会議は、理事の半数以上が出席しなければ開くことができず、その議事は出席理事の過半数で決する」とありますが、平成28年3月に改正されたマンション標準管理規約のコメントによると、管理規約に定めがあれば、遠方にいても意見を述べること、議決権を行使すること、また理事会に参加することも可能とされています。
 方法は大きく分けて2つあり、1つは議決権行使書や意見書を提出することにより、議案に対する意見を述べ、賛否に関する意思表示を行う方法、もう1つは、インターネットを利用したテレビ会議等を利用することで、遠方に居ながらにして理事会に参加する方法があります。
 この点、マンション標準管理規約(単棟型)のコメントには、次のように記載されています。
 同規約の第53条関係コメント(4)に、「理事がやむを得ず欠席する場合には、代理出席によるのではなく、事前に議決権行使書又は意見を記載した書面を出せるようにすることが考えられる。これを認める場合には、理事会に出席できない理事が、あらかじめ通知された事項について、書面をもって表決することを認める旨を、規約の明文の規定で定めることが必要である」とあり、また、コメント(5)に、「理事会に出席できない理事について、インターネット技術によるテレビ会議等での理事会参加や議決権行使を認める旨を、規約において定めることも考えられる」とあります。
 テレビ会議等を利用した理事会への参加については前例も少なく、管理規約の改定や、テレビ会議を行うための環境を整備するなどの準備が必要ですが、理事の出席数が足りず、理事会の成立が困難であることが予想される場合には導入を検討してみてはいかがでしょうか。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2020年4月掲載

総会の開催を中止もしくは延期することは可能か

新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防ぐため、理事会の開催は中止としていますが、総会の開催については区分所有法に定める集会の招集に該当することから、年1回の開催が法的に義務付けられていると聞きました。総会の開催を中止、もしくは延期することは法的に問題があるのでしょうか。

新型コロナウイルス感染症の影響によって、前年の開催から1年以内に区分所有法上の集会の開催をすることができなくなった場合の対応について、法務省より以下の通り指針が示されています。

(指針内容)
 区分所有法においては、管理者又は理事が、少なくとも毎年1回集会を招集しなければならないとされ、集会において毎年1回一定の時期にその事務に関する報告をしなければならないとされていますが、前年の開催から1年以内に必ず集会の招集をし、集会においてその事務に関する報告をすることが求められているわけではありません。
 したがって、今般の新型コロナウイルス感染症に関連し、前年の集会の開催から1年以内に区分所有法上の集会の開催をすることができない状況が生じた場合には、その状況が解消された後、本年中に集会を招集し、集会において必要な報告をすれば足りるものと考えられます。

 以上の指針から、新型コロナウイルス感染症に関連する問題が落ち着くまでの間、総会の開催を延期することは法的に問題ないと考えられます。ただし、本指針では、集会を開催することができない状況が解消された後、本年中に集会を招集し、集会を開催することが定められていることから、総会の開催を中止することは法的に問題があると考えられるでしょう。
 また、標準管理規約においても、書面又は代理人による議決権の行使を認めていることから、仮に総会を開催する場合であっても、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防ぐべく、議決権行使書や委任状による議決権の行使を広く呼びかけ、総会会場に大勢の人が集まることがないように対策することが望ましいでしょう(標準管理規約第46条4項)。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2020年5月掲載

書面による理事会決議は可能か

理事会を開催したいのですが、理事のスケジュールが合わないため、なかなか開催することができません。理事会で決定したい事項を事前に理事に通知し、理事の書面による承認を得ることで理事会決議とすることはできないのでしょうか。なお、当管理組合の管理規約は、標準管理規約に準じています。

標準管理規約では、理事会の会議および議事について、以下のとおり、コメントされています。
『理事会には本人が出席して、議論に参加し、議決権を行使することが求められる』(コメント第53条関係①後段)
 しかしながら、「子どもをおいて家を空けられない」、「残業で理事会の時間に間に合わない」など育児や仕事の都合により、出席できないという声も少なくありません。
 「理事会」の開催方法については、標準管理規約に定められているものであり、区分所有法には「理事会」に関する規定はありません。そのため、理事会の開催方法については、管理規約に別段の定めをすることで、管理組合によって決めることができます。
 例えば、理事会の議事のうち、区分所有者からのリフォーム申請に対する承認決議は、申請数が多いことが想定されることから、標準管理規約において、書面又は電磁的方法(電子メール等)による決議を可能としています。このように、必ずしも議論が必要でない議案については、事前に役員に資料の配付を行うことで、書面又は電磁的方法での決議を認めたり、議論の場を設ける必要がある場合には、WEB会議システムを利用できるように管理規約を改定したりするなど、本人が出席することだけを前提とするのではなく、いかに効率的に理事会の運営を行うか、マンションごとの実態に即した運用を検討することが望ましいでしょう。
 実際に、(一社)マンション管理協会も、ITを活用したハイブリット型バーチャル総会の実証実験の開始を発表しており、今後、理事会・総会のIT化の流れは加速していくものと思われます。
 一方で、WEB会議システムや電子メールを利用して理事会を開催する場合、これらを用いることのできない理事に対する配慮も必要です。この場合、理事会の議事について質問の機会を確保したり、書面等による意見の提出や議決権行使を認めたりするなどの工夫をして、適正で公正な理事会となるように努めることが必要だと考えます。

編集/合人社計画研究所法務室 監修/桂・本田法律事務所 本田兆司弁護士

2020年12月掲載

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